GEMNIBUS vol.1
劇場公開日:2024年6月28日

解説・あらすじ
東宝が手がける才能支援プロジェクト「GEMSTONE Creative Label」初の劇場公開作品として、新進気鋭の監督たちが競作する短編オムニバス映画「GEMNIBUS」の第1弾。
CGクリエイターの上西琢也監督が2023年にYouTubeで発表し再生数420万回以上を記録したショートフィルムを、迫真の映像と5.1ch音響のシネマティック・バージョンとして上映する「ゴジラ VS メガロ」、縦型映像のホラー映画「娯楽」がTikTok TOHO Film Festival 2022のサードアイ賞を受賞した平瀬遼太郎監督が、親子の血縁の結びをスタイリッシュな映像で描いたサイコスリラー「knot」、テレビアニメ「薬屋のひとりごと」などの絵コンテ・演出を手がけたアニメーターのちな監督とピアニストの角野隼斗がタッグを組み、アニメに生命を吹き込むことの面白さと残酷さを大胆に描いた新感覚アニメ「ファーストライン」、第75回カンヌ国際映画祭の#TikTokShort Filmコンペティションでグランプリを受賞した本木真武太監督が、少子高齢化問題を背景に撮りあげたSF学園ゾンビ映画「フレイル」の4本で構成。
2024年製作/97分/G/日本
配給:TOHO NEXT
劇場公開日:2024年6月28日
スタッフ・キャスト
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フォトギャラリー
映画レビュー
2.0高齢化問題を取り上げた映画になぜゾンビが?
3.5育成枠
若手育成と新しい才能の紹介の場という機能としては、面白い試みなのはよかった。
ただ、個別の作品クオリティに凸凹がありすぎた印象で、ものによっては「なんでこれをOKしたの?」と思わなくもなく。
時に、野球でたとえれば、二軍の13-0の試合の7回表攻撃を観てるようなかったるさすらあり。
監督というよりは、プロデューサー陣の育成が重要なんじゃないかとも思いました。
以下、個別の感想。
『ゴジラ VS メガロ』はYouTubeで発表、公開済みで新鮮味は薄れ、白組の金属質なCGの癖が強くて、日比谷のスクリーンだと目がチカチカした印象。
『ファーストライン』は微笑ましい佳作。
作画、演出の奥深い世界を感じつつ、「アニメーターの描くアニメーター」というのがすごくリアル。
演技もキャラも、作監のアニメーターの味が出ていて見応えがありました。
「とにかくやってみたい、始めたい」「上手くなりたい」という衝動を描いた作品であり、『音楽』『ルックバック』をどことなく思い出す部分もありました。
『knot』の絵面はたしかにスタイリッシュ方向ながら、見せたい絵が優先な演出で繋がりが悪く、脚本的練り込みの弱さが目立った。
『フレイル』はチープ。
3.0挑戦的でありながら、いまだ完成はしていない姿を。
【ゴジラ vs メガロの感想】
ゴジラ自体は、ゴジラ-1.0しか見たことがなく、
旧作品は雰囲気でしか知らなかった部分が大きいのですが、
こうやって新しい作品と出会えたことでゴジラ自体に興味を持つことも出来ました。
既にあるキャラクターを使うということで、元々のファンの方からの視点も
意識されて作っておられるとは思うのですが、
怪獣が街を壊していく様子が、人間の力ではどうしようもない自然災害と同様に
無力さのようなものを改めて感じさせてくれるとともに、
それを素直に受け取ることが出来るような作品になっていたと思います。
残念なのは時間が短いことで描き切れていなかった部分に対して、
中途半端に切れて終わってしまったようにも感じたところです。
勝敗はつき、ゴジラもまた倒れたが、瞳が動いている(死んではいない)
という着地点なのでしょうが、それであればもう少し逃げ惑うシーンを短くしてでも
ストーリー的なものを観たい気持ちもありました。
この作品の伝えたいことはそこではないのだろうという意味では
これはこれでこうした終わり方なのだろうと私は受け取ることが出来ましたが、
素直に受け止めた時にそうした感情もあったことは事実です。
迫力のある映像とゴジラ自体の魅力、メガロの魅力も感じることが出来ましたが、
メガロ自身の見せ所ももう少しあるとゴジラだけの魅力ではない部分が
味わえたのかなとも思いました。
全体として分かりやすく面白く、迫力もありよかったように思います。
(最初のメガロが倉庫に現れた時に生配信しているようなシーンの
俳優さんの声が聞き取りづらかったです)
【knot】
ストーリーと魅力的なキャラクターが映画として面白く、
写真のインパクトも強かったので、knotだけでなく子供を抱く父の写真も含めて
”写真”が裏のテーマになっている作品のように感じました。
(藤田さんが特に私は好きでした)
引き込まれていくストーリーと少し夢にも見そうな怖いパンダのような顔の見え方。
あきらくんの縁起が秀逸で、無垢なように見えて最終的にあんな終わり方をするとは
思ってもおらず。
かと言って、意外性が突き抜けて理解を出来ないほどに突飛なものでもなかったように
思います。
滝藤賢一さんの演技は彼ならではの、理解が出来るような狂気さがきちんと感じられ、
暗い画面だけれども何が起きているのかが映画館の大きな画面では分かりやすく、
少し昭和初期の文学的なにおいも感じました。
全般的に主役の方よりも周りの方のキャラクターが濃いことで、逆に面白さが
引き立っており、これはあえてそうした部分もあったのかなと思えて、
良かったです。
(このストーリーで主役もめちゃくちゃキャラクターが濃いことが分かりやすかったら
少しお腹いっぱいになってしまったかもしれないので)
特に印象に残ったのはやはり親子の写真かなと。
あと取材を申し込んできた記者さんのウザさが絶妙でした。
【ファーストライン】
短いなりに面白さや印象に残るものも大きかったのですが、
個人的には音楽の活かし方がもう少し”音楽”を引き立ててくれるもので
あったらよかったなと思いました。
(個人的に音楽に寄せる期待が大きすぎたからかもしれません)
少しジブリに似すぎている印象もあり、
ジブリの世界観と表し方には哲学が根底にあって、
伝えたいことが伝わるだけの長さがあるのですが、
今回のものに関してはストーリーよりも見せ方の方に印象が強く残って
しまい、自分なりの表現の仕方で。というような部分が少し薄く感じられた
事が残念でした。
視覚的にひらめきや感情が分かるのは面白く、
監督?であるおじいさんや主人公、先輩方の登場人物が嫌味なく
それぞれに存在していて、あの長さであれだけの登場人物が居ても
違和感なく楽しめました。
絵も現代風で、おしゃれなMVなども出来そうだなと思っていましたが、
もう少しストーリーが見てみたいと思う一作でした。
【フレイル】
テーマとしての高齢者の今後というのは面白く、2035年というわりとすぐ近くの
未来であることもまた、イメージがしやすいひとつの身近さであったように
思います。
主人公の男性の歌がとても上手で、そのシーンと息子との邂逅が分かりやすく、
印象的でした。
またストーリーとして“悪者”である経済学者が実際に手を下したか下していないか
分かりづらい中での人の操作をしているマスコミや声の大きい有名人を
象徴しているところも社会性の反映が見られて面白かったように思います。
設定として戻るべき時代は高校生であるべきなのか、などの必然性が分かりにくい
ところはありましたが(学校という中での出来事を描くためにそうしたというような
理屈の問題ではなく、政府側の決めた真因のようなもの)
全体的に画面が少し自主映画感を感じたものの、実際にストーリーなどは面白く、
CGなども含めて違和感が少ないものではありました。
何をどうすれば……といった専門的なものは判りませんが、
見終わった後にひとつの「こうした終わり方もあるよね」というような答えが
高齢者社会や社会に対しての問題提起というには弱かった部分も、もう少し
面白く描けそうなところがあったので、残念です。
テーマも含めて描き切ってくれたらもっと面白そうなので、4にさせて下さい。
全体を見ていて、それが出来そうな予感はしたので。
【GEMNIBUSに関しての感想】
監督で映画を観る。知名度で映画を観る。ということはあまりないため、
新鮮で面白かったです。
あえて新星を使うのであれば、せっかくの東宝のプロジェクトなので、
もっと劇場でCMを入れるなど知名度を上げたり、
新人監督では使えないような俳優さんを起用することで「有名監督の撮る
有名俳優」ではなく「新星の監督が見つけた有名俳優の切り取り方、視点」
なども話題性があり、もっとたくさんの人に見てもらうきっかけになるのではないかと
感じました。
(予算やスケジュールの問題はあるかもしれませんが、東宝のPJTであることや
それにかける熱意が伝われば出て下さる俳優さんもたくさんいらっしゃる様に思います)
また、可能であれば今回のように“音楽”で有名な方が参加されていたり、
監督さん、俳優さん以外の重要な要素を1つのテーマとして、
今回は音楽を全て著名な方々のものを使って同じ曲を使いながらこんなにも違う
映画が撮れるんだ。という視点の差みたいなものを見るなどの企画も面白そうだと
思います。
映画はどのように作られたのかをYouTubeなどで観ることで「裏側を知って、
作品を見てみよう」ということにつながる可能性もあるのではないかと思います。
私は映画の作り方を知らないので、逆にそうした作品が4本のうち1本くらい
ドキュメンタリーとしてあっても面白いかなと感じました。
あの作品の、あの監督の、あの俳優さんの、あの音楽の、映画が見たい。
映画館の大画面で見たい、没入感で観たい、いい音で包まれてみたい。
そうした要素それぞれが全ての映画のそれぞれの魅力になっているように思うので、
本やYouTubeでは味わえない、映画館だからこそ、東宝だからこその映画を
期待しています。
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