劇場公開日:1976年8月7日
解説・あらすじ
ウォーターゲート事件の知られざる真相を暴き、ニクソン大統領を失脚に導いたワシントン・ポスト紙の記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの回顧録を映画化した社会派サスペンスドラマ。1972年6月、ワシントンD.C.のウォーターゲートビルにある民主党本部に不審な5人組が侵入し、逮捕される。ワシントン・ポスト紙の新米記者ウッドワードは裁判を取材し、当初は単なる窃盗目的と思われた犯人たちの裏に何か大きな存在をかぎとる。先輩記者のバーンスタインと組んで事件の調査にあたることになったウッドワードは、情報提供者ディープ・スロートの助言や編集主幹ブラッドリーの後ろ盾を得て徐々に真相に迫るが……。第49回アカデミー賞で作品賞をはじめ計8部門にノミネート。ブラッドリーを演じたジェイソン・ロバーズの助演男優賞ほか計4部門を受賞した。
1976年製作/132分/アメリカ
原題または英題:All The President's Men
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:1976年8月7日
スタッフ・キャスト
受賞歴
第49回 アカデミー賞(1977年)
受賞
助演男優賞 | ジェイソン・ロバーズ |
---|---|
脚色賞 | ウィリアム・ゴールドマン |
美術賞 | |
音響賞 |
ノミネート
作品賞 | |
---|---|
監督賞 | アラン・J・パクラ |
助演女優賞 | ジェーン・アレクサンダー |
編集賞 | ロバート・L・ウォルフ |
第34回 ゴールデングローブ賞(1977年)
ノミネート
最優秀作品賞(ドラマ) | |
---|---|
最優秀助演男優賞 | ジェイソン・ロバーズ |
最優秀監督賞 | アラン・J・パクラ |
最優秀脚本賞 | ウィリアム・ゴールドマン |
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映画レビュー
3.5硬派でクールな社会派サスペンスの傑作
1972年〜1974年に掛けて発生した“ウォーターゲート事件”を題材に、ワシントン・ポストの2人の記者が事件の真相に迫って行く過程を描く社会派ドラマ。事件を追う2人の記者に、ダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォード。監督は『パララックス・ビュー』(1974)、『ペリカン文書』(1993)のアラン・J・パクラ。脚本は『明日に向って撃て!』(1969)、『ミザリー』(1990)のウィリアム・ゴールドマン。
1972年6月17日。大統領選の最中に民主党本部への不法侵入事件が発生。実行犯として逮捕された5人の素性は、CIAの工作員だった。ワシントン・ポストの新米記者ウッドワード(ロバート・レッドフォード)は、事件に興味を持ち調査を開始。やがて、先輩記者のバーンスタイン(ダスティン・ホフマン)と協力し、彼らはホワイトハウスに繋がる陰謀を明るみにしていく。
事件を追う2人の記者や上司に至るまで、実際の人物名が用いられ、事件を追う2人の私生活や信条を語らず、あくまで彼らがどういった手段で真実を明るみにしていくかを描いており、さながらドキュメンタリーを観ているかのようだった。パソコンもスマートフォンも無い時代、電話と自らの足による地道な取材や、発言をメモして裏付けを取る姿勢、匿名を約束して事件の関係者から情報を引き出そうとする執念の取材の泥臭さが良い。
主演のダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードの演技は勿論、ワシントン・ポストの主幹ブラッドリー役のジェイソン・ロバーズも良い。最初は事件の裏付けが弱いとしながらも、終盤では「彼らを見捨てるな」と、報道の自由を胸に若い記者を信頼する姿が渋い。
カメラワークが素晴らしく、国会図書館で貸し出しカードを手作業でひたすら調べていくウッドワードとバーンスタインを真上から捉えたショットのキレが抜群。次第に高度を増し、図書館全体を見渡せるようになっていく様が、彼らの作業の途方もなさを表している。
中盤、執念の取材にも関わらず、大統領選に圧勝するニクソンの姿を映したテレビ画面と、オフィスでタイプライターを打ち続けるウッドワードの対比も良い。画面の7割を占めようかというテレビ画面と、その隅で仕事に励むウッドワード。まだこの時点では、ホワイトハウスが優勢。
しかし、ラストで事件の黒幕を世間に暴き、生命の危険すら覚悟の上で、尚も記事を書き続けるウッドワードとバーンスタインを捉えたシーンでは、テレビ画面に映る大統領就任式のニクソンの方が端に追いやられている。高らかに宣誓するニクソンの姿は、その後タイプライターの文字で語られる事件終結までの経緯を含めるとあまりにも皮肉。
“ディープ・スロート”からの警告を受けたウッドワードが、バーンスタインの自宅を訪ねた際、盗聴と監視を恐れてタイプライターで会話するシーンが印象的。彼らの記者としての戦い方を端的に表している。
そして、ラストでタイプライターの打刻によって語られる事件のその後の展開。ウッドワードとバーンスタインの勝利を告げる静かなラストが非常にクール。
ドキュメンタリーさながらの硬派でスタイリッシュなタッチによって、社会派サスペンスの名作として評価されるのも納得の一作。また、ブラッドリーをトム・ハンクスが演じた、本作の直前の事件を描いた『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2018)を見返したくなった。
0.5日本人には退屈
4.0地道にコツコツと。
緻密で完成度の高い名作。登場人物は多いが派手なアクションは皆無。ともすれば置いてかれるだけの退屈な映画になりかねないところを、アラン・J・パクラの堅実な演出とゴードン・ウィリスの闇に浮かび上がる美しい撮影、そして主演2人の熱演に支えられ、ヒリヒリとした緊張感漂う格調高いポリティカルサスペンスに仕上がってます。
セットも違和感無いし、ジェイソン・ロバーズの存在感も素晴らしい。特大スクープの裏には、途方も無く地道で粘り強い取材や調査、そして確かなチームワークがあり、あらゆる仕事に言えることだなと鑑賞するたびに再認識させられます。仕事でゴールが見えなくなったり迷ったりした時は、本作を観るようにしてます。
4.0【”二人を見捨てるな。守るべきは憲法修正第一条、と編集主幹はワシントンポスト記者たちに言った。”今作は余りにも有名なウォーターゲート事件の実写化であり、ジャーナリストの執念を描いた作品でもある。】
ー 今作では、派手なカーチェイスや銃撃戦などは一切登場しない。描かれるのは入社して僅かのボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)と先輩記者カール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)が執拗なまでに、民主党本部オフィスに侵入した男5人に関係しそうな人たちに取材する姿である。
或る時は、ほぼ一日待合室で待たされ、或る時は取材を拒否される。だが、社の女性の元交際相手がニクソン再選委員会メンバーと知れば彼女からメンバーリストを手に入れ、只管に取材をし、タイプライターで記事を打ち続けるのである。
そして、徐々にニクソン大統領の右腕であった”ホールドマン”が全てに関わっていた事を突き止めて行くのである。
今作が、ジャーナリスト映画として優れているのは、ワシントンポスト紙の編集主幹だったベン・ブラッドリー(ジェイソン・ロバーズ)の部下を信じ、後押しする姿であろう。
彼が劇中に言う””二人を見捨てるな。””守るべきは憲法修正第一条”という言葉からもそれが伺えるし、ジャーナリスト魂が伝わって来るからである。
”ディープ・スロート”がボブ・ウッドワード記者に情報を流すシーンの演出も効果的である。
<冒頭とラストのシークエンスの連動性や、ラストのニクソン大統領が再選を果たした実演像が流れる中、タイプライターの文字でウォーターゲート事件に関わった人達に有罪が下った事がテロップで流され、ニクソン大統領が史上初めて現職大統領で就任中に辞任した事が最期にテロップで流れて、エンドと言う終わり方も非情に秀逸である。>
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