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希望はどこにある――「全修。」11話レビュー&感想

©全修。/MAPPA

破滅近づく「全修。」。第11話、ルークたちの状況は絶望的である。それでも私たちが感じる希望は、どこにあったのだろう?

 

 

全修。 第11話「絶望。」

zenshu-anime.com

1.絶望は2段階

町民たちの攻撃によって、飲み込まれたヴォイドごと姿を消してしまったナツ子とユニオ。ルークは魂が抜けたようになり、最後の街の人々も次々と命を落とし……

 

©全修。/MAPPA

再び歩き出す「全修。」。第11話は状況が更に悪化する回だ。勇者ルークは最後には自らソウルフューチャーを破壊してしまい、『滅びゆく物語』の原作通りの破滅は避けられないように思える。だが、もう駄目だと思っている視聴者はいないだろう。なぜ私たちは希望を持てるのか、今回はその理由を考えたい。

 

©全修。/MAPPA

希望を考えるにあたって最初に触れたいのはその反対、今回の副題にしてルークが抱える絶望である。前回ナツ子とユニオを眼前で失った彼は大きなショックを受けたが、その絶望には2つの段階があった。1段階目は仲間の叱咤にも反応しないほどの呆然自失、2段階目は絶叫して血が出るまで地面を殴り続ける激しい憤りだ。ショックではあっても最初は戦いが終わったら何をしようかと空想に逃避できるくらいの余力があったが、ナツ子のタップの消滅を見た後はそれすらできなくなってしまったのである。

 

「絶望」。口にすればわずか4文字だが、この言葉はなかなか難しい。なぜなら、単に可能性が見つからないだけでは人は絶望しないからだ。街の人がヴォイド教や裏切り者の討伐にすがろうとしたように、私たちは時にありえないことにも希望を見出さずにいられない。わずかでも希望があれば絶望とは言えず、つまり「望みが絶え」なければ絶望ではない。ルークが地面を殴りつけずにいられなかったのもナツ子生存の望みを絶たれたためであり、絶望とは希望の地を見つけられなくなった時生まれる思いなのである。

 

©全修。/MAPPA

今いる場所からどこにも行けない時、人は絶望に打ちひしがれる。ヴォイドに飲まれた精神世界で教室に閉じこもってしまうナツ子が感じているのもまた、どこにも行けない苦しみだ。爆死映画を作って罵られ皆に迷惑をかける恐怖に追い詰められ、転生した先でも自分の絵で皆を死なせてしまった彼女にはもう逃げ場がない。自分の絵は誰の心にも届かないという不安から逃れられなくて、だからナツ子は動けなくなってしまう。絶望してしまうのだ。

 

絶望とはどこにも行けない苦しみである。抜け出すためにはどこかに行かなければならない。いや、行けると思えなければならない。

 

2.希望はどこにある

©全修。/MAPPA

絶望から抜け出すため必要なのは、どこかに行けると思えることだ。そして、そのどこかは明確である必要はない。例えばこの第11話では幼少時から修行を積んでいたルークとユニオの様子も描かれているが、平和になったらここではないどこかに行きたいという思いは2人の支えになっていた。そんな日が来る保証がなくても、いつか行けると信じれば笑顔になれたのだ。希望を抱けたのだ。

 

©全修。/MAPPA

ユニオはナツ子が来てからルークが変わったと言う。それはナツ子が「ここではないどこか」をルークに見せたということだろう。彼女の絵が、絶望の戦いの外へ彼を連れ出したということだろう。ナツ子の方も実は同じで、彼女が今ここにいるのは『滅びゆく物語』があったおかげだ。ルークがずっと一緒にいてくれたから、ナツ子は絵を描き続けてアニメーターになった。幼い頃からすれば「どこか」としか言いようのない場所へたどり着けた。絶望を宿命付けられた物語にすら、違うどこかに行ける希望はあった。

 

©全修。/MAPPA

ナツ子は再びタップを手に取る。『滅びゆく物語』の強制力は絶大、ルークは原作通りソウルフューチャーを壊してしまうと状況は絶望「的」だが、もう駄目だと思っている視聴者はいないだろう。そこに根拠や具体策は必要ない。「ナツ子が描けばなんとかなる」と思えるならそれだけで十分だ。振り返ってみれば、預言者バオバブ様がナインソルジャーに託したのも根拠や具体策とは関係ない希望ではなかったか?

 

 

©全修。/MAPPA

希望はどこにある? 希望は私たちの心の中にある。どこかに行けると思えたその瞬間、私たちの心は既に絶望から離れているのだ。

 

感想

以上、全修。11話レビューでした。希望とは希望を信じられる心そのものである、というか。具体的にどうするのか見えないけどきっと大丈夫だ、と思えることが大事な回だったのだと思います。ルークにとってユニオとナツ子が対の存在なんだと感じられたのも印象的でした。さてさて、次回はいよいよ最終回。描け、描くんだナツ子!

 

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希望はどこにある――「全修。」11話レビュー&感想https://t.co/D6Rm2t2xCS
ブログ更新。最後の絶望「的」な状況に私たちが絶望せずに済むのはなぜかという話。描け、描くんだナツ子!#全修#ZENSHU#アニメ全修

— 闇鍋はにわ (@livewire891)March 17, 2025
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