ダーウィンの悪夢
劇場公開日:2006年12月23日

解説・あらすじ
アフリカ・ビクトリア湖に何者かが放った外来魚ナイルパーチによって、湖の生態系に狂いが生じ、湖周辺のみならず、世界の産業や暮らしを変えていく様子を克明に描いた衝撃のドキュメンタリー。一つの大魚によって湖が激変する様子が、大国主導のグローバリゼーションによって変わっていく地球の姿を連想させる。監督は93年より、世界各地でドキュメンタリーを製作してきたフーベルト・ザウパー。
2006年製作/112分/イギリス
原題または英題:Darwin's Nightmare
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2006年12月23日
スタッフ・キャスト
ディモン
エリザ
ラファエル
カイジャゲ
受賞歴
第78回 アカデミー賞(2006年)
ノミネート
長編ドキュメンタリー賞 |
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2006年11月10日
映画評論
グローバリゼーションの内実に鋭く迫る傑作ドキュメンタリー
人生の"勝ち負け"が経済面での成否によって冷酷に決定される市場原理主義の功罪については、"格差社会"がキーワードになった、ここ日本でも分かった気になれる。だけど、その原理が世界の隅々にまで行き渡った結果としてのグローバリゼーションの内実については、どこか...
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映画レビュー
5.02006年の作品という事で、現在はここまで酷くはないとは思うけれど...
2006年の作品という事で、現在はここまで酷くはないとは思うけれども。タンザニアの悲惨な状況を克明に記録したドキュメンタリー作品。
ナイルパーチが大量に輸出されているその裏側で何があるのか、みたいな内容の映画。
3.0.
自宅にて鑑賞。タイトルから環境問題系、或いは生態系の噺かと思ったが、貧困に喘ぎ、負の連鎖から抜け出せないタンザニアが抱える根深い問題を炙り出すドキュメンタリー。人類発祥の地とされるアフリカ中心部に位置するヴィクトリア湖周辺が舞台。この広大な湖にバケツ一杯のアカメ科の肉食魚ナイルパーチを誰かが放流した事から全ては始まった。その姿は知らずとも白身の魚として愛食されており、作中にも輸出先として我国の名が登場している。何となく漠然と知っていたとしても、ここで突き付けられる現実を直視すべきである。65/100点。
・開始早々から自然光による暗い画面と独特の喧騒や騒音等の観辛さが気になったが、普段馴れ親しんでいるのが造り込まれた虚構の世界であり、製作当時の等身大が写されたドキュメンタリーである本作が自然であると間もなく気付かされた。色々考えさせれたが何分、十数年前の作品なので、現状を知らず、調べてみようかとも思ったが、想像の範囲内ではないかと躊躇ってしまった。
・魚加工工場のごくごく限られた一部のホワイトカラーの連中を除き、登場する現地のアフリカ系の方々は痩せ細った体躯か稀に細マッチョ(と云うかガリガリマッチョ)系ばかりで、対する非アフリカ系(主に外国人)は恰幅が良いか、それ以上の体格の者しか登場せず、非常に対照的であると同時に本作の描く問題意識が、ビジュアルとして一目瞭然に顕されていた。
・前任者がなたで惨殺されたと云う一晩1ドルで雇われている魚の研究施設の夜警は、侵入する賊に対し、毒を塗った弓で対抗すると云い、傭兵として戦争にも参加したし、何人殺したか判らない、勉強してこんな暮らしから抜け出したいがチャンスも職も無いと、笑顔を絶やさず答える──ニヤケた愛想嗤いを崩さないのに憐れみよりも寧ろ生理的にゾッとした。
・自生するワニと疾病に慄き乍ら捕獲されたナイルパーチは、従業員千人を抱える工場のオーナー自らが供給過多気味と答える。加工済みの切身はヨーロッパや米国、アジア諸国に持ち出されるがその際、武器や爆薬等が携行され、紛争地域へと墜落機の残骸があちこちに散在する警備の緩いハブ空港として現地が利用されている。
・一方、高価過ぎるが故、現地では加工後のアラや頭と云った捨てられるゴミを廉値で引き取り、僅かに骨にこびり附いた蛆虫塗れの魚肉やアラをおこぼれにあずかろうと空を舞う野鳥と競う様に食す。腐る寸前のこのアラが発するアンモニアガスで眼が潰れ、腹具合が悪くなるが、選択肢は無く、群がる子供達はアラが入っていた容器を燻したけケミカルな煙を日常の恐怖の代償としてドラッグ代わりに楽しむ。
・男女を問わず、幼き頃からDVや性的虐待を繰り返し受けていた子供達は早くに家を追い出され、ストリートチルドレンと成り果てる。女性なら上手く農家に嫁いだとしても、亭主は程無くエイズか出稼ぎで取られてしまい、娼婦に身を堕してしまう(インタビューに答えていた娼婦の一人は、後半で外国人パイロットに殺されてしまう)。避妊は宗教的に禁じられ……と思わずごく一部を書き出したが、とても書き切れない程の問題が山積しており、正に悪夢のグローバリズムが展開され、鑑賞者の良心が試され続ける。
・鑑賞日:2017年12月8日(金)
4.0悪夢
公開当時、環境問題にとても興味があり見に行きたいと思っていた映画。見てビックリ、環境問題を超越している。
お金で解決できない事。テレビで特番を組まれる、発展途上国の裏の話、と私は感じた。著しい発展に追いつかない人々の生活基盤。タンザニアへ投資をするのはヨーロッパで、悪い意味で、タンザニアはヨーロッパなしで、また日本なしで、成り立たなくなってしまった。
果たしてこれが幸せか?
自分で食べれもしない魚を延々ととり続け、早々とエイズで死ぬ漁師。行き場のない子供達は暴力の恐怖を忘れるためタバコ、クスリを吸い、夫を無くした女は身売りしまたエイズを広める。
前よりマシだと言って腐ってウジの湧いた魚の処理をする女性。そして、ヨーロッパに切り身として送られた、ウジの湧いた魚の残骸が、数百万の国民の重要な食料となる。
世界をまわす、重要な役割を担うタンザニア。こんなのは不幸せだ、と思っていない国民。国民は戦争、紛争を求めている。私達が見たところでまるで解決方法が思い付かない問題。
最後に、ヨーロッパの子供、タンザニアの子供の例え話をした男性の、ただただ言葉を落としていく姿が印象的だった。
どうしようもできない、だけど知っておかなければならない事実だと思う。幸せとは。国の幸せとは、国民の幸せとは。現実だと受け止め、当然だ、と思う人間が多すぎる。現実だと受け止め、「これが悪夢だと思える人々」こそが、この悪夢を止められるんじゃないだろうか。
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3月21日更新
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