ロード・オブ・ウォーのレビュー・感想・評価
全34件中、1~20件目を表示
3.5「嘘」というキーワードと、孤独な才能。
〇作品全体
物語は主人公・ユーリの成り上がる姿を中心に回っていく。ユーリが銃の魅力に取りつかれ、銃を商売道具として裏の市場を飛び回る物語前半は、テンポ感が楽しい。このテンポ感は演出、といえばそれまでだが、ユーリが銃や武器について門外漢だったというのもあるだろう。政治的な駆け引きよりも誰に対しても武器を売るユーリの大胆なスタンスがあるから、武器商人の刺激的なビジネスも大味で描かれていく。そのジャンキーな大味がまた楽しかったりした。
そしてその調味料として足される、ユーリの「嘘」という要素も印象的。知識豊富な営業マンを装う嘘や、インターポールに向けた「嘘」。その「嘘」の立ち振る舞いが堂々でいて軽快。これがまた楽しい。
一方で物語後半は、前半にキーワードとして使われていた「嘘」が空転する。
破産覚悟で貸し切ったホテルで「経験上、いい関係は嘘の上の築かれる」とモノローグで語るユーリは、嘘によってエヴァを落としたが、「別れの原因もたいてい嘘なのだし…」と自身で語ったとおり、嘘が原因でエヴァや息子と別れることになった。弟の死もエヴァに嘘をついて武器に再び手を出したことが原因であるし、嘘によって手に入れたものを、嘘によって手放すことになった。
ただ一つ、ユーリが手放さなかったものは武器商人としてのユーリだ。手放さなかった…もしくは手放せなかった理由としては、自他共に認める武器商人としての才能には、なにひとつ嘘がないからだろう。
料理の才能がないもののヴィタリーは料理人を目指すが、才能がなかったゆえにユーリを頼って結果命を落とした。エヴァもユーリを頼って芸術家としての道を歩もうとするが、自身が才能がないことを自覚して自信を喪失していく。ユーリがいてほしいと思う人がユーリによって離れていき、ユーリが背中を押したいと思う人がユーリによって舞台から退場していく。この二律背反のような関係性が、才能あるユーリを孤独へとおいやっていく。
ラストシーンはユーリの孤独と合わせて、国家の嘘も顕在化されるのが面白い。国際組織が悪と認めた相手を裁くことはしないという、国家の嘘の顔。しかしその嘘がユーリを活かす。この関係性がユーリにとっての救いにも見えるし、より残酷なものにも見える。
それでも孤独な唯一無二の才能は自身の嘘だけでなく、世界の嘘をも背景に暗躍をし続ける。そんなラストカットだった。
〇カメラワークとか
・やはりオープニングテロップのときの銃弾主観演出がインパクト強い。作品公開から15年もたつとやっぱり嘘くさいCG感が拭いきれないけど、銃弾を検品する人の顔の近さや指の大きさが不気味な感じが逆に味になってる。
4.0悲しい真実
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
主人公のニコラスは弟と共に武器売買に手を染める。
そして弟は引退するが、一人で超一流の闇証人となる。
警察も彼の犯行を確信しているが、尻尾を捕まえられない。
やがて愛する女と出会い、自身の仕事を偽って結婚する。
刑事が妻にニコラスの正体を明かす。
妻は銃で両親を殺されたので、ニコラスを責める。
これを機会にニコラスは足を洗うが、
かつて濃い付き合いのあったリベリアの独裁者に唆され、復帰する。
信用できる仲間もいないので、弟を説得してコンビを組んだ。
いざリベリアへ武器を運ぶことに成功するが、その悲惨さに弟は驚く。
武器を持たない弱者達は理由もなく蹂躙され殺される。
それが当たり前になっている現状を見て弟は武器を売ることは、
罪もない人間達を間接的に殺すようなものだと主張する。
ニコラスは必死に抑えて仕方がないと言い聞かせるが、
弟はついに武器の半分を爆破し、リベリア兵士に殺された。
弟の死を事故死にしてアメリカに帰ったニコラスだが、
結局足がつき、刑事に捕らえられる。
しかしニコラスの予想通り、圧力によって解放となった。
世界最大の武器証人はアメリカを筆頭とした国連常任理事国である。
しかし立場上彼らはおおっぴらに武器を売れないことも多く、
その時にはニコラスのような存在は必要なのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
考えさせられる作品。
おそらく慢性的な内戦という異常な状態の中では、
人間の命の価値なんて小さなものとなってしまうのだろう。
特に理由もなく、武器を持つ者のストレス解消のようなノリで、
簡単に人が殺されて行くのは悲惨だった。
確かにニコラスのような闇商人たちに責任はあるだろう。
しかし上記のように、最大の武器商人は先進国たちなのである。
しかも常任理事国がその力を利用して殺人兵器を売っている。
自国の利益のために・・・こんな世界ははっきり言って異常だ。
この作品は史実に基づいて作られたもので、
内容が内容だけにアメリカではなくカナダでの公開となったそうだ。
今さら綺麗ごとを言うつもりはないが、
それでも少しでも戦争や内戦はなくなって欲しい。
世界のリーダーたる先進国はエゴに走るのをやめるべきだ。
しかし弱者の味方となって全世界を飢餓から救おうとすれば、
たちまち人口爆発が起こって先進国にとっては都合が悪い。
だから助けられない。そういう矛盾と直面して生きている。
自分は、少なくとも贅沢に生きる事はしない。
それはただの自己満足だが、せめてもの誠意だと思う。
平凡という幸せを知らずに生きている人たちもいるのだ。
4.0【”例え合法でも間違っている!”今作は、世界各地で戦争を起こしている真なる要因を見事に喝破した作品である。】
■ユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)はある日、ロシアンギャングの銃撃戦を目撃し、武器売買をビジネスにしようと思い付く。
商才を発揮し、ソ連崩壊という運も味方に付けた彼は、違法な武器売買を追うインターポールの捜査官バレンタイン(イーサン・ホーク)の目を掻い潜り、紛争が続くアフリカへ市場を展開していく。
◆感想
・申し訳ないが、私にとってのニコラス・ケイジは過去の名声に縋っている俳優だと思っていたが、今作の様な社会派映画で堂々と主演を演じている姿を見ると、”参りました・・、”と思ってしまう。
・超絶美人な女性(エヴァ・フォンテーン)と結婚したいがために、武器商人への道を選んだユーリー・オルロフ。だが、結果的には弟(ジャレッド・レト)を薬中にしてしまい、挙句の果ては戦地で弟の命を失ってしまう。
・インターポールの捜査官バレンティンを演じたイーサンホークも、引き締まった身体で存在感を示している。
<エンドロールで流れる言葉が強烈である。
”最大の武器輸出国は、米・英・中・仏・露であり、各国は常任理事国である。”と言うコメントは非常に重い。>
4.0隠れた名作と呼ぶにふさわしい
3.0暴れないケイジでも魅力的
3.0実在する話を基にした切り込んだ作品といえる。 世界に武器を供給して...
3.0興味深いタイトル
3.5何なんだ、やるせ無い
3.5あっち側こっち側
3.0告発のその先も見たかった
4.0「ランボーが使ってた銃をくれ!」「1、2、3・・・どれ?」「1しか観てない」「じゃ、M60だ。ほれ」
僕は弾丸。真鍮板から生まれたんだよ。検査を受けて、箱に詰められ、遥かな異国の地アフリカに渡って来ちゃった。今まさに銃に込められ撃たれたたんだ。あっ、ぶつかる!人間の頭にぶつかっちゃう~~といった具合にオープニング映像がはじまった。
武器商人ユーリー・オルロフの独白でこの映画の凄さ、世界の戦争の裏舞台を思い知らされる。いつもならニコラス・ケイジのハゲ具合ばかりに注目してしまうのですが、途中からチェックするのをすっかり忘れてしまうほど没頭してしまった。生い立ちから武器商人の道を選ぶまでの告白や、各地を飛び回ったときに見つける運命の女性。生々しい戦争の映像がなければ、純粋な一人のビジネスマンのサクセスストーリーとして映る内容なのです。そのビジネスの才能が発揮されるのはソ連崩壊・冷戦終結の時点。商売の才能がなければ、米ソ対立の崩壊によって商売が出来なくなるところをこの男は見事に乗りきり、逆にはずみをつけてしまう。
もちろん、この映画はアメリカの大国主義と戦争が大好きな世界の風刺と告発がメインテーマ。笑えるシーンやガンオタクも唸ってしまうシーンを織り交ぜながら、スリリングな展開で戦慄を感じさせる。また、倉庫の中の銃は偽物を使うよりも本物を使ったほうが安く上がるといった驚愕の事実や、アメリカ資本が投入されていないという事実からもリアル感を盛りたてている。
他の役者では、インターポールの銭形(イーサン・ホーク)とのやりとりが面白いし、弟ジャレッド・レトーがもいい味を出していた。また、同じLORDでも長期間指輪の持ち主であったビルボ・バギンズ(イアン・ホルム)が、この映画では主人公ユーリーが教えを乞おうとした一時のLORDであったことも面白い。弟がコカイン中毒になってしまうときに、エリック・クラプトンの「コカイン」が流れてきたときには笑ってしまったぞ!
【2005年12月映画館にて】
3.0死の商人
ウクライナ難民から名だたる武器商人に成り上がったユーリ・オルロフ(ニコラス・ケイジ)の回想録のような話、本来ならユーリーを悪の権化、インターポールを善として攻防をサスペンスタッチで描くと思ったがユーリーの独白で物語が進んでゆく、頭ではユーリーの生き方など到底是認できるはずもないのだがニコラス・ケイジのイメージで誤魔化されてしまう演出手法には脱帽だ。
映画が武器商人の実態かどうかは知る由もないがアンドリュー・ニコル監督・脚本はかなりリサーチしたようだ、モデルは数人いたらしいが中でもソ連崩壊で大儲けをした元KGBの武器商人ビクトル・ボウトが有名で放映後の2008年タイで拘束され法廷闘争の後2012年に反米テロ組織に武器を売った罪状で禁固25年を言い渡されている、映画では釈放されていたが後日談のような話である、映画化が影響したかは不明だが目立ち過ぎては得意先からも切られるということか・・。
4.5知名度低いが面白い!
3.5ニコラス・ケイジ(硬派 ver.)
面白かった。アンドリュー・ニコル監督のメッセージ性のある作品。
事実を基にした話というのは知っていたが、語り口が実に見事!武器商人自らが述べるその内情。硬派に決めたニコラス・ケイジがとても良い。
主人公の遍歴と東西冷戦構造・ソ連崩壊が重なるような展開。テンポが良く、武器がどのように流通して兵の手に渡るのかも理解しやすい。これは脚本が素晴らしいですね。
そして様々な事を考えさせられるラスト。兵器とは平和とは。この世界はいったい誰が悪なのか・・・。
ビシッと筋が通ってるところが見応えある一本でした。
2.5戦争ビジネス、ビジネス戦争! 武器ディーラー、暗躍、ケイジ! これ...
全34件中、1~20件目を表示
映画.com注目特集
3月21日更新
【衝撃の問題作】なぜ世界は本作に熱狂する?この村は人を喰ってる――“絶対的支持”の理由を解説
提供:ディズニー
【ラスト5分の破壊力】そして“観たことないシーン”のゲリラ豪雨に、感動を超えてもはや放心状態――
提供:東和ピクチャーズ
【あまりにオススメされるので、シリーズ未見だけど観てみた】結果は…ハマるまでのリアルドキュメント
提供:ツインエンジン【映画2000円は高すぎる!!?】知らないと損な“1250円も安く観る裏ワザ”、ここに置いときます
提供:KDDI注目作品ランキング
1
ウィキッド ふたりの魔女劇場公開日 2025年3月7日
2
白雪姫劇場公開日 2025年3月20日
3
35年目のラブレター劇場公開日 2025年3月7日
4
映画ドラえもん のび太の絵世界物語劇場公開日 2025年3月7日
5
お嬢と番犬くん劇場公開日 2025年3月14日
映画ニュースアクセスランキング
- 昨日
- 先週
1
「悪い夏」から考える「日本アカデミー賞受賞に有利な3人の俳優」とは?【コラム/細野真宏の試写室日記】2025年3月22日 08:00
2
伝説の男・只野仁が“令和コンプライアンスブレイクスルー版”で蘇る 「特命係長 只野仁」シリーズ、TVerで配信2025年3月22日 00:00
3
涙する永野芽郁、ガンを飛ばす大泉洋 「かくかくしかじか」9年にわたる濃厚な物語が凝縮された場面写真10枚公開2025年3月22日 10:00
4
ジェームズ・ガン監督が明かす「スーパーマン」を作る意義 DCスタジオの社長業についても語る【撮影現場で直撃】2025年3月22日 11:00
5
ゲーム原作「グノーシア」10月放送開始 メインキャストに安済知佳、長谷川育美、鬼頭明里、七海ひろき、瀬戸麻沙美2025年3月22日 06:00
1
ニコラス・ケイジの変貌ぶりがヤバすぎて主演女優の心拍数が「76→170」に跳ね上がる「一生忘れない」2025年3月11日 18:00
2
櫻井翔×北川景子「映画 謎解きはディナーのあとで」3月29日に放送2025年3月14日 16:00
3
「日曜アニメ劇場」3月16、23日に「宇宙戦艦ヤマト2199」劇場版2作を放送 30日は「ルパン三世VSキャッツ・アイ」2025年3月14日 18:00
4
【閲覧注意】台湾ホラー「ガラ」5月9日公開決定! 衝撃の日本版ビジュアル&予告編&場面写真を一挙公開2025年3月10日 08:00
5
【第48回日本アカデミー賞】最優秀作品賞は「侍タイムスリッパー」 安田淳一監督&山口馬木也が涙2025年3月14日 22:55