劇場公開日:2022年1月21日
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解説・あらすじ
「アンダルシアの犬」「皆殺しの天使」などの巨匠ルイス・ブニュエルが、ブルジョワたちの奇妙な日常を毒の効いた風刺を交えながら軽やかなタッチで描き、1973年・第45回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したコメディ。南米某国の駐仏大使アコスタはテブノ夫妻らと共に友人宅やレストランで食事をしようとするが、その都度奇妙なトラブルが起こり、なかなか食事にありつけない。欲求不満状態でいらだちながらも悪戦苦闘するブルジョワたちの滑稽な姿を描きながら、彼らの特権的地位に由来する高慢さや偽善や腐敗を浮かび上がらせていく。出演は「フレンチ・コネクション」のフェルナンド・レイ、「去年マリエンバートで」のデルフィーヌ・セイリグ。
1972年製作/102分/PG12/フランス
原題または英題:Le charme discret de la bourgeoisie
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
劇場公開日:2022年1月21日
その他の公開日:1974年5月(日本初公開)、1984年8月25日
原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。
スタッフ・キャスト
受賞歴
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2021年7月14日
フォトギャラリー
映画レビュー
4.0プロレタリアートの秘かな愉しみ
ルイス・ブニュエル監督作品、キネ旬ベスト1974年度6位
少し前に『自由の幻想』見て「面白い」と感じてから、もっとブニュエル作品を見たくなって購入しましたが、本作はまず「難しいぃ~」というのが鑑賞直後の感想ですかね。
というか「私ごときがブニュエル作品を語ること自体がおこがましいにも程がある」って気になってしまいましたよ(苦笑)
でも分らないと思いながらもつまらないと感じる事もなく、この辺りが私の限界点なのかなぁ~って思いながら見ていました。
しかし、これがフランス流のユーモアなんでしょうかね?大笑いするでもなく、だからと言って真剣に受けとめるのも野暮な様な気にもさせるしで、庶民にとっては分かり難い部類の作品だと思います。
まあ、タイトルからして“ブルジョワジー”の物語ですから、対極である無産階級の私が分かり難いのは当然なのかも知れませんね。
ここまで書き進んでふと思ったのが、今までSNSで何百回も言ってきた私が映画好きになった入り口であるアメリカンニューシネマと本作が同時代の作品であった事と、あの十代の私でも理解出来たニューシネマのメッセージと本作のメッセージとは何が違うのかって事です。そう考えると別の視点で色々なものが見えてきそうな気がしました。
本作で何度か挿入されるシーンで、主人公達男女三組が何故か歩いている一本道がアメリカンニューシネマのロードムービーのシーンと重ね合わさり、ひょっとすると似た様なメッセージが含まれているのかも知れないという(ブニュエルがアメリカンニューシネマを意識していたのがどうかは不明ですが)要するに、逆視点からの社会(有産階級)批判は確実に描かれていて、更に人間考察へのもっと深い部分にまで及んでいたのかも知れないという気がしてきます。
そこに着目すると、私が最近になってブニュエルが気になり始めた理由が何となく見えて来たような気がします。
ここから少し本作から脱線した話になりますが、10代の頃ニューシネマなどに傾倒し自分の社会の中でのポジションの様なものが薄っすらと見えて来て、自分の能力や性格なども考えると、恐らく一生うだつの上がらない労働者階級の中の底辺で生きなければならないのだろうという未来予想が出来上がっていましたが、戦後の日本ではどんな階層であっても、贅沢をせずに酒・煙草・ギャンブル等々の中毒性のある身を亡ぼす恐れのあるモノから遠ざかり堅実に労働力を提供していれれば、衣食住は何とかなるし適度に趣味も持てる位の暮らしが可能な事も分かっていました。
そしてそういう暮らしを続けながらこの歳になり、他のSNSにて他人から見ればとんでもなくショボくしょうもないDVD購入の自己満足話を長文で書いたりと、こういう自分を俯瞰して見ると、この映画に出てくるブルジョワ連中の滑稽なグルメ話とスケール感は全く違えど、結局同じ人種じゃないかと思えるような愉しみ方をしている事に驚いてしまうのですよ。言うなれば“プロレタリアートの秘かな愉しみ”なのでしょう。
そう考えると、この映画の滑稽さがまさに自分に跳ね返ってくるようで、どんな時代のどんな階層の人間であろうと、人間の持つ本質というのはそんなに変わるものではないと、ブニュエルは薄笑いしながら私に向けて言ってるような気がしましたね。
3.5ブルジョアたちのお人柄について…
<食べること>がいつも彼らのアタマにある。富裕層に支えられてきたフランスの食文化を感じる。
また彼らは、なかなか上品でおっとりした人柄に思われる(大使はしたたかだけれど)。意外に憎めない。
一方で、思慮が浅く、というか、何も考えていない。得体が知れぬ不安はあるのだがそれについて考えることもしない。
彼らは、浅はかにも大使に巻き込まれている。また例えば、窮地に立っているレストランになど関心を持たない。悲惨なこども時代を送った兵士の話も軽く聞き流すのみ。まわりに不幸な人生があること、社会が揺れ動いていることなど、お構いなしだ。
神父もあの調子で宗教など役に立たないらしい。それに比べ軍人たちや警官らは、現実に直面している人たちとして描かれているようだ。
脳天気な会食の雰囲気と、現実的な厳しい世界が交錯して、ちぐはぐ感半端ないおかしさがあった。
4.0ブルジョア嫌い
フランスを舞台にした
駐仏ミランダ共和国(中南米の架空の国)大使
ドン・ラファエル・アコスタ(レイ)とその友人たちの物語
特権意識やナルシストぶりが窺える
彼等の愚かさを観察し列挙するブニュエル
合間合間に夢の話や回想がでてくる
偽善者である彼等は浮気や特権活用の麻薬密輸をしながら
庶民の視線を怖れ
無知やプライドのせいで揉め事を起こしてしまったり、
悪事の発覚という悪夢(→殺害する/される)にさいなまれる
革命も怖い
とりあえず兵士には親密に振る舞いマリファナを共に楽しむ
(兵士の回想や夢には幽霊が現れる)
ブルジョア出身らしい司教をアゴで使い、彼は下層民を救済しない
テロリストとは意思疎通は不可能
で、先に拉致
セイリグが好きなので観ていたけれど
女主人タイプのステファーヌ・オードランが面白かった
二人とも背中が開いてるドレスを着用していて
セイリグの大きくあいた背中を見ながら
セヴリーヌを思い出したりする
熟女の肩甲骨まわりって結構魅力的
オードランの方は開きが少なく(肩甲骨も見えない)
両者の違いを表しているようだった
もうひとりの女性はヒッピー世代だし
ここでブルジョアたちを個別に揶揄しているようなのに
気がついた
セイリグが変な動物の(死体みたいな)毛皮を
首に巻いているのが可笑しかった(犬?)
ブルジョア嫌いのブニュエルの映画
悪夢にさいなまれながら陳腐な狭い価値観を持ち
突き進むブルジョアたちを
嘲笑うように自由奔放に表現しまくる監督
いつもつるんでいるのは共犯関係もあるけど
お互いを監視しあっているのかも
色々遊びがありそう…理解出来てないけど
彼の映画を全部見たら、もう少しわかるだろうか
4.0現実も夢も大差ない、空虚な時間の連続性
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