劇場公開日:1981年3月7日
解説・あらすじ
名優ロバート・レッドフォードの監督デビュー作にして、1980年度アカデミー賞4部門(作品・監督・助演男優・脚色賞)に輝いた傑作ヒューマン・ドラマ。ごく普通の中流家庭であるジャレット一家。お互いに尊重し合い、家族4人で幸せな毎日を送っていた彼らに、長男の事故死と次男の自殺未遂という悲劇が降りかかる。そしてこの出来事をきっかけに、信頼しあっていたはずの家族の歯車が少しずつ狂いはじめるのだった……。
1980年製作/124分/アメリカ
原題または英題:Ordinary People
劇場公開日:1981年3月7日
スタッフ・キャスト
受賞歴
第5回 日本アカデミー賞(1982年)
ノミネート
外国作品賞 |
---|
第53回 アカデミー賞(1981年)
受賞
作品賞 | |
---|---|
監督賞 | ロバート・レッドフォード |
助演男優賞 | ティモシー・ハットン |
脚色賞 | アルビン・サージェント |
ノミネート
主演女優賞 | メアリー・タイラー・ムーア |
---|---|
助演男優賞 | ジャド・ハーシュ |
第38回 ゴールデングローブ賞(1981年)
受賞
最優秀作品賞(ドラマ) | |
---|---|
最優秀主演女優賞(ドラマ) | メアリー・タイラー・ムーア |
最優秀助演男優賞 | ティモシー・ハットン |
最優秀監督賞 | ロバート・レッドフォード |
ノミネート
最優秀主演男優賞(ドラマ) | ドナルド・サザーランド |
---|---|
最優秀助演男優賞 | ジャド・ハーシュ |
最優秀脚本賞 | アルビン・サージェント |
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映画レビュー
3.0どこに焦点を当てたストーリーか
兄の死による親子の確執は『スタンド・バイ・ミー』を、カウンセラーとの対話による心のわだかまりの解消は『グッド・ウィル・ハンティング』を連想させる。だが、ストーリーはどこに焦点を当てているのかよく分からない冗長さで、それらの作品にはとても比肩するものではないと思えた。
まず、亡くなった兄がどんな人物で、どういう点が母親に愛されていたのか、逆に主人公である弟はなぜ母親に愛されないのか、そういった状況がよく分からない。また、カウンセラーに対する過去の事件の告白で、わだかまりを解消するシーンも唐突過ぎる。『グッド・ウィル・ハンティング』の場合、心に傷を負った者同士、カウンセラーと主人公とで通じ合うところがあり、それが主人公の心を開くきっかけとなり、心のわだかまりの解消につながったというような深みがあった。だが、今作の場合そういった深み感じられない。それゆえ主人公に終始感情移入しづらい。
ラストシーンにしても、父親との関係は改善されたにせよ母親との溝は深まったままで、今作を『家族の崩壊と再生』というテーマで描きたいのだとすれば、中途半端な結末だ。
これでアカデミー賞四部門受賞なのか、と思わされた。
5.0お母さんは誰が救うの?
地味なんだけど、好きな映画。何年か前に視聴してとても印象に残っている作品。歴代1地味なオスカー作品と言われているけれど、メッセージ性は強い。なかなかレビューも難しい。
きょうだいの死によって、トラウマを抱えた主人公のコンラッド。傷ついた家族たちの物語。普通やったら、家族で力を合わせて悲しみを乗り越えよう!みたいなストーリーになりそうやけど、この作品は違う。長男の死によって、家族の歪みみたいなものが表面化され、修復不可能になっていく。コンラッドが母親に愛されたいけれど自分のせいで兄が死んだから…自分は罰を受けないといけない、幸せになってはいけないんだという気持ちが伝わってきてとても辛い。母親は長男しか愛せなかったわけではなく、自分自身が嫌いやからコンラッドのことも受け入れることができなかったんやよね。
修復不可能と悟った母親が家を出て行くシーンも印象的。父とコンラッドは支え合って生きていくけれど、母親はどうなるんやろう。1人で生きていけるんやろうか。カウンセリングに行き、自分の弱さを吐露したコンラッドと父。一方、自分の弱さを認められなかった母は孤立。弱さを認める強さが必要やなと思う。
5.0タイトルが良い
4.0実は「普通」でなかった普通の人々
<映画のことば>
「平穏だった生活は一つのことで一変した。君は慌て、混乱した。バックだけを愛していた。バックの死とともに、君の愛は葬られてしまったよ。バックではなく、自分を愛していたのか。ともかく君は葬られてしまった。君の正体が、分からない。」
☆ ☆ ☆
直接には一家にかけがえのない長男坊・バックの事故死という不幸を遠因として、少しずつ家族が崩壊していったのは、一見すると一家の中心を占めていた(と、家族の誰にも思われていた)母親であり、妻でもあったベス、その人の、生まれながらにして染み付いていた頑なな人となりそのものに大きな要因があったということでしょう。
本作の「普通の人々」が形作る家族の崩壊は、実はベスの内面に家族が形作られるずっと以前から内包されていて、バックの事故死は、その発露のトリガー(引鉄)に過ぎなかったのだと思います。
(バックが事故死をしなかったとしても、何か他のことを契機として、きっといつかは発現し、本作と同じ結末を迎えていたことは間違いがないと、評論子は思う。)
分析医の力を借りて、コンラッドが過去の桎梏を何とか乗り越えて家族の新たな地平が家族の視野に入ろうとしたとき、このことが白日の下に引き出されてしまった…。
けっきょくベスは、明白に突きつけられてしまった自己の、その人となりの故に、自らのお腹を痛めて産んだわが子であるコンラッドや、最愛の夫であったはずのカルビンの人生から去っていくことになった…そう思えてならないのです、評論子には。
ラストシーンから推すと、コンラッドは、カルビンの真の包容力(父性愛)に包まれながら、自らを取り戻して、ジェニンとは、温かで安定した関係を築いたものと信じて疑いません。。
秀作であったと思います。
まるで一枚の油絵を鑑賞するかのような、重厚な一本として。評論子は。
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