Movatterモバイル変換


[0]ホーム

URL:


映画のことなら映画.com
ホーム >コラム >若林ゆり 舞台.com >ミュージカル「ピピン」は日本語版も最高レベルで観客に魔法をかける!

コラム:若林ゆり 舞台.com - 第80回

2019年6月18日更新

若林ゆり 舞台.com

第80回:ミュージカル「ピピン」は日本語版も最高レベルで観客に魔法をかける!

だからなのだ。この公演の観客は、舞台の一部になったような感覚を楽しめるようになっている。たとえばピピンのおばあちゃん、バーサ(中尾ミエ前田美波里のWキャスト)と一緒に歌いながら、その荒技に驚きながら、「好きなことをして人生を楽しまなきゃ」と心から思える瞬間はほんとうに心地いい!

また、この作品を日本版ではなく日本語版としているのは、「日本語」に非常なこだわりを持っているからでもある。メインキャストのうち城田優クリスタル・ケイ、宮澤エマがネイティブ英語をしゃべることもあって、稽古場ではパウルスとキャストが英語で指示や確認を飛ばし合い、セリフだけが日本語という不思議な状態に。城田が「extraordinary」の訳語に「ここでは“もっと”と強調したい」と提案したり、パウルスの意向を汲んで“偏見”とされていた言葉を“差別”に直されたり。

画像1

「稽古場ではセリフの翻訳をどうしていくか、一語一語検証しながら着地点を探っているところよ。演者もエキサイトしているから、稽古場はものすごい熱を帯びているの(笑)」

そう言うパウルスも熱っぽい人だが、実は半分日本人だとか!

「父は戦時中に軍人として来日したアメリカ人で、進駐軍が東京宝塚劇場を占拠してアーニー・パイル劇場と呼ばれていた頃にそこで演出をしていたそうなの。そのとき出会ったのが母。母は亡くなってしまったけれど、宝塚の大ファンだったのよ」

「日本に来るまでは日本版がどうなるかまるで見当がつかなかった」というパウルスも、稽古を始めてからは日本のキャストたちに「圧倒されている」と賞賛を惜しまない。

「日本のキャストは、スキルも演技も、ユーモアも最高レベルよ。私は毎日のようにアメリカのスタッフに電話して『今回のキャストを見に来なきゃダメよ、いままでで最高よ!』と言っているの。(城田)優はインクレディブルよ! 彼はすでにピピンという役柄をつかんでいる。ピピンの情熱、滑稽さ、ユーモアのセンスがあり、素晴らしい歌い手でもあるわ。アメリカのスターはあれほど気さくじゃない(笑)。優はスターらしいそぶりを見せることなく、腕まくりをして『やりましょう!』という感じね。クリスタルも、バーサ役の2人も、宝塚のトップスターの方(霧矢大夢)も、誰ひとりエゴや虚栄心を持っていない。クリスタルはミュージカルをやるのは初めてなんでしょう? からかわれているのかと思ったわ(笑)。彼女は毎日、すごい勢いで変わっている。つねに『教えて教えて、何をすればいいの?』って、何もかも吸収したくてしょうがない。彼女はすべてを持っていると思うわ」

撮影:若林ゆり
撮影:若林ゆり

完全に同意だ。未熟な純真さを湛えた城田ピピンの心の動きに、観客は呑まれ、共鳴する(前髪が目の表情を隠してしまうのだけはちょっと残念)。実は、シンガーのクリスタル(1カ月前の稽古場から別人級に鍛え上げられた肉体と声の妖しさ!)をこのミュージカルに「Join Us!」とラインで呼び込んだのは、10年来の友人である城田。クリスタルは偶然、ニューヨーク滞在中にこの作品を観劇して大感激、おまけにリーディング・プレイヤー役のパティーナ・ミラーに間違われたという“縁”があったそうだ。開幕直前に城田は、言葉を尽くして作品の魅力を訴えた。

「これが、城田優のミュージカル史上、いちばん難易度が高く、チャレンジングでありスリリングであり、誰が見ても『すごい』と、ひと目でわかる作品。今後僕が演じる役として、これ以上は絶対にないと言い切れますし、いましかできない。ジャンルは『ピピン』としか言いようがない作品で、ただ座って見ていればどんどん感動が感動に重なって、最終的に何で泣いているのかわからないくらいになっちゃうと思う。僕は毎回、個人的な城田優としても泣いています。演じていながら、お客さん側の感情も持っている感覚があるから。『見たら一生忘れられないものをお見せしましょう!』というリーディング・プレイヤーのセリフどおりだし、絶対観たことない! これがデビューのクリ(クリスタル)も、高すぎる要求に見事、応えています。僕、自分の出る作品をこんなに興奮してしゃべることはないんです。お客さんとしてはこれほど楽しいものはない。こんなに魔法にかかったような時間はめったにない。ぜひぜひ劇場へ見に来て、僕が言っていることが本当かどうか確かめてください!」

ミュージカル『ピピン』日本語版は6月30日まで東急シアターオーブで上演中。7月には名古屋、大阪、静岡でも公演あり。詳しい情報は公式サイトへ。
http://www.pippin2019.jp/

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

Amazonで今すぐ購入

    映画.com注目特集

    3月19日更新
    ガンニバルの注目特集
    注目特集ガンニバル

    【衝撃の問題作】なぜ世界は「ガンニバル」に熱狂するのか? “絶対的支持”の理由を徹底解説!

    提供:ディズニー

    【ラスト5分の破壊力】そして“観たことないシーン”のゲリラ豪雨に、感動を超えてもはや放心状態――

    提供:東和ピクチャーズ

    【あまりにオススメされるので、シリーズ未見だけど観てみた】結果は…ハマるまでのリアルドキュメント

    提供:ツインエンジン

    【映画2000円は高すぎる!!?】知らないと損な“1250円も安く観る裏ワザ”、ここに置いときます

    提供:KDDI

    俳優・監督ランキング

    1. 1

      キム・セロン関連作品雪道

    2. 2

      河合優実関連作品悪い夏

    3. 3

      永瀬廉関連作品ふれる。

    4. 4

      山口馬木也関連作品侍タイムスリッパー

    5. 5

      キム・スヒョン関連作品リアル

    俳優・監督ランキングの続きを見る
    スクリーニングマスター誘導枠

    映画ニュースアクセスランキング

    本日

    1. 養女に迎えた7歳の少女の“正体”は、本当に成人女性なのか? 全米を騒がせた実話を基にした衝撃作、配信開始

      1

      養女に迎えた7歳の少女の“正体”は、本当に成人女性なのか? 全米を騒がせた実話を基にした衝撃作、配信開始

      2025年3月20日 09:00
    2. 実写「白雪姫」“7人のこびと”おとぼけ役は風間俊介「願いが叶いました」

      2

      実写「白雪姫」“7人のこびと”おとぼけ役は風間俊介「願いが叶いました」

      2025年3月20日 07:00
    3. WEST.主演映画「裏社員。スパイやらせてもろてます」に恒松祐里が出演! 全編関西弁でヒロイン役に挑戦

      3

      WEST.主演映画「裏社員。スパイやらせてもろてます」に恒松祐里が出演! 全編関西弁でヒロイン役に挑戦

      2025年3月20日 12:00
    4. 【インタビュー】柳楽優弥×笠松将「ガンニバル」完結編を“3つのキーワード”で語り尽くす

      4

      【インタビュー】柳楽優弥×笠松将「ガンニバル」完結編を“3つのキーワード”で語り尽くす

      2025年3月20日 11:00
    5. 高橋文哉&西野七瀬にもたらした、瀬々敬久監督からの大きな財産【「少年と犬」インタビュー】

      5

      高橋文哉&西野七瀬にもたらした、瀬々敬久監督からの大きな財産【「少年と犬」インタビュー】

      2025年3月20日 12:00

    今週

    1. ニコラス・ケイジの変貌ぶりがヤバすぎて主演女優の心拍数が「76→170」に跳ね上がる「一生忘れない」

      1

      ニコラス・ケイジの変貌ぶりがヤバすぎて主演女優の心拍数が「76→170」に跳ね上がる「一生忘れない」

      2025年3月11日 18:00
    2. 櫻井翔×北川景子「映画 謎解きはディナーのあとで」3月29日に放送

      2

      櫻井翔×北川景子「映画 謎解きはディナーのあとで」3月29日に放送

      2025年3月14日 16:00
    3. 「日曜アニメ劇場」3月16、23日に「宇宙戦艦ヤマト2199」劇場版2作を放送 30日は「ルパン三世VSキャッツ・アイ」

      3

      「日曜アニメ劇場」3月16、23日に「宇宙戦艦ヤマト2199」劇場版2作を放送 30日は「ルパン三世VSキャッツ・アイ」

      2025年3月14日 18:00
    4. 【閲覧注意】台湾ホラー「ガラ」5月9日公開決定! 衝撃の日本版ビジュアル&予告編&場面写真を一挙公開

      4

      【閲覧注意】台湾ホラー「ガラ」5月9日公開決定! 衝撃の日本版ビジュアル&予告編&場面写真を一挙公開

      2025年3月10日 08:00
    5. 【第48回日本アカデミー賞】最優秀作品賞は「侍タイムスリッパー」 安田淳一監督&山口馬木也が涙

      5

      【第48回日本アカデミー賞】最優秀作品賞は「侍タイムスリッパー」 安田淳一監督&山口馬木也が涙

      2025年3月14日 22:55

    [8]ページ先頭

    ©2009-2025 Movatter.jp