男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎
劇場公開日:1984年8月4日
解説
北海道を舞台に寅次郎と理容師の娘とのふれあいを描く同シリーズ第33作。脚本は「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」の山田洋次と同作の朝間義隆、監督も同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当。
1984年製作/102分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1984年8月4日
あらすじ
盛岡から満男の中学入学祝が送られて来た。寅次郎からである。彼は、盛岡で昔の舎弟分・登にめぐり逢った。登は堅気になり世帯を持って小さな食堂の主になっていた。寅次郎は精一杯、自分を歓待しようとする登の手を振り切って北海道へ渡った。釧路で寅次郎はフーテンの風子こと木暮風子と知り合い、意気投合する。風子は理容師の免状を持っていて、床屋に勤めるのだがどこでも長続きしない。その夜、寅次郎と風子は、女房に逃げられたという福田栄作と相部屋になった縁で、彼の女房探しを手助けする羽目になる。霧多布まで寅次郎と風子は栄作に付添って行ったが、新しい夫との生活に安住する妻の姿に声もかけられず去る。栄作と別れた二人は、風子の伯母の住む根室へ。祭りに賑わう常盤公園の見世物小屋にオートバイショウがかかっている。一座の花形トニーはオートバイを巧みに乗りこなし、目にとまった風子を小屋に誘った。伯父の世話で風子の就職が決まった。寅の旅立ちの日が迫り、風子は寅次郎と一緒に勝手気侭な旅をしたいと言い出した。寅次郎は、そんな風子を可愛いと思うが、心を鬼にして伯母のいるこの根室で真面目に働いて、いい男を見つけて世帯を持てと分別を説く。別れの日、風子は「寅さんがもう少し若かったら、私、寅さんと結婚するのに」と告げた。タコ社長の娘あけみの結婚式が行なわれた日の午後、寅次郎が“とらや”へ帰ってきた。丁度、栄作が訪ねて来ていた。彼は東京で風子に会い、借金を申し込まれ断ったという。寅次郎は怒って栄作を罵倒し追い返してしまう。しかし、風子の居所が分らないので、新聞の尋ね人欄に広告を出した。そんなとき、トニーが風子が寝込んでしまい、寅次郎に会いたいという言伝てを持ってきた。寅次郎は風子を博の運転する車に乗せ“とらや”に連れ帰った。数日後、風子は元気を取り戻し、寅次郎はトニーを呼び出して風子と別れることを約束させた。だが、風子がトニーに会いに行くというのを寅次郎が止めたことから、風子は“とらや”を飛び出してしまった。夏の盛り、風子からさくらに手紙が来た。根室に帰った彼女は、伯母の気に入った真面目な男と結婚することになったという。さくら、博、満は結婚式に出席するため北海道・中標津へ向った。そして、北海道を旅する寅次郎からも、式に間に合うよう山越えして行くとの電話が入った。
スタッフ・キャスト
男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎 の関連作を観る
映画レビュー
1.5男女の生殖行為を無視している。今までは良かったが
生殖行為を全く無視している。それが今までは良かったが、
30作を超えると主人公の年齢は合わず、ネタも尽きている。つまり、寅さんも年には勝てない。って事である。そして、この霧多布での出来事は既に40年も前の出来事。
まさに古色蒼然♥ だから、言わせてもらう。
僕自身はこの映画を見ると、
“西村寿行”先生原作の
『滅びの宴』を持って北海道道東を彷徨ったのを思い出すって事を。
話の展開が出鱈目ではちゃめちゃだけれども、
結局、若者は東京に出て来ないと生活が出来ないって事を肯定するのか、しないのか。
どっち?
3.5【渡世人と堅気の対比を軸に、寅さんに恋したヒロインが渡世人と言っても良いバイクサーカスの男との恋に揺れるシリーズ内でも哀愁深き作品。】
ー 今作の前半は、釧路で出会ったマドンナ風子(中原理恵)や、相部屋になった妻に逃げられた冴えないサラリーマン(佐藤B作)との絡みなど、多少暗めなトーンで物語が進む。
風子が理容資格を持ちながら仕事も長続きしない所や、彼女が恋したオートバイサーカスのトニー(渡瀬恒彦)も、やさぐれた感が強すぎて、寅さんが仁義を切ってが”アイツと別れてやってくれ。”と頭を下げるも”兄さんは見かけと違って純情なんですね。”と言って、サッサとその場を後にするシーンも、シリーズの中では珍しく情の無い描き方である。
救いは、トニーに会いに行ったまま、行方知れずになっていた風子から、結婚するという手紙が届き、さくらと博と光男、そして熊に追いかけれらる寅さんの姿が描かれる再後半かなあ、と思った作品である。-
5.0寅さんが、人間らしい生活を一緒におくれる女性はいないのでしょうか? もしいるとしたら、それはどんな女性なんでしょうか?
第33作 男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎
1984年8月公開
前作の第32作は第8作からの超ロングパスを受けた作品でした
第8作で寅さんは博の父からこう言われたのでした
人間は絶対に一人では生きてはいけない
逆らってはいかん
人間は人間の運命に逆らってはいかん
そこに早く気がつかないと不幸な一生を送ることになる
寅さんは痛く感化されて、一騒動がまきおこるというお話でした
そして12年後の第32作では、寅さんはこう結論をだしたのでした
自分がこういう人間であるのはもう変えようがない
本当の人間らしい生活なんてものは、自分には縁のないことだ
そのように諦めたのでした
盛岡でかっての寅さんの舎弟に出会う序盤のエピソードは、寅さんは自分はもう堅気にはなれない、自分はもう変わりようがないと考えているという説明シーンなのでしょう
ならば、寅さんがもう自分を変えられないとしても、それでも人間らしい生活を寅さんと一緒におくれる女性はいないのだろうか?
もしいるとしたら、それはどんな女性なんだろうか?
それを探ってみようというのが本作のテーマだったと思います
中原理恵が演じたフーテンの風子は、寅さんが女性ならこんな感じになるだろうという人物です
これなら寅さんと釣り合うはずというわけです
果たして二人はすぐに意気投合して、彼女も寅さんと一緒に旅の暮らしをしてみたいとなります
でも寅さんは彼女に説教して拒絶するのです
寅さんはトニーにこう言います
「ヤクザな娘に見えるけれど本当はそうじゃない、まともな娘だ
所帯を持って、子供を産んで、幸せになれる娘だ」
中原理恵は出演時26歳、風子も同じなら寅さんには結局のところ若すぎたんだと思います
さくらのような妹的存在にしか見ていません
恋愛対象には始めから見ていないのです
なら、もう少し寅さんの年齢に近づけた風子なら?
でもそれってリリーさんじゃないですか
結局、本作は寅さんにはやっぱりリリーさんしか釣り合わないことを確認したお話だったと思います
佐藤B作の演じたネクラは、風子がトニーをどうしようもない男とわかっていても惹かれてしまい不幸に陥ちるというお話の補助線になっているもので必要な登場人物だと思います
では、寅さんと釣り合う女性は他に
いないのでしょうか?
寅さんのように、だらしなくて、バカで、下品な女性なら?
下町育ちならなお良い
つまり、女寅さんのもうひとつのタイプです
これなら寅さんと釣り合って所帯を持って人間の本当の生活というものを送れるのでは?
それが美保純の演じたタコ社長の娘あけみです
でも彼女は本作では寅さんとは違う男性と結婚します
こんな女性と寅さんがもし結婚するならこんな花嫁になるだろうというのを、監督は私達観客にみせてくれたのだと思います
でも、これじゃあ駄目だ
だいたい寅さんがこんな女に惚れる訳がない
そう簡潔に結論を彼女の嫁入りシーンとして表現したのだと思います
とはいえ美保純の女寅さんはなかなか面白く魅力的なキャラクターなので彼女は第39作まで連続で登場することになります
さて冒頭の夢は、日活アクション映画のパロディ
これは、本編にこれまでの寅さんシリーズには登場したことのないハードなヤクザもんのトニーが登場するからでしょう
しかもそれを東映の暴力的イメージの強い渡瀬恒彦が演じるのです
ホンワカとしたお話の寅さん映画を見に来たお客さんに、トニー役の渡瀬恒彦がいきなり登場するとびっくりしてしまう
それを防ぐ狙いだと思われます
渡瀬恒彦は日活には出演したことがありません
なので、もし彼が日活アクション映画に出演していたらこんな感じかな?って雰囲気に仕上がっていてとても楽しいです
そもそも松竹でこんな映画一つもないのですから
なんか監督もスタッフも、役者陣もノリノリです
セットも衣装も照明もいつもの夢シーンとは段違いに気合いがはいってます
寅さんが風子と初めて会話をするのは、釧路の有名な名所の幣舞(ぬさまい)橋
釧路は霧の町で有名です
なので「夜霧にむせぶ寅次郎」というタイトルなのでしょう
そして霧の街といえば、ギャング映画ならサンフランシスコに決まっています
その連想ゲームで夢シーンが日活アクション風になったのでしょう
二人が出会った季節は恐らくゴールデンウイークの前ぐらい
自分も大昔同じ5月頃に釧路にいったことを思い出しました
釧路空港が濃霧で飛行機がなかなか降りられず、その戻りの最終便で東京に帰る予定だったので危うく帰れなくなりそうになったものです
蛇足
2023年夏、OSO18 という熊が駆除されたそうです
牛などを多数襲って恐れられていた熊だそうですが、ついにハンターに依って駆除されたというニュースをつい最近目にしました
その場所が、北海道東部の川上郡標茶町から厚岸郡厚岸町一帯にかけてだそうで、正に本作のラストシーンの辺りなのです
寅さんみたいに雪駄を半分食われた人がいたかも知れませんね
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