軍旗はためく下に
劇場公開日:1972年3月12日
解説
戦闘シーンを再現することに主眼をおいた“戦記もの”という形でなく、戦後すでに二十六年もたってしまった現在の時点にドラマの主軸を据えて、今、なお残る悲惨な戦争の傷あとと共に戦争を見つめ直すという意図のもとに製作された反戦映画。の直木賞受賞作品の同名小説の映画化。脚本は「裸の十九才」の新藤兼人。監督は「博徒外人部隊」の深作欣二。撮影は「この青春」の瀬川浩がそれぞれ担当。
1972年製作/97分/日本
原題または英題:Under the Flag of the Rising Sun
配給:東宝
劇場公開日:1972年3月12日
あらすじ
昭和二十七年、「戦没者遺族援護法」が施行されたが厚生省援護局は、一戦争未亡人の遺族年金請求を却下した。「元陸軍軍曹富樫勝男の死亡理由は、援護法に該当すると認められない」。富樫軍曹の死亡理由は、「戦没者連名簿」によれば昭和二十年八月南太平洋の最前線において、「敵前逃亡」により処刑されたと伝えられている。そして遺族援護法は「軍法会議により処刑された軍人の遺族は国家扶助の恩典は与えられない」とうたっているのだった。富樫軍曹の未亡人サキエは、この厚生省の措置を不当な差別として受けとった。それには理由があった。富樫軍曹の処刑を裏付ける証拠、たとえば軍法会議の判決書などは何ひとつなく、また軍曹の敵前逃亡の事実さえも明確ではなかったからである。以来、昭和四十六年の今日まで、毎年八月十五日に提出された彼女の「不服申立書」はすでに二十通近い分量となったが、当局は「無罪を立証する積極的証拠なし」という判定をくり返すだけだった。しかし、サキエの執拗な追求は、ある日とうとう小さな手がかりを握むことになる。亡夫の所属していた部隊の生存者の中で当局の照会に返事をよこさかなったものが四人いた、という事実である。その四人とは、元陸軍上等兵寺島継夫(養豚業)元陸軍伍長秋葉友幸(漫才師)元陸軍憲兵軍曹越智信行(按摩)元陸軍少尉大橋忠彦(高校教師)。サキエは藁にもすがる思いで、この四人を追求していく。彼らはどんな過去を、戦後二十六年の流れの中に秘め続けてきたのか--?その追求の過程で、更に多くの人物が彼女の前に現われてくる。--師団参謀千田少佐小隊長後藤少尉 富樫分隊員堺上等兵 同小針一等兵。そしてその結果--サキエの前に明らかにされたものは、今まで彼女の想像したこともなかった恐るべき戦場の実相だった--敵前逃亡、友軍相殺、人肉嗜食、上官殺害等々、そうしたショッキングな事件が連続する中で、サキエは否応なく、亡夫のたどった苛烈な戦争の道を追体験していくのだ--
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
4.0日本人が反戦にならない秘密
4.0ニューギニアの闇の奥
深作欣二監督の代表作で、脚本はなんと新藤兼人と異色の組み合わせ。敵前逃亡で銃殺になった亡夫の名誉を回復しようと、未亡人が関係者を訪ねていくお話しで、50年以上前の作品なのに、いまだ切れ味が鋭い作品です。関係者の証言はあいまいでありながら微妙に食い違うのは、『羅生門』スタイルだけど、人間のドロっとした生々しさが強調されているのは新藤兼人の作風かも。また、多彩な個性の強い役者さんの使い分けのうまさは、深作欣二のカラーかな。あまり戦闘シーンはなくスチール写真や記録映像を多用しているのに、画面から目が離せない迫真の作品で、反戦映画と言うより、軍隊ひいては戦後国家と言うものの非合理性や矛盾を描く社会派作品のイメージでした。役者では、左幸子が大熱演で実在感あふれる名演でした。また、復員者の一人、三谷昇の怪演振りも印象に残ります。丹波哲郎は、出番は少ないけど独特のふてぶてしさが感じられました。
3.5戦争の悲惨さを描いた映画というのは多数ありがと、この映画ほど落ち着...
戦争の悲惨さを描いた映画というのは多数ありがと、この映画ほど落ち着いて悲惨さを描いているものもないのではないかと思う。いくつかの人々の供述を織り交ぜた伝聞の形式で語られる話は黒澤明の羅生門を彷仏とさせるが、それ以上にキャラクターの描かれ方が真実らしいことが映画としての受け取るときの素晴らしさをもり立てているような気がする。あえてここから得られる結論を述べるとしても、あらゆる場所で語られているように、戦争は国家とその中心にいる人物が勝手に始めたことで、そのしわ寄せを受けるのはやはり大多数の弱い人々であるのだなぁと。
最近Twitterの中で戦争体験は悲惨な話しか受け取らないように検閲を受けているみたいな話を聞いたけれど、もちろん戦争の体験の中にはその中で性的や経済的に良い思いをした人も存在していて、だとしてもその中で結局敗戦の折にとばっちりを受けた大多数の人がいて、差し引きで言うと恐ろしくマイナスなのだろうと思う。それを踏まえた上で戦後の人々が戦争は悲惨であると述べていることを、枝葉末節の個々人の語りを拾ってきてそれを持って反応するのもいかがなものかと思ったりをする。
5.0日本人として観ておきたい。
自分の旦那がどうやって死んだのか。
戦死した夫の死の真相を知るべく、一人の女性が当時のことを知る生き残りの男たちを訪ねる。
男達は、終戦間近の頃どうやって生き延びていたかを語る。その内容は生々しく、観ていて怖くなった。
怖いから観たくない、けれど、観ないといけないことだと思った。これが現実にあったことなのだから。
武器がなく竹槍で戦っていたことや、食料がなく餓死していたこと、何のために戦っているのか分からないような状況下でただただ生き延びるために耐える。
辛いなんてもんじゃない、残酷な日々。
ゴミダメで暮らす人は、夫はいいひとだったという。
ふたりめは目が見えなく覚えていないと言う。ただ、人の焼かれる臭いが空腹でよだれがでるのを覚えている、と。
3人目は芸人。
洞窟から肉を持ってくる人。
野豚といい、本当は人の尻の肉だったという。
4人目は先生
飛行機の音が私たちには何のこともないただのうるさい音に聞こえるけど、戦争を経験した人たちにとっては恐ろしいものなのだろう。
最後はおじいさん。
遠巻きに摂るカットが良い。
最近のドラマだと被写体の近くでカメラを構えて撮るけど、こうやって遠くから撮るほうが自然で良い。
花だったり、子供だったり、平和なものを手前に引っ掛けながら戦争の話をする。
そういう話を聞いていて、戦うシーンではないのだけど
すごく残酷に感じたし、戦うために向かった兵士たちが飢餓と戦っていたこと。そういう誰も語りたくない、汚い、みっともない真実をこの映画から学んだ。そうやって死んでいた人たちがいたことを知るべきだと思った。
最後に白ごはんを食べるシーンは涙が出た。
そして日本はどっちですか?とその方向を見て死ぬ。
はじめの天皇陛下の献花にもすごく意味を感じた。
その献花されない人の中に、こうやって日本に頭を向け死んでいった人がいると思うと、やるせない。
とても観るのがしんどいけど、これが戦争なのだと思う。だから、日本人として観ておきたい作品だと思った。
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