ロード・オブ・ウォー
劇場公開日:2005年12月17日
解説・あらすじ
史上最大の武器商人と呼ばれた男の半生をニコラス・ケイジが演じる風刺アクション。ウクライナで生まれて家族といっしょにアメリカに渡ったユーリーは、やがて武器の売買に目をつけ、世界有数の武器商人に成り上がっていくが。監督は「ガタカ」「シモーヌ」のアンドリュー・ニコル。ユーリーの逮捕を狙うインターポールの刑事役でイーサン・ホーク、ユーリーが仕事に引き入れる弟役でジャレッド・レト、ベテラン武器商人役でイアン・ホルムらが共演。
2005年製作/122分/R15+/アメリカ
原題または英題:Lord of War
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
劇場公開日:2005年12月17日
スタッフ・キャスト
インタビュー
アンドリュー・ニコル監督インタビュー
世界の紛争地域に突然現れて戦争を創り出し、巨万の富を得る武器商人たち――。武器売買というビジネスの実態を描いた意欲作「ロード・オブ・ウォー」は、人権擁護団体のアムネスティ・インターナショナルが、本作で描かれるていることに興味を持ち、ワ...
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映画レビュー
3.5「嘘」というキーワードと、孤独な才能。
〇作品全体
物語は主人公・ユーリの成り上がる姿を中心に回っていく。ユーリが銃の魅力に取りつかれ、銃を商売道具として裏の市場を飛び回る物語前半は、テンポ感が楽しい。このテンポ感は演出、といえばそれまでだが、ユーリが銃や武器について門外漢だったというのもあるだろう。政治的な駆け引きよりも誰に対しても武器を売るユーリの大胆なスタンスがあるから、武器商人の刺激的なビジネスも大味で描かれていく。そのジャンキーな大味がまた楽しかったりした。
そしてその調味料として足される、ユーリの「嘘」という要素も印象的。知識豊富な営業マンを装う嘘や、インターポールに向けた「嘘」。その「嘘」の立ち振る舞いが堂々でいて軽快。これがまた楽しい。
一方で物語後半は、前半にキーワードとして使われていた「嘘」が空転する。
破産覚悟で貸し切ったホテルで「経験上、いい関係は嘘の上の築かれる」とモノローグで語るユーリは、嘘によってエヴァを落としたが、「別れの原因もたいてい嘘なのだし…」と自身で語ったとおり、嘘が原因でエヴァや息子と別れることになった。弟の死もエヴァに嘘をついて武器に再び手を出したことが原因であるし、嘘によって手に入れたものを、嘘によって手放すことになった。
ただ一つ、ユーリが手放さなかったものは武器商人としてのユーリだ。手放さなかった…もしくは手放せなかった理由としては、自他共に認める武器商人としての才能には、なにひとつ嘘がないからだろう。
料理の才能がないもののヴィタリーは料理人を目指すが、才能がなかったゆえにユーリを頼って結果命を落とした。エヴァもユーリを頼って芸術家としての道を歩もうとするが、自身が才能がないことを自覚して自信を喪失していく。ユーリがいてほしいと思う人がユーリによって離れていき、ユーリが背中を押したいと思う人がユーリによって舞台から退場していく。この二律背反のような関係性が、才能あるユーリを孤独へとおいやっていく。
ラストシーンはユーリの孤独と合わせて、国家の嘘も顕在化されるのが面白い。国際組織が悪と認めた相手を裁くことはしないという、国家の嘘の顔。しかしその嘘がユーリを活かす。この関係性がユーリにとっての救いにも見えるし、より残酷なものにも見える。
それでも孤独な唯一無二の才能は自身の嘘だけでなく、世界の嘘をも背景に暗躍をし続ける。そんなラストカットだった。
〇カメラワークとか
・やはりオープニングテロップのときの銃弾主観演出がインパクト強い。作品公開から15年もたつとやっぱり嘘くさいCG感が拭いきれないけど、銃弾を検品する人の顔の近さや指の大きさが不気味な感じが逆に味になってる。
4.0悲しい真実
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
主人公のニコラスは弟と共に武器売買に手を染める。
そして弟は引退するが、一人で超一流の闇証人となる。
警察も彼の犯行を確信しているが、尻尾を捕まえられない。
やがて愛する女と出会い、自身の仕事を偽って結婚する。
刑事が妻にニコラスの正体を明かす。
妻は銃で両親を殺されたので、ニコラスを責める。
これを機会にニコラスは足を洗うが、
かつて濃い付き合いのあったリベリアの独裁者に唆され、復帰する。
信用できる仲間もいないので、弟を説得してコンビを組んだ。
いざリベリアへ武器を運ぶことに成功するが、その悲惨さに弟は驚く。
武器を持たない弱者達は理由もなく蹂躙され殺される。
それが当たり前になっている現状を見て弟は武器を売ることは、
罪もない人間達を間接的に殺すようなものだと主張する。
ニコラスは必死に抑えて仕方がないと言い聞かせるが、
弟はついに武器の半分を爆破し、リベリア兵士に殺された。
弟の死を事故死にしてアメリカに帰ったニコラスだが、
結局足がつき、刑事に捕らえられる。
しかしニコラスの予想通り、圧力によって解放となった。
世界最大の武器証人はアメリカを筆頭とした国連常任理事国である。
しかし立場上彼らはおおっぴらに武器を売れないことも多く、
その時にはニコラスのような存在は必要なのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
考えさせられる作品。
おそらく慢性的な内戦という異常な状態の中では、
人間の命の価値なんて小さなものとなってしまうのだろう。
特に理由もなく、武器を持つ者のストレス解消のようなノリで、
簡単に人が殺されて行くのは悲惨だった。
確かにニコラスのような闇商人たちに責任はあるだろう。
しかし上記のように、最大の武器商人は先進国たちなのである。
しかも常任理事国がその力を利用して殺人兵器を売っている。
自国の利益のために・・・こんな世界ははっきり言って異常だ。
この作品は史実に基づいて作られたもので、
内容が内容だけにアメリカではなくカナダでの公開となったそうだ。
今さら綺麗ごとを言うつもりはないが、
それでも少しでも戦争や内戦はなくなって欲しい。
世界のリーダーたる先進国はエゴに走るのをやめるべきだ。
しかし弱者の味方となって全世界を飢餓から救おうとすれば、
たちまち人口爆発が起こって先進国にとっては都合が悪い。
だから助けられない。そういう矛盾と直面して生きている。
自分は、少なくとも贅沢に生きる事はしない。
それはただの自己満足だが、せめてもの誠意だと思う。
平凡という幸せを知らずに生きている人たちもいるのだ。
4.0【”例え合法でも間違っている!”今作は、世界各地で戦争を起こしている真なる要因を見事に喝破した作品である。】
■ユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)はある日、ロシアンギャングの銃撃戦を目撃し、武器売買をビジネスにしようと思い付く。
商才を発揮し、ソ連崩壊という運も味方に付けた彼は、違法な武器売買を追うインターポールの捜査官バレンタイン(イーサン・ホーク)の目を掻い潜り、紛争が続くアフリカへ市場を展開していく。
◆感想
・申し訳ないが、私にとってのニコラス・ケイジは過去の名声に縋っている俳優だと思っていたが、今作の様な社会派映画で堂々と主演を演じている姿を見ると、”参りました・・、”と思ってしまう。
・超絶美人な女性(エヴァ・フォンテーン)と結婚したいがために、武器商人への道を選んだユーリー・オルロフ。だが、結果的には弟(ジャレッド・レト)を薬中にしてしまい、挙句の果ては戦地で弟の命を失ってしまう。
・インターポールの捜査官バレンティンを演じたイーサンホークも、引き締まった身体で存在感を示している。
<エンドロールで流れる言葉が強烈である。
”最大の武器輸出国は、米・英・中・仏・露であり、各国は常任理事国である。”と言うコメントは非常に重い。>
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