阿賀に生きる
劇場公開日:2012年11月24日

解説・あらすじ
豊富な水量や豊かな自然を誇ることで知られ、1960年代に端を発する新潟水俣病の舞台にもなった新潟県・阿賀野川の流域に暮らす人々にスポットを当てたドキュメンタリー。本作が長編デビューとなる佐藤真監督ら7人のスタッフが3年にわたって同地で共同生活を送り、住人たちの生活に密着。川とともに生きてきた人々の日常をありのままに映し出すと同時に、その一方で彼らが水俣病の被害者家族であるという現実にも迫る。92年、ドキュメンタリー映画としては当時異例のロードショー公開が実現したほか、山形国際ドキュメンタリー映画祭優秀賞をはじめ映画賞を多数受賞。2012年、16mmニュープリントでリバイバル公開される。
1992年製作/115分/日本
配給:太秦
劇場公開日:2012年11月24日
その他の公開日:1992年9月26日(日本初公開)
原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
-公害を糾弾する物語ではない
地元の人々にとっては不本意でしょうが、新潟を流れる阿賀野川と聞くと、昭和電工が垂れ流した有機水銀による公害被害、いわゆる「新潟水俣病」の記憶が強く残っています。本作は、その元凶の工場があった山間で暮らし続けて来た人々を追ったドキュメンタリーです。
公害、特に水俣病と言えば、土本典昭監督の一連のドキュメンタリーが映画史に屹立しており、本作はその阿賀野川版と想像(期待?)していたのですが全く違っていました。正反対の作品とすら言えます。公害被害への国や企業の責任を糾弾する怒号の声は全くありません。認定を求める被害者というのは本作中の人々の一面に過ぎず、カメラが捉えるのは、当たり前の日常を川沿いで淡々と生きるお年寄りの姿です。そこには、昔から続けている物もあり、既に失われた物もあります。また、皆さんの言葉の一つ一つが可笑しく滋味深く少し寂しいのです。そして、川の流れは力強く美しい。こんな撮り方もあったのかと感じ入りました。
それにしても、「新潟水俣病」って熊本の水俣の患者さんや市民にとって何とグロテスクで思いやりのない言葉でしょう。水俣はいつまでどこまで負のイメージを背負い続けねばならないのでしょうか。
5.0ドキュメンタリー好きなら観て損はない。
4.0生きる原点と心に沁みる懐かしさ
阿賀野川流域に住む人々の日常を淡々と描くドキュメンタリー、2時間充実した時間でした。
3年間もその地に住む老人達に寄り添い出来あがった作品は優しさが籠った秀作ですね。
最初に出てくる長谷川さんご夫婦、あの田んぼでの日々は傍から見ると辛そうですが、
2人にとっては生きがいなのでしょうね。そこで倒れてもいい!迷いない頑固さは、なぜか素敵です。
2人の食事風景もいい。お爺さんは戦争に行った時の歌、おばあさんは変に色っぽい歌。
へへへなんて笑っちゃいました。
息子に鮭の話しながら寝てしまう爺さんと、その時のばあさんの言葉面白いねー。
そしていろいろな人の計らいでもう一度鮭釣り体験嬉しそうだった。
川船作りの遠藤さんと奥さん
無口な遠藤さんですが、久しぶりに舟作りを始めると顔も高揚し
職人の目になり、腰は曲がっているが力強くかなづちを打つ姿は
好きな仕事を悔いなく全うしてきたのだなーと思わせてくれました。
出来あがった時は本当に嬉しそうで酒も入り少し饒舌になっていましたね。
新しい舟を交えた3艘が川に浮かぶシーンいいね。
3組目は餅作りの加藤さんと奥さん、まあここの夫婦は2人供口が悪い。特にばあちゃん、
体は全然動かないのに口だけは達者、だけどこの夫婦の掛け合いも又面白い。
所々に水俣病の影を織り込みながら、それを主題にはせずと言うか
老人の生活、地域の繋がり、夫婦の在り方この先輩達に敬意を払わずには居られません。
私もそろそろ老人の域に達する年齢ですので、
驕らず、勤勉で、ありのままを受け入れて生きるという事を教えて貰いました。
最後の場面3人の老人が家の中からカメラの方を見ている。そしてハイおわりーでお別れをいうシーン。
その時の会話。この作品を作った側の熱意とそれに応えた人々の交流がいかに温かいものだったか解りました。
それから印象という項目に幸せとしたのは、この映画を観ることができて幸せという意味です。息子に感謝。
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