アクロス・ザ・ユニバース : インタビュー
アカデミー賞6部門にノミネートされた「フリーダ」やアンソニー・ホプキンス主演の「タイタス」といった映画の他、ブロードウェイミュージカル「ライオン・キング」の演出家としても知られるジュリー・テイモア監督の新作「アクロス・ザ・ユニバース」。全編ビートルズのナンバーで構成したオリジナルミュージカルについて、来日したテイモア監督に話を聞いた。(文・構成:若林ゆり)
ジュリー・テイモア監督インタビュー
「私は観客に、客観的で、同時に主観的な経験をさせたかったの」

──この企画は、どんな風にあなたの創造意欲をかき立てたのですか?
「私は、ビートルズの大ファンというわけではなかったわ。でも、彼らの曲に共通して流れている60年代のスピリット、歌詞の豊かさにはとても惹かれていた。それに、ミュージカルという表現における自由は、すごくスリリングだと思ったの。劇場だと、ミュージカルナンバーの見せ場はダンスがメインよね。でも、型にとらわれず、もっと自由に出来れば面白いはずだと思った。つまり、撮影の技法やアニメーション、CG、ダンス、そういったすべての組み合わせをミックスして、その体験を一気に爆発させるようなやり方よ。私はミュージックビデオの時代は終わったと感じていた。でも、その映像独自の創造力は素晴らしかったと思うの。その手法をもっと映画に活かせたら。かつ、どのシーンもスタジオのセットで撮ったものではなく、すごくリアルで、観客を突然、様式化された世界の中に入り込ませることができたら。映画のツールを自由に使うことができるチャンスだと思ったし、そのトリックは観客の心を釘付けにし、キャラクターに寄り添ってもらうためにも素晴らしいものになるだろうなと思ったわ。それが、私のチャレンジだった」
──そうした独創的な表現法を実践する上で、大切にしたことは?

「多様な表現スタイルの中に、バランスを見つけていかなければならなかったわ。私は観客に、客観的で、同時に主観的な経験をさせたかった。たとえば、観客はフットボール場のベンチに座っているチアリーダーの女の子を見る。そして彼女が見ているものを見るとき、観客は主観的な経験をすることになるわ、まるでオペラのアリアに身を投じているみたいに。そして、彼女の内面で何が起こっているのかを聞くことになるの。このリアルな描写から、突然、フットボールの選手たちが男性ホルモンをまき散らしながらスローな動きをし始める。それはリアルではないわ。彼女は気にかけていない。それはリアルである以上に詩的で、より比喩的なの。それでいて、視覚的なスタイルをもっているから、見ていてとても面白いと思うわ。こうしたシーンで重要なのは、非常に個人的な、内面的な親密さを抱かせるということよ。映画の作り手たちが、なぜこういった表現をもっとしないのか、私にはわからない。私は、リアリティTVが映像における創造力を殺してしまったんじゃないかと思っているの。もしかしたら、あなたはちょうどいまの私のように部屋の中に座って、しゃべっている姿を見たいと言うかもしれない。でも、それって全然パワフルじゃない。エモーショナルでもないと思うわ」
──いま取りかかっているブロードウェイ・ミュージカルの「スパイダーマン」について話していただけますか?

「すごくエキサイトしているわ。U2のボノとエッジが書いた15曲のナンバーは、すごくドラマティックなの! これは映画の『スパイダーマン』を舞台劇に直した、というものではないのよ。敵の悪者もすべて、新しいものになるわ。すごく“スパイダーマン”なものにしなければならないんだもの!だから、すごい敵を登場させることにしたの。まだあまり知られていない悪者。刺激的よ。おそらく来年の秋には開幕できると思う。ピーター・パーカー役とメリー=ジェーン・ワトソン役のワークショップには、ジム・スタージェスとエバン・レイチェル・ウッドが参加してくれて、素晴らしかったわ。私は2人に演じてほしいと思っている。まだできるかどうか、わからないけれどね」
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