赤頭巾ちゃん気をつけて
劇場公開日:1970年8月4日
解説
高校生薫クンの一日を通して描いた揺れ動く青春。庄司薫の原作から、脚本は「二人の恋人」の井手俊郎と森谷司郎の共同執筆、監督は森谷司郎。撮影は「ブラボー!若大将」の中井朝一が担当。
1970年製作/89分/日本
原題または英題:Take Care,Red Riding Hood
配給:東宝
劇場公開日:1970年8月4日
あらすじ
この日、薫クンはまったくついていなかった。東大入試は中止になり、ホンコン風邪をひき、スキーにけつまずいて足の爪をはがし、愛犬が死んだ。薫クンは幼なじみの由美に電話する。テニスの約束を断わらねばならない。由美は薫クンとおない年の、キュートでちょっとこなまいきな女の子だ。この日も、きのう読んだばかりの「エンペドクレスのサンダル」の話を電話に出るなりまくしたてる。薫クンがすでにその話を知っていることを知った由美は「舌かんで死んじゃいたい」と電話を切った。これでまた一週間は絶交だろう。病院に行くと、兄の幼なじみの女医さんが手当てしてくれた。その豊かな肉体に対する性のうずき。薫の妄想は頂点に達する。そして、その後にくる自己嫌悪、彼は自らを分析する。自分は現代でもっともはやらないタイプのお行儀のいい優等生、だが、彼の柔軟な精神は片側で、周囲のどうでもいい問題からは逃げて、逃げて、逃げまくり、本当に重要な問題にぶつかった時のために力をとっておぐべきだということを理解していた。病院の帰りに教育ママにつかまった。家には友人の小林がたずねてきて、苦悩をさらけだす。薫クンは一人でこの狂気の時代の苦しみを背おわされたような気になってきた。彼は銀座を歩く。立ち並ぶビルや街を行く人々が、彼には今にも自分におそいかかる敵のようにみえてきた。ほんとうに街には狼がいっぱいだ。本屋の前で、突然彼は傷む足を踏まれた。四、五歳のかわいい女の子だった。薫クンは「赤頭巾ちゃん」の童話の本を買いにきたのだというこの子のために、沢山ある「赤頭巾ちゃん」の中から一冊を選び出してやった。その時、彼は自分の使命が解ったような気がした。こんなかわいい子が、自由にのびやかに遊べるような大きな森のような、海のような男になってやろう。彼はその決心を抱いて、由美に会おうと思った。
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
3.0監督は原作に全く共感できずに撮っているとしか感じられません
1970年8月公開
原作は庄司薫の同名小説
1969年の芥川賞受賞作品です
中央公論社の薄い文庫本を持っている人はずっと後の世代でも多いはず
自分のもそのくちです
庄司薫の小説のうち
以下のタイトルはこの映画を観ようと思った方ならどれかは読んだはず
それともみんな揃っているかも?
赤頭巾ちゃん気をつけて 1969年
白鳥の歌なんか聞こえない 1969年
さよなら快傑黒頭巾 1971年
狼なんかこわくない 1971年
主人公は日比谷高校の3年生
東大受験を目指していたのに、大学紛争で受験自体が中止となってしまってというお話
実家は都内の裕福そうな家
幼なじみのかわいいガールフレンド
今でいうところの大変なリア充です
こんな映画を50年もあとの21世紀に観ることの意味があるのでしょうか?
正直わかりません
70年安保世代より下の世代は、団塊の世代が好き勝手にめちゃめちゃ暴れてくれたおかげで大変に迷惑したんです
そういう意味くらいしか伝わって来ません
しかし
森谷司郎監督は39歳
原作者の庄司薫は33歳
二人とも本当は団塊の世代の下でもなく、団塊の世代でもなないのです
その上の世代なのです
それでも原作には青春のみずみずしさが表現されていました
でも映画にはそれがないのです
そうしようとしているのですが、監督は原作に全く共感できずに撮っているとしか感じられません
原作を読むだけで十分です
主演の岡田裕介を観る事がこの映画の一番の価値かも知れません
後年、東映グループの会長になり辣腕を振るった方です
父は東映社長の岡田茂
石坂浩二に似ているとスカウトされて東宝デビューしたそうです
本作も東宝作品です
4.0推し理論と中二病と青春と
個人評価:3.8
阿波踊りを比喩にした、この激動の時代の予測できない波と、踊る人々、見る人々。そのシーンがとても心にささり、忘れられない。
生きる意味とは、自分の求める道は何なのか。気持ちを自身の内側に向け掘り下げる行為は、まさに青春の感情であり、現代風に言えば中二病や、推しとも言える。この60年から70年にかけての若者は共産主義を推しとして、体制と戦い続ける。
この時代の若者は、もっとも推しを必要としていた時代なのかもしれない。
そんな勝手な解釈で本作を鑑賞する。
士農工商が廃止されてから、若者達はみな自分がどこから来て、何者になっていくかを苦悩していく世の中が訪れる。
70年代の若者、またそれ以降の人達に、青春とは苦悩する事だと、教えくれるHOWTO青春モノとして、危険で、また同時に素晴らしい作品である。
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