劇場公開日:2014年1月25日
解説・あらすじ
アルフレッド・ヒッチコックのフィルモグラフィの中でも傑作と名高いミステリーサスペンス。刑事ジョン・ファーガソンは、逃走する犯人を追撃中に屋根から落ちそうになる。そんな自分を助けようとした同僚が誤って転落死してしまったことにショックを受けたジョンは、高いところに立つとめまいに襲われる高所恐怖症になってしまう。そのことが原因で警察を辞めたジョンの前に、ある日、旧友のエルスターが現れる。エルスターは自分の妻マデリンの素行を調査してほしいと依頼。マデリンは曾祖母の亡霊にとり憑かれ、不審な行動を繰り返しているという。ジョンはマデリンの尾行を開始するが、そんな彼の見ている前でマデリンは入水自殺を図り……。原作はフランスの作家ボワロー=ナルスジャック(ピエール・ボワロー&トーマス・ナルスジャック)のミステリー小説。ジョンが見る悪夢やヒロインによる真実の告白など練り上げられた演出が冴える。日本初公開は1958年。2014年、特集企画「スクリーン・ビューティーズ」の第3弾「ヒッチコックとブロンド・ビューティー」にて、デジタルリマスター版が公開。
1958年製作/128分/アメリカ
原題または英題:Vertigo
配給:マーメイドフィルム
劇場公開日:2014年1月25日
その他の公開日:1958年10月26日(日本初公開)、1984年3月
原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。
スタッフ・キャスト
受賞歴
第31回 アカデミー賞(1959年)
ノミネート
美術賞 | |
---|---|
音響賞 |
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映画評論
現実と妄想の境界線を自在に描く高度な映画技法に“めまい”を起こす
※ここは「新作映画評論」のページですが、新型コロナウイルスの影響で新作映画の公開が激減してしまったため、「映画.com ALLTIME BEST」に選ばれた作品の映画評論を掲載しております。************世界の映画史において"サスペンス映画の神...
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映画レビュー
4.0高度な映画技法に“めまい”がする
世界の映画史において“サスペンス映画の神様”もしくは“帝王”とも称されるアルフレッド・ヒッチコック監督のミステリーサスペンスです。物語が映像で語られる映画表現の面白さを堪能できる作品の一本でしょう。
「めまい」の中でも特に有名なのが、ジェームズ・スチュアート演じる高所恐怖症の主人公ジャックが、螺旋状になった階段の上から階段の下を見下ろした時に急激に起こすめまいを表現したシーンです。キャメラがトラックバックしながら急激なズームをすることで、めまいを起こしたような効果を生み、観客も一緒になって同じような感覚に襲われます。
さらにこの映画の特筆すべきところは、主人公の視点とともにその情緒不安定な心理と一緒になって物語の中に入り込んだような感覚におちいる作りとなっているところ。説明的な台詞ではなく、視覚的に物語や主人公の心理が描写されていきます。
そして主人公の心理は、次第にこの世では不可能な性的イメージを求めるものとなり、妄想の中の美女あるいは死者を蘇らせようとするような、ある種の偏執狂的な性的フェティシズムへと変化します。まるで主人公とともに観客も夢を見ているような、不安定なめまいを起こし続けているように。ヒッチコックの発想力、想像力に舌を巻き、見る者の心理も試される名作です。
5.0謎の女性の虜になる男の愛欲の顛末
サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックの代表作の一本に挙げられる、監督59歳の時の心理サスペンス映画。一般的に評価が高い作品には、イギリス時代の「三十九夜」「バルカン特急」、ハリウッド初期の「レベッカ」「海外特派員」「疑惑の影」、中期の「見知らぬ乗客」「ダイヤルMを廻せ!」「裏窓」とあり、この「めまい」は「北北西に進路を取れ」「サイコ」「鳥」の時代の後期の名作として位置づけられます。それに同じ題材の映画化「暗殺者の家」と「知りすぎていた男」、ヒッチコック70代の最晩年の「フレンジー」「ファミリー・プロット」を加えれば、代表作の殆どを網羅したことになるでしょう。個人的には中期の三作品が好みですが、ヒッチコック監督が亡くなり21世紀になって「めまい」の評価が見直されてきて、一例ではアメリカの映画団体AFIが選出したアメリカ映画ベスト100の中では第9位の扱いです。これに続き「サイコ」「裏窓」「北北西に進路を取れ」が100位圏内に選ばれています。このことは映画制作に精通した人たちが、つまり製作側の模範となる演出や撮影技術の斬新さから、その他の諸要素も含めて、映画としての完成度の高さを客観的に称賛した結果であり、簡単に言えば玄人受けする映画であると言えると思います。
この作品には、アメリカ初期・中期作品のようなストーリー展開の面白さや起承転結のスッキリした完結性はありません。一度の見学では計算された脚本の凄さに気付けない巧妙な話術ゆえでもあります。また「サイコ」のような観客を怖がせるショッキングなインパクトも特になく、殺人罪に問われるべき犯人も逃したままに終わり、主人公が騙されて犯罪に利用される事件も解決しない状態です。勿論心理サスペンスに集約した内容ですから、「北北西に進路を取れ」のようなアクションシーンの醍醐味も無く、地味に話は進みます。主人公スコティが高所恐怖症になるプロローグから、友人ギャヴィンの妻マデリンの尾行を依頼されて恋愛感情を抱くようになるのも極ありふれた流れでしょう。それも、若くして命を絶った曾祖母カルロッタの亡霊が取り憑いたようなマデリンの感情のない表情の冷たさが不倫恋愛を盛り上げることなく、最後は謎のまま飛び降り自殺をしてしまう。スコティが救えなかった後悔が、元々の高所恐怖症に加えて更に精神衰弱を悪化させて入院してしまう前半部分は、多くの謎を残したままで、物語として決して分かり易い面白さとは言えません。謎のキーワードは、“私を失ったら愛が本物だったと分かるはず”。
ところが、この映画の本当の怖さと面白さは、スコティが完治しない状態で退院して、亡くなったマデリンの幻影を追い掛けてしまう後半にありました。それもマデリンに瓜二つの容姿とスタイルをもつジュディという女性に出会ってからの異常な行動には、性的な衝動も含めた男の生々しい姿が表現されています。ヒッチコック監督のサスペンス映画に恋愛要素があるのは珍しくないのですが、この作品のように描かれていない部分で想像させる演出は貴重です。サンフランシスコ市街地を見下ろすロングショットに続くマデリンの車が駐車してある邸のシーンから、謎解きの面白さで観る者を引き付けます。スコティの眼からはマデリンが映り、近づくと車を買い取った夫人が現れる。映画だけができる錯覚の表現は、初めて出会ったレストランでも、スコティはエルスター夫妻がいた席にマデリンを見てしまう。カルロッタの肖像画が展示してある美術館、ショーウィンドウに飾られている花のブーケと記憶をたどり、偶然にもジュディを見掛けて追跡するスコティは、マデリンの幻影に取り憑かれた男になってしまっている。対してジュディは、カルロッタの亡霊に取り憑かれた芝居を演じたマデリンではない。この立場が逆転した男女が再び恋愛関係を築こうと苦悩するところが、ヒッチコック監督の狙いであった。ジュディをデートに誘い、グレーのスーツを着たマデリンに変身させていくスコティの執拗な要求が病的になる怖さ。髪を染め化粧も変えて髪型までこだわるスコティの性的な欲望が偏執的に描かれている、不思議な感覚です。完全にマデリン仕様になったジュディと熱いくちづけをするスコティの恍惚が、回転する背景の記憶と重なる映画演出の見事さ。そして、次のカットで黒いドレスに変身したジュディとスコティの関係を破壊するネックレスの登場で、物語が急展開するクライマックスの緊張感が素晴らしい。
ジュディがスコティを忘れられずサンフランシスコにとどまり、いつか再会できるのではないかと待っていた女心と、ジュディではないマデリンを愛してしまったスコティが、結ばれた後のこの結末は、肖像画に描かれていたネックレスをジュディが身に付けたことでマデリンの呪いがかかる最後を迎えます。スコティはネックレスひとつで、友人ギャヴィンが仕組んだ妻マデリンの投身自殺に見せかけた遺産目当ての殺人事件の証人役に仕立て上げられ、騙されたことに気付く。目の前にいるジュディは、マデリンでなくギャヴィンに雇われただけの共犯者に過ぎない。それでも、真相を確信して怒りに震えるスコティが鐘楼がある塔の頂上で高所恐怖症が治り、ジュディに心を許す瞬間のラスト。一気になだれ込むような結末の後の虚無感含め、見事なクライマックスです。
主演のジェームズ・スチュアートは、終始精神疾患の難役を好演し、マデリンの儚い美しさの虜になる男の欲求を巧みに演じています。マデリンとジュディの二役のキム・ノヴァクも演じ分ける巧さをみせて、何よりマデリンの時の美しさは「ピクニック」「愛情物語」の代表作に並ぶ存在感です。キャスティングで唯一の物足りなさは、バーバラ・ベル・ゲデス演じるミッジの扱いでしょうか。マデリンがスコティのアパートから出てくるところを偶然目にして嫉妬を膨らませ、カルロッタの身体に自身の顔を描いた油絵をスコティに見せる痛い女性は、それ以上物語に加わることはありません。これはスコティとマデリンとジュディの3名の登場人物で語り、完結する恋愛心理サスペンス映画の形を取っています。ソール・バスのタイトル、バーナード・ハーマンの音楽も良く、最も見事なのはロバート・バークスの撮影です。坂道を走る車からのサンフランシスコの街並み、建物を捉えたショットの構図の完璧さ、そして会話時のカメラアングルの的確さまで、模範的なカメラワークです。特殊効果の技術者から撮影監督になったバークスの功績は、「サイコ」(ジョン・L・ラッセル)を除いて「見知らぬ乗客」から「マーニー」までの多くのヒッチコック作品があり、高レベルの安定感と斬新さを兼ねた映画遺産です。
最低でも連続して2度見直して、ヒッチコック監督の演出の見事さ、脚本の構成力、カメラワークの素晴らしさ、テクニカラーの美しさ(レストランの赤い壁)、照明の丁寧さ(本屋さんで店主からカルロッタの歴史を聴くシーン)、墓場のシーンその他での幻想的ぼかし、主演ふたりの演技を堪能して欲しいと切に思います。
5.0予想不可能のプロット
1.5今日初めて気付いた。嘘話でこの映画は二回目でーす。
キャバレロの映画なんて言いましたか?そうそう『愛情物語』だよね。音楽は『トゥラブ・アゲイン』だな。そん時の主演女優さんだね。髪金の女優さん♥ドリス・デイより先?マリリンは髪金じゃないって親父言ってたし、白黒テレビだったし。
以上のお話しは嘘でした。『愛情物語』は白黒でーす。(カラーだった)だから、この映画を
親類の家のCOLORTVで見たので。
で、あと40分。完全に思い出した。この映画に付いては何一つ語れられないね。明らかにこの映画はCOLORTVで見た。まだ、カラーテレビが出来たてだったので、目が痛くなった記憶がアル。フレッドヒッチコックなんちゃって。
もう一つ、真犯人が間違いだったのを気付いた。僕の55年を返してくれ!あ~。
髪金はノヴァクか?デイ?だよ。
今日、初めて気付いた。
もう一つ気付いたよ。カーメン・キャバレロの伝記映画だとずーと思ってた。鑑賞して50年して初めて気付いた。
『めまい』がする位『ピカピカ』カッコいい♥
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