劇場公開日:1986年4月19日
解説・あらすじ
ジム・ジャームッシュ監督が1984年カンヌ国際映画祭でカメラドールを受賞し、独特のオフビート感覚で一世を風靡した記念碑的作品。ニューヨークで気まま暮らしをしているウィリーが、ハンガリーから渡米してくる従妹エヴァをしばらく預かることになる。最初は彼女を邪険に扱っていたウィリーだったが、同じ時間を過ごすうちに徐々に打ち解けていく。ウィリーの仲間エディも加わった3人で、とりとめのない日々を送るが、ウィリーもエディも、ともにエヴァのことが気になり始めて……。
1984年製作/90分/アメリカ・西ドイツ合作
原題または英題:Stranger Than Paradise
配給:フランス映画社
劇場公開日:1986年4月19日
スタッフ・キャスト
受賞歴
第37回 カンヌ国際映画祭(1984年)
受賞
カメラドール | |
---|---|
カメラドール | ジム・ジャームッシュ |
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映画レビュー
4.0オフビートの温度
5.0大好きです
4.5今振り返ってみても、ジャームッシュ監督の一貫した作風が実感できる一作
本作は、『ダウン・バイ・ロー』(1986)や『ミステリー・トレイン』(1989)、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)など、いわゆる「ミニシアター系」の映画ファンからの絶大な支持を集め続けているジム・ジャームッシュの、劇場公開長編の初監督作にして、代表作の一つです。
故郷ハンガリーからやってきた親戚のエヴァ(エスター・バリント)を引き受けることになった賭博中毒気味のウィリー(ジョン・ルーリー)、そして彼の友人エディ(リチャード・エドソン)の3人がフロリダへと旅立つ……のが大まかなストーリーです。
賭博好きだが別に強運なわけでもない二人なわけだから、当然十分な資金があるわけでなく、宿泊先も古びた安モーテル。これじゃあエヴァじゃなくても機嫌を損ねるところですが、二人はどこ吹く風。このような展開を見せる物語は、ロードムービーとしても十分面白いんですが、この、心が通っているんだかいないんだかよく分からない関係の描写が、いかにもジャームッシュ監督の作品です。
一見即興的な演技ですが、実は入念な筋立てとリハーサルの裏付けがあるとのことで、演出でこんなとぼけた感じ出してんの?とむしろ感心するほど。
撮影するフィルムが不足していて、無駄な撮影をする余裕がなかったことから編み出した作劇術という点も興味深いです。中盤のあるエピソードは、通常ではかなりありがちな落ちなんですが、本作の雰囲気では笑って受け入れてしまえるところが不思議で、そこから意表を突くラストに至って、急にスピード感がますところも良いです!
4.0人間くさいおかしみを抱えた主人公たちが、心をくすぐる一本
大学4年の秋、のちに妻となる彼女との初デートで鑑賞した作品。37年ぶりで、内容はうろ覚えだったため、新鮮な気持ちで見ることができた。
3人が3人とも、自分勝手さと相手を思う気持ちのアンバランスさを抱えているのだが、それが、なんとも人間くさいおかしみがあって、心をくすぐってくる。
携帯も、ネットもなく、電話は一家に一台で、出かける時は、書き置き必須。それらは、日常生活ではリアルで、かつての自分自身にとっては当たり前だったはずのことなのに、映画を見ているうちに、とても遠い昔の夢をみているような気持ちになった。当時を経験している自分ですらそうなのだから、情報化社会の今にあって、当時とは確実に変わった人間関係が当たり前の人たちにとっては、理解不能な映画かもしれないとも思う。
けれど、決して多くはない登場人物たちの誰もが愛すべき側面を持ち、思わずくすっと笑ってしまうような場面が散りばめられた、やっぱり素敵な映画だった。
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