獄門島(1977)
劇場公開日:1977年8月27日
解説
「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄(1977)」に続き、原作・横溝正史、監督・市川崑、主演・石坂浩二のトリオが三たび放つ横溝シリーズ。封建的な古い因習の中で、本鬼頭と分鬼頭が対立する獄門島へきた金田一耕助が、連続殺人事件にまきこまれる姿を描く。脚本は「悪魔の手毬唄(1977)」の久里子亭、監督は同作の市川崑、撮影も同作の長谷川清がそれぞれ担当。
1977年製作/141分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1977年8月27日
あらすじ
終戦から一年たった、昭和二十一年九月下旬--戦地から帰国の途中、引き揚げ船の中で死亡した鬼頭千万太の遺書を私立探偵・金田一耕助が友人から預り、獄門島の千光寺・了然和尚へ届けにきた。「死にたくない。おれが帰ってやらないと、三人の妹たちが殺される」その本鬼頭の月代、雪枝、花子の三姉妹は千万太と異母兄妹で、いまは座敷牢に入れられている当主・与三松と後妻・お小夜の間に生まれた子供たちだが、千万太の亡祖父・嘉右衛門は、旅芸人だったお小夜と与三松の再婚には、死ぬまで徹底的に反対した。金田一耕助が島へきて三日目に行なわれた千万太の通夜の日に、第一の殺人事件が起こる。死んだ嘉右衛門の妾で、いまは本鬼頭で女中のように働いている勝野が、三姉妹の着替えを終えた直後、三女・花子の姿が消えた。その夜、千光寺の梅の古木に自分のしめていた帯で逆さ吊りにされた花子の死体がみつかる。現場へ駆付けた千万太のいとこの早苗は、逆さ吊りにされている花子の懐から一通の封筒が落ちるのを見つける。それは、対立している分鬼頭家・儀兵衛の後妻・巴が、月代宛に書かせたものだった。千光寺に宿泊している金田一耕助は、枕もとにある屏風に極門という雅号の男が書き写した、芭蕉の句が二枚、其角の句が一枚と、三枚の色紙が貼ってあるのを発見した。「鴬の身をさかさまに初音かな」「むざんやな冑の下のきりぎりす」「一つ家に遊女も寝たり萩と月」。翌朝、金田一耕助は、花子殺害の重要容疑者として清水巡査に逮捕され、留置場に入れられてしまった。その間隙をぬうようにして、無残な第二の殺人事件が起こる。次女の雪枝が、海に向って天狗の鼻のようにつきでた崖の上に置かれている千光寺の吊り鐘の中で死体となって発見された。そして、花子、雪枝の葬儀の夜、長女の月代までが、かつてお小夜が使用した祈祷所の中で絞殺され、その死体には萩の花びらがふりまかれていた。岡山県警の等々力警部が指揮する捜査陣の努力もむなしく、犯人はみつからない。殺人事件の解決に苦しむ金田一耕助は、ふとしたことから極門こと鬼頭嘉右衛門が書き残した千光寺の屏風の色紙の三つの俳句の中から、意表をついた事件の糸口をつかむ。三つの殺人がすべて俳句の中の言葉を元に行なわれている。そして、金田一耕助は最初の殺人現場で了然和尚が「き(季)ちがいじゃ」とつぶやいたのを思い出し、和尚に詰めよると、彼は妖気と邪知にあふれた殺人事件の謎を語り始めた。お小夜を憎んでいた嘉右衛門が臨終の時、自分の後継者は千万太であり、三人の娘を殺すようにと、俳句に意志を託し死んだ。そして、その時、勝野も話を聞いていたのである。和尚は千万太の通夜の晩、鵜飼が来ると花子をおだて、彼女を殺すと鬼頭家から千光寺へと死体を運んだのであった。しかし、第二、第三の殺人は絞殺であり、リュウマチの和尚にできるはずはなく、その犯人は勝野であると金田一は謎解きを続ける。同じころ、早苗は二年前兄のひとしが出征する時、自分たちの母は勝野であると言い残し島を去ったと勝野に話す。最初は否定する勝野だったが、早苗の涙ぐむ姿に嘘はつけないと、殺人にまでおよんだいきさつを話し始めた。もし、千万太が死んでひとしが生きて帰ってきたら、三人の姉妹は殺される。勝野は千万太に無事に帰るように手紙を書くが、千万太がマラリヤで死んだことを知り、嘉衛門との間にできたひとしが復員してくるまでに何事も終わらせたいと殺人を行ったのだった。早苗に母となのれなかったのは、孤児の勝野を拾った了然和尚の忠告のためであり、それでも昔の自分を思うと幸せだと勝野は語る。そして早苗はもっと早く母さんと言えばよかったと涙ながらに抱きつくのだった。すべてが解決した獄門島にひとしの戦死の公報が届く。復員兵にひとしは帰還すると聞かされていた了然和尚は、勝野の手をとると断崖から海へ飛びこんだ。金田一が獄門島を去る時、これらの殺人は勝野の悲しい思い出が生んだ事件だと彼には思えるのだった。
スタッフ・キャスト
受賞歴
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映画レビュー
4.0令和の時代に見ても色褪せていないカメラワーク。
◯作品全体
親族間の戦後のお家相続問題、権力者の裏の顔。正直『犬神家の一族』と同じ物語の筋にしか見えないし、種明かしが進んでいくたびに、また複雑な親族関係が火種だったんだな…みたいな気持ちになった。ただ、飽きずに見られたのは『犬神家の一族』と同じく世界の切り取り方の巧さがあったからだ。
まず、なにより引きの画面のかっこよさ。寺へと続く階段や座敷内を撮るときも役者の顔が見えなくなるくらい引きの画面で撮っていたのが印象的。座敷内の映像なんて、柱やふすまがあるから窮屈になりがちだけど、それすら無視して引きの画で世界を映すとともに「余白の恐怖」も伝えてくる。ガランとした空間や、誰も居ないはずの階段脇の雑木林になにかの意味を探りたくなる。俳優を映したい邦画によくあるバストショットの会話劇や露骨な表情芝居を映すためだけにあるアップショットなんかはほとんど存在しなかった。だから50年近く経ってもなお、野暮ったさを感じさせないミステリー映画として見られるのだと思う。
今作で言えば、島全体を使ったトリックも良かった。本鬼頭と分鬼頭、そしてお寺の間にある道にトリックを据えることで、事件を生み出した島に潜む歪さに近づいていく。
ただ、気になった点は勝野と了然の関係性。困っていた勝野の世話をしてくれたから、というのはわかるけれど、もう少し作品内にエピソードを入れていても良かったんじゃないかなと思った。了然が雪枝の殺害現場を見ておきながら、他の誰にも情報を漏らさずに処理をしている関係性はすごく面白かった。結託しているわけでも打ち合わせをしているわけでもないけれど、目的地をふたりとも把握している、というような共犯関係。
本家・分家の関係性とか土地と人間関係の濃さを活かしたトリックとその説得力。個人的には『犬神家の一族』と同じくらい好きな作品だ。
◯カメラワークとか
・モノクロ演出は今回も健在。時間を区切るため、というよりはその画面のインパクトのために使っているような気がした。
・引きの画の怖さは『犬神家の一族』よりも感じた。鐘の隣に立つ了然を小舟から見上げるカットとか、復員兵のやられ際とか。
◯その他
・大原麗子も美人だったけど、坂口良子がかわいすぎる…!アヒル口っぽい口元とか涙袋とか、昭和よりも今の時代にハマりそうなルックスだと思う。
4.00141 ワタシも犯人の名前を知りません
1977年公開
ターザンよろしく石坂金田一が飛ぶ。
時たまインパクトを与える市川演出は好き!
獄門島は金田一耕助長編デビュー作なので
原作は結構攻めた調子。
しかし本作は犬神、手毬唄からの発展を期待するので
先が見えてしまうところは致し方なし。
ちょいマンネリ気味でもあるがそこもまたよし。
大原麗子、司葉子は「犯人は女性です、それも美しい」
は行けると思うが大地喜和子はそそらんなあ。
吊り鐘の解読は個人的にビジュアルでうまく説明してもらい
面白かった。
80点
初鑑賞 1977年9月1日 梅田劇場
パンフ購入
3.0私にとっては、サスペンスじゃなく、ホラー
ただひたすらに殺人現場の美的様式が印象的。それを映像化したくて映画化したのじゃないかと思ってしまうほど。
「蔑視的表現」と人権団体から袋叩き似合いそうな、三人姉妹や座敷牢の描写。加えて復員兵。おどろおどろしさがこれでもかと醸し出される。
何のための殺人…。一見、理に適っているようで、他に回避策はいくらでもあるのに。
映画で、状況を客観的にみている身には憤りすら感じる。
狭い閉塞された空間で、因習にとらわれた視野狭窄にとらわれた中での凶行。
警察機能が働いていない場所なら、暗黙の了解として、島ごとこの罪を背負っていくのだろうな。「しかたなかったんじゃ」と言いながら。
すべてが決着してから我に返った時の、己の所業への後悔・虚しさ。亡くなった娘たちへの憐れ。
その落差が絶妙。
そして、島を覆っていた因習が瓦解することで、島に新しい風が吹く。
そんな話だと思っていたのに、この映画で結末を変え、別の意味付けをしたことで、後味が変わってしまった。
人間の業の切なさ・怖さは半端ない。
原作通りなら、この殺人の糸をひく人物の掌で動かされる人々。実行犯はただ操られているだけ。この状況でなんで操られる? しかも、理由が、親の因果が子に巡り、って…。そこだけで十分ホラー。
そこに、この映画での犯人の想いが加わる。それは世界・時間軸共通の想い。愁嘆場。胸に迫る。でも、ちょっと清楚すぎるかなあ。この犯人をこの方が、こんな風に演じられると、動機づけが弱く感じる。
それでも、
東野さんの因業おやじを筆頭に、役者は皆さんいい仕事をしている。その演技・たたずまい・お姿を見るだけでも至福。
でも、『犬神家の一族』でも書いたけれど、関東圏の小都市育ちの私にとっては、地方ってこんな風に恐ろしいしがらみに縛られているところなのかって、変な偏見を上塗りしてしまう映画(シリーズ)。
加えて、”障碍者”と定義づけられる人への偏見も上塗りしたなあと不愉快さもまとわりつく。
だから、映画自体にはマイナスつけたいけれど、役者に☆3つ。
確かに、ホラー特有の「怖がらせ」的な演出・映像はない。
「殺人防御率が一番低い」とされながらも、「日本の三大名探偵」の一人に数えられる金田一さんの推理(解説)は冴えわたる(映画では、ストーリーを観客に見せてくれるガイドっぽい役割)。
だから、本当はサスペンス映画なのだろうけれど…。
上記に書いたような、殺人の動機がまるで人身御供とか。
殺すだけで飽き足らなくて、死体に加工して見世物にするのって、なんのため?『犬神家の一族』では復讐相手に思い知らせて怖がらせるためだったけれど、この映画では、背後で糸ひく人物の嗜好って…。それって、快楽殺人?しかも殺す相手って…。
今でもあの島では、
霧の深い夜にでも、梅の木にぶら下がった死体が揺れ、
鐘からは振袖が下がり、
一つ家から鈴が鳴り響いていそうだ。
ほら、やっぱり、ホラーだ。
4.0金田一シリーズでいちばん
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