風よ あらしよ 劇場版
劇場公開日:2024年2月9日
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解説・あらすじ
大正時代に結婚制度や社会道徳に真正面から異議を申し立てた女性解放運動家・伊藤野枝を描き、2022年にNHK BS4K・8Kで放送された吉高由里子主演のドラマ「風よ あらしよ」を劇場版としてスクリーン上映。原作は村山由佳による同名の評伝小説。
福岡の田舎の貧しい家で育った伊藤野枝は、家族を支えるための結婚を断り、単身上京する。「元始、女性は太陽だった」と宣言し、男尊女卑の風潮が色濃い社会に異を唱えた平塚らいてうに感銘を受けた野枝は、らいてうらによる女流文学集団・青鞜社に参加。青鞜社は野枝が中心になり婦人解放を唱えていく。第一の夫であるダダイスト・辻潤との別れ、生涯をともにする無政府主義者・大杉栄との出会い、そして関東大震災による混乱のなかで彼女を襲った悲劇など、野枝の波乱に満ちた人生を描いていく。
野枝役を吉高、平塚らいてう役を松下奈緒、辻潤役を稲垣吾郎、大杉栄役を永山瑛太がそれぞれ演じる。演出は吉高主演のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」も手がけた柳川強。
2023年製作/127分/G/日本
配給:太秦
劇場公開日:2024年2月9日
スタッフ・キャスト
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映画レビュー
3.5人権
-それを百年前に主張していた人
昨年が関東大震災百周年という事は、そのドサクサの最中に虐殺された伊藤野枝と大杉栄の百回忌でもあったのです。恐らく、その区切りを意識して作られたのであろうNHK制作の劇場ドラマです。
伊藤野枝の激動の人生を2時間にまとめるには駆け足にならざるを得ず、大杉栄を中心としたドロドロ恋愛劇は抑制気味でしたが、よくまとまっていました。そして、今更こんな事言うのも失礼ですが、吉高由里子さんはやっぱり上手いなぁ。それ故に、今年の大河ドラマに起用されたのだろうし、その宣伝を意識して本作の主役にも抜擢されたのでしょう。
いや、それにしても百年前に女性の権利をあれだけ先鋭的な形で主張をしていたのは驚きだなぁ。彼女の論文を読んでみよう。
3.5個人史であり事件史
男尊女卑の風潮が色濃い明治大正の世を、女として、アナキストとして駆け抜けた伊藤野枝。その短くも激しい生涯を描いた作品である。
原作は村山由佳による同名の評伝小説。伊藤野枝と言えば、甘粕事件で大杉栄とともに殺された愛人という認識しかなかったのだが、福岡県今宿の出身であること、平塚らいてうから青鞜を引き継いだことなどは、この小説で初めて知った。原作には大杉栄や平塚明(らいてう)の視点から描かれた章もあるが、映画では一貫して野枝の一人称で語られる。
主演が吉高由里子であること、最初は単なる田舎娘だったのが徐々に才能を発揮してゆくこと、福岡での結婚生活を捨てて上京、己の愛に生きること(これは蓮様だが)などから、「花子とアン」を連想せずにはいられない(石橋蓮司や山田真歩まで出てくるし)。と思ったら、演出の柳川強は「花子とアン」のディレクターも務めていたということで納得。
元々はテレビで3回にわたって放映されたドラマ(こちらは未見)の劇場版らしいが、どうしても朝ドラの総集編めいた感じは否めない。特に辻潤(稲垣吾郎)、大杉栄(永山瑛太)など、最初魅力的に見えた野枝のパートナーたちが、直ぐにダメ男になり下がる展開の速さには違和感を覚えた。その反面、自由奔放で純粋な野枝の強さが際立っており、なぜ男に従わなければならないのか、なぜ女だけ自由がないのかと、自分自身を貫く生き様は丁寧に描かれている。
タイトルの「風よあらしよ」にしてもそうだ。これは「吹けよ あれよ 風よ あらしよ」(「吹けよ風 呼べよ嵐」ではない)という野枝の言葉に由来する。風やあらしが世間の荒波だとすると、それを避けるのではなく敢えて立ち向かうという、彼女の信念が伝わる良いタイトルだ。しかし、この作品は伊藤野枝という女性の一代記であると同時に、当時の事件史でもある。
甘粕事件は関東大震災から2週間後に起こっている。「福田村事件」(こちらにも永山瑛太が出ていた)と同じく流言飛語に過剰反応した結果の悲劇だ。そして、大杉栄が自分の原点と語った足尾鉱毒事件。「なぜ同じ人間なのに、この人たちだけが辛い思いをするのか」という野枝の声を「単なるセンチメンタル」と切って捨てる辻。そして半ば強制的に村民を追い出し遊水地を作った政府と、言論統制に屈したマスメディア。それらに異を唱えた野枝は、もういない。
歴史は繰り返す。令和の今も状況はさして変わらない。濃密な恋愛模様を描き、ジェンダー問題を取り上げただけでなく、「声を上げなくても良いのか?」と問いかけるような社会批判も内に含んだ、油断できない作品だった。
4.0伊藤野枝と大杉栄、100年前の二人の生きざま。いつまでも語り継ぐべき物語。
NHKで放送されたドラマを映画化したもの。伊藤野枝を吉高由里子が演じているとあって興味を持った。2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」でも主役。そして藤原 道兼役の玉置玲央がこの映画でも出てくる。
以前、韓国映画「金子文子と朴烈(パクヨル)」も見た。いずれも史実に基づく映画であるが、この韓国映画の迫力・衝撃が忘れられず。いずれにしても、二つの物語を見て女性の抑圧された境遇と凄まじいまでの信念と生きざま、100年前の政治的圧力、弾圧、民衆の暴走の恐ろしさを感じた。
★ 女性解放運動に邁進する伊藤野枝(吉高由里子)の波乱の人生、力強い意思を持ち行動する女性の物語。そしてアナキスト大杉栄(永山瑛太)との出会い。ほぼ百年前の1923年の関東大震災で国家反逆思想で捉えられ1923年9月16日二人は殺害される。甘粕事件。
★ 韓国映画「金子文子と朴烈(パクヨル)」2019年日本公開。朝鮮と日本で活動したアナキスト(無政府主義者)の朴烈(パクヨル)と、朴に共鳴した日本人女性アナキスト金子文子を描いた映画。関東大震災朝鮮人虐殺事件の中で捉えられ、裁判を経て無期懲役となる。金子文子は1926年7月23日獄中死する。朴烈は生き延び韓国に帰国1974年1月17日死去。韓国人俳優らが日本語・韓国語で演じている。Prime Video で見れる。
★ 伊藤野枝と大杉栄はあっさりと殺され、葬られる一方、金子文子らは日本人弁護士の惜しみない努力も実り裁判、恩赦もあり無期懲役に。しかし、朴烈を思い続け金子文子は3年後に死亡、しかし朴烈は50年後まで生き続ける。
★ 伊藤野枝・大杉栄の話は有名でよく取り上げられ、テレビ放映の劇場版であることで個人的には物足りなさもあった。でも、この話をあまり知らない人にはとても印象に残る展開であろう。
★ 配給は「太秦」。福田村事件も取り上げている会社。
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