漂流教室
劇場公開日:1987年7月11日

解説
ある日、突然学校が未来にタイム・スリップする。中にいた先生と生徒の必死のサバイバルを描くSF。楳図かずおの同名漫画の映画化で、大林宣彦、石上三登志、小倉洋二が潤色し、「スケバン刑事」の橋本以蔵が脚本を執筆。監督は「野ゆき山ゆき海べゆき」の大林宣彦、撮影は志満義之、「恋する女たち」の宝田武久がそれぞれ担当。
1987年製作/104分/日本
配給:東宝東和
劇場公開日:1987年7月11日
あらすじ
父の転勤でロサンゼルスから神戸にもとった高松翔は、母・美恵子と口論し、自転車にとび乗って、コーベ・インターナショナル・スクールへ。途中で三輪車で遊ぶ勇一と出会った。学校にはさまざまな国の子供たちが通っている。サッカー・ファンのマーク、彼を好きなあゆみ、ふとっちょのピギィ、そしてみんなの憧れの的である久和みどり先生が、タガート先生のバイクに同乗してやってきた。パン納入業者の関谷も、うすら笑いを浮かべながら校内へ。みどりに恋人達也がいて、もうすぐ結婚すると分り、タガートは哀しさを隠してみんなと一緒にみどりを祝福する。突然、デビィの体が浮き、窓から吸い出された。学校が大揺れし、すさまじい音をたて、窓ガラスが割れて大量の砂が流れ込んでくる。学校の建っていた場所には巨大な穴があき、恵美子、達也が立ちすくむ。ジャッキー・大和島博士はタイムスリップしたのではないかという。学校内では外界との連絡がつかず、食料も乏しく、みな呆然となる。いつの間にか勇一が忍び込んでいたことが分った。勇一は奇妙な動物イヤアと仲良くなる。関谷は気が狂ったようにあゆみにナイフをつきつけ、翔がとびつくがはらいのけられる。神戸では何かを感じた恵美子が穴に野球バットをおとす。翔はのばした手がつかんだバットで関谷を倒す。教室の外は砂の海だった。巨大な怪獣が襲いかかるが、みどりがピアノを弾くと去っていった。みんなはみどりは僕らの母親だといい、自分のいる場所がないことを知ったタガートは姿を消す。翔は探険隊を率いて砂漠を探査して、翌日、学校にもどると、学校ではなんと一月たっており、みどりを始め多くの人命が失われていた。怪獣が群をなして襲いかかり、マークが生命をかけて倒した。竜巻が吹き、その向うに神戸が見える。しかし、竜巻には勇一しか運ぶ力がなく、みんなは彼一人を送り出した。イヤアが変身して怪獣となり、みんなに別れを告げ仲間と去っていく。残った数人の少年少女は、この世で生き続けることを誓うのだった。
スタッフ・キャスト
高松翔林泰文
高松恵美子三田佳子
高松芳男小林稔侍
あゆみ浅野愛子
マークトーマス・サットン
勇一佐々木一成
勇一の母原田貴和子
ジェシカオーラ・ラニ
久和みどり南果歩
マイ・ティーチャータガートトロイ・ドナヒュー
関谷尾美としのり
ジャッキー・大和島博士高橋悦史
藤木達也北詰友樹
ルーニイケン・スチュワート
ピギィマーカス・ドーブ
ロブロバート・マカフィー
ケニーアーサー・ジョンソン
ベルナルドバジェラ・ボザージ
受賞歴
第11回 日本アカデミー賞(1988年)
ノミネート
助演男優賞 | 小林稔侍 |
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フォトギャラリー
映画レビュー
2.0ハリウッド映画くずれ…
楳図かずおの原作マンガは未見。
それで楳図氏は「映画化には口出しをしない」と言っておきながら
完成試写会で見た内容が、原作に余りにも違うと憤慨したと
言うが、それは後の祭りだ…
丁度、日本でハリウッド映画が「ぐーーん!」と人気が上昇する
時期で、舞台設定がインターナショナルスクールで、外国人俳優が
混じって登場するが、それも「ハリウッド映画ぽいの」を、作り
たかっただけではないのか… つまり画像だけ洋画に
近ければ、それでいいと…
それよりも何で、この作品を大林宣彦氏が監督として手掛けた
のかが疑問だが、バブルの上り坂で日本国内に金がドンドン
飛び交う時代で、上層部の決定に逆らえなかったのが
実状ではないのか…?
「この作品を作らないと、次のノスタルジック映画は撮らせないぞ」
とか、脅されたりとか…?
最後はネタバレになるので詳しくは書けないが、映画に
完全な形でのハッピーエンドを求める人には、オススメは
できない。
2.0水も食料もほとんどない状況でどうやって生き延びたのだろう? あの怪...
1.0時々駄作の大林監督
どうしてこんな映画を撮っちゃったの?と、『ハウス』の頃から特撮シーンはまったく進歩してないし、同じく特撮がメインの『ねらわれた学園』よりも斬新さが失われているかのような・・・しかも、未来を子どもたちに託すといった狙いも唐突すぎるために引いてしまう。
ただ、印象に残るシーンはある。三輪車に乗ってる勇ちゃんが小さな生物と出会うところだ。あどけなさと、無邪気さが恐怖のどん底に落とされた中で希望が垣間見えるのだ。以前テレビで見たときにもこのシーンだけは覚えていた。
南果歩もこんな可愛い時代があったのだと、つい嬉しくなってしまう。一応のヒロインみどりちゃんがパンツをこっそり洗うシーンだとか、外人の女の子が砂のシャワーを浴びるシーンなんて、もうこれは大林のロリコン心が表れるところ。
音楽は久石譲の綺麗な旋律と、いきなりの「結婚行進曲」のミュージカル風演出など、面白い部分もあるんだけど、全体的に駄作であるから、残念な結果に終わってしまう・・・
1.5漂流映画
突如教室ごと、文明が荒廃した未来へ飛ばされてしまった少年少女たちのサバイバル。
映像化不可能と言われた楳図かずおの名作漫画を映画化した、大林宣彦1987年の監督作品。
一部ではカルト作とも、その一方、迷作、怪作、駄作とも言われる本作を、このほど初鑑賞。
感想は…
う~ん、これは確かに…。
原作漫画は未読。
なので、Wikipediaでちょっと調べてみたら、謎の改変が漂流しまくり。
原作では普通の小学生である主人公が、帰国子女に。
通う学校も様々な国籍の子供たちが集うインターナショナル・スクールに。
台詞も英語が多く、海外公開を視野に入れてかスタッフ/キャスト・クレジットも英語。
何故??
最たるは、作風。
原作はやがて子供たちの本能や残酷な面が浮き彫りになり、遂には人喰いにまで至るダークな内容らしいが、絶望的な状況の中で前向きに未来に希望を持って生きるような作風に。
勿論パニックや極限状態下のサスペンスなどシリアスな描写もあるものの、緊迫感が全く足りない。
そこに、ほのぼの描写、コミカル描写、ファミリー向けな描写が変に捩じ込まれ、作品を殊更意味不明なものにしている。
大林監督は青春映画の名作を多く手掛け、それを本作でも活かそうとしたのかもしれないが、完全に外している。
原作未読でも難点がまだまだ漂流。
先生の結婚祝いが、突然ミュージカルに。
砂を吐く先生の死体や顔に大火傷を負ったグロメイクなど楳図作品らしいインパクトあるシーンも頑張って盛り込んでいるが、力量不足。
子供たちの前に現れるモンスターの造型が子供向け番組レベル。
世界観の乏しさ。砂漠のシーンを本来はロケで行う予定が、スタジオ撮影に。スタッフの苦労は察するが、砂漠の広大さが全く感じられず、背景との合成も何という酷さ…。
タイムスリップ前に母親と喧嘩してしまった主人公。
時空を隔てた母と息子の絆。
ラストは未来の子供たちからもう会えない親へのメッセージ。
一応原作通りらしいが、チープ過ぎ…。
大林監督らしい実験的なチャレンジか、本気でやってこれか、出来映えも演出も特撮も含め、さすがにこれは…。
唯一嬉しかった点は、
原作ファンにとっては楳図かずおのゲスト出演かもしれないが(当人は本作を批判)、やはり特撮映画ファンとしては、本多猪四郎監督のゲスト出演。
主人公の祖父役で、台詞も無いワンシーンだけだが、大林監督のリスペクトを感じた。
どうやら大林監督も、作りながら漂流してしまったかのようだ。
大林監督と言えば、余命宣告を受けてまで作り上げた執念作『花筐』が見たい!
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