こんにちは、個人投資家の立川です。
前回はインフラファンド指数が設定されることで、インフラファンドそのものやインフラファンドへの投資がどのように影響を受けるのかを考えてみました。
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私は「東証インフラファンド指数」に連動する投資信託ができる可能性に期待しています。もし、これが実現すれば、つみたてNISAやideco(確定拠出年金)を活用して手軽に、有利に積み立てられるようになり、インフラファンドへの投資のハードルがぐっと下がります。そして、「増配株投資をしながら、並行してインフラファンドを毎月1000円くらいずつ積み立てる」ということが可能になれば……と願っています。
さて、今回は増配株投資家として、「米国株と為替」の関係について考えてみます。
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この連載の第19回でも紹介しましたが、「米国株」は高利回りな銘柄も多く、その長い歴史から日本と比べて長期にわたって増配をしている株もたくさんあります。私は日本株中心の投資をしていますが、米国株も十分に魅力的だと考えて、投資資金の一部を米国株で運用しています。
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しかし、これは米国株に限りませんが、海外の株や金融商品に投資する場合、必ず「為替変動リスク」がついてきます。「せっかく配当利回りが高くても、将来的に海外通貨から円に交換する際に円高になっていたら、資産(や利益)が目減りしてしまうのでは?」と考えている方も多いかもしれません。そこで、今回は「米国株投資における為替変動リスクをどう捉えて、どう回避すればいいのか?」について考えてみたいと思います。
米国の上場企業は、日本の上場企業に比べると思い切った「事業の選択と集中」や「経営の合理化」を進めています。経営陣が自社株やストックオプションを保有しているケースも多く、資本政策や株主還元が常に株主に向いている企業も多いのが特徴です。米国株に投資する個人投資家が増えているのは、このような米国株の特徴が日本株よりも魅力的に映っていることもあるでしょう。
しかし、前述のように米国株に投資する際には、必ず「為替変動リスク」の問題が生じます。例えば、1米ドル=110円で「円」を「米ドル」に交換して米国株に投資したとします。上手に運用して、米ドル建ての資産を20%増やしたとしても、再び「米ドル」を「円」に交換するとき、1米ドル=88円になっていたとすれば、次の計算のように資産は目減りしてしまいます。
【運用後の価値】120%
【為替変動後の価値】88円÷110円×100=80%
【最終的な資産価値】元本×(120%×80%)=元本×96%(※4%の目減り)
為替変動の影響を受けるということは、逆に「米ドル」を「円」に戻す際に円安になっていれば儲かることもあり得ます。しかし、株で米ドル建ての資産が増えたとしても、円高によって円換算で資産が目減りしてしまっては、資産運用の意味がないので、円高に備える必要があります。
米国株が資産運用の対象として魅力的だったとしても、「為替変動リスク」による資産の目減りに対する対処法がないと、米国株投資にはなかなか踏み切れないかもしれません。
実際に米ドル/円レートがどのように動いてきたのかを、私の経験をもとに振り返ってみます。
私は1995年に初めて海外へ行きましたが、円を米ドルに換金した1995年4月は1米ドル=79円台の円高局面でした。その後、私は2004年に本格的に日本株での株式投資を始めたのですが、2007年には1米ドル=124円の円安を記録しています。その後、リーマン・ショックなどで再び強烈な円高が進み、私が初めて外国株に投資した2010年には1米ドルは80~90円台で推移しており、2011年10月には1米ドル=75円前半の史上最高値を記録しています。しかし、それから2015年に向けては円安が進み、一時は1米ドル=120円を超えました。投資した米国株の株価上昇と円安が重なり、運用成績はよくなったのですが、その後は再び円高傾向になり、2020年12月時点では1米ドル=104円あたりで推移しています。
つまり、私が為替レートに興味を持ち始めた約25年の中でも、米ドル/円レートは1米ドル=75~124円まで、大きく変動していることになります。
さらに時間をさかのぼると、1949~1971年までは1米ドル=360円の固定レートの時代がありました。それが1971年12月には308円に切り上げられ、1973年には変動相場制に移行して、為替レートが大きく変動するようになりました。つまり、過去50年で考えれば、1米ドル=75~360円まで、非常に大きな値動きをしていることになります。
これだけ大きく動くのですから、毎年の年初に公開される為替業界の著名人による「相場予想」がなかなか当たらないのも無理はありません。それなのに、為替レートの変動を個人投資家が予想して、「為替変動リスク」を回避することはかなり難しいのではないでしょうか。
では、実際に為替レートはどのくらい変動しているのでしょうか。過去の変化率を年率に換算してみました。この原稿の執筆時点では、1米ドル=105円くらいでした。変動相場制がスタートした時点から考えると、約50年で300円⇒105円、また直近の約30年で考えると160円⇒105円、直近の約10年では90円⇒105円となっています。この間の変化率をざっくり年率に計算すると、次のようになります。
■直近10~50年の米ドル/円レートの変化率(年率)は?
【過去約50年】300円⇒105円=約2.1%の円高(年率)
【過去30年】160円⇒105円=約1.4%の円高(年率)
【過去10年】90円⇒105円=約1.6%の円安(年率)
これはあくまで過去の傾向であり、期間の切り出し方によっても数値が変わりますが、「変動相場制に移行した後は、長期間にわたって年率1.4~2.1%は変動している」と言えます。仮に、今後も米ドル/円が年1.4~2.1%程度の変動が続くと考えると、米国株に投資する場合は常に1.4~2.1%程度の為替変動の影響を受けることになります。もちろん、円を米ドルに両替したときより円安になっていれば為替差益となりますが、円高になる可能性も十分あります。
そこで私は「年2%程度の為替変動の影響を帳消しにできるような投資は可能か」と考えました。私は過去のコラムで「インフラファンドはインフレに弱いが、インフラファンドがインフレ率を上回る利回りを出している限り、相対的に資産の増加を図れる可能性が高い」と書いています。例えば、平均的に年2%でインフレが進行しても、インフラファンドの利回りが5%なら、インフレを加味しても実質的に3%の利回りで運用できるからです。
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米国株に投資する際の為替変動の影響も同じように考えられないでしょうか。今後、年2%程度の円高が進行して、米ドルの価値が下がったとしても、円高の進行を上回る速さで米ドル建ての資産を増やせば、為替変動の影響を帳消しにできます。例えば、資産を米ドルにして年5%で複利運用すれば、10年で1.63倍、20年で2.65倍、30年で4.32倍になります。つまり、仮に毎年、年2%程度の円高が進行して、米ドルの価値が下落したとしても、円換算したときの資産は確実に増やすことができるということです。円換算での資産の増加率は「円高の影響×米ドル建て資産の増加率」なので、下記のように求めることができます。
■米国株で年5%の複利運用ができた場合
【10年後の円換算の資産】0.82倍×1.63倍≒1.33倍
【20年後の円換算の資産】0.67倍×2.65倍≒1.77倍
【30年後の円換算の資産】0.55倍×4.32倍≒2.36倍
もちろん、将来的に米ドル建て資産を円に両替するときに、米国株に投資を始めたときよりも円安ドル高になっていれば、株の利益と為替差益の両方で資産を増やすことも期待できます。
また、米国株は増配株が多いので、私が日本株で実践している「増配株投資」と同じように、米国株の「増配株」でポートフォリオを組んで配当目当ての投資をされている方もいらっしゃいます。この場合、投資先の企業が毎年2%以上の増配(前の年が1米ドルなら翌年は1.02米ドル以上)を続けてくれれば、年2%のペースで円高が進んでも、配当金はそれ以上のペースで増えますし、増配が業績を伴っているのであれば、株価も上昇することが期待できます。つまり、「円高の進行を上回るスピードで米ドル建ての資産や、米国株の配当金を増やせば、為替リスクはカバーできる」と考えられます。
もちろん、「年率2%を大幅に超えるスピードで円高が進んだら、米ドル資産は大きく目減りしてしまうのでは?」と、心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
実際、過去に急激に円高が進行した局面は何度もあり、その度に、各国の中央銀行は協調介入することで過度な為替変動を抑制しています。ただし、過去50年間の米ドル/円レートでは長期的に円高が進行していますが、これは固定相場制から変動相場制に変わったことが大きく影響しており、今後も長期的に円高傾向が続くと決まっているわけではありません。また、もし強烈な円高が進んだとしても、米ドル建ての資産だけでなく、日本株や預貯金など、円建ての資産を保有していれば相対的には資産が増えることになるので、それほど心配しなくてもいいのではないでしょうか。
ここまで、米国株に投資する際の「為替変動リスク」について解説してきましたが、「円高で損をするリスクがあるなら、日本株だけで投資をしていればいいのでは?」と感じた人もいるかもしれません。しかし、円建ての資産だけを持っていると気づきませんが、円安が進むということは、実は相対的に日本株を含む円建ての資産は目減りしていることになります。「為替変動リスク」を恐れて、円建ての資産だけを保有していると、急速に円安が進んで物価が上がった場合に影響を受けることも考えられます。米国株や米国以外の海外の株を保有していれば、円建て資産が目減りする「円安」に対する備えになるのです。
いずれにしろ、リスクは軽減することはできてもゼロにはできません。常に想定外のことが起こり得ることを考慮しつつも、想定できるリスクは自分の資産運用に反映させながらリスクとリターンのバランスのとれた資産運用を心掛けることが必要です。そのために、日本株以外に米国株や、それ以外の海外の株に投資するなど、円建て以外の資産を保有することも検討しましょう。
それでは、今回のまとめです。
【ポイント①】
米国株投資においては、為替変動で「円高」になるリスクを考慮して、利回りが高い増配株に投資することを検討しよう。
【ポイント②】
為替レートを予想して、個人で「為替変動リスク」の対策をするのは難しい。
【ポイント③】
預貯金や日本株など円建ての資産だけでは、「円安」が進行した際に資産が目減りするリスクがある。
今回は「米国株投資と為替変動リスク」について取り上げてみました。米国株投資については「為替変動リスク」以外にも「情報収集の難しさ」という問題があります。米国の個別銘柄の詳しい情報を「日本語」で入手するのはなかなか難しいので、その場合は投資信託を利用するという選択肢も有効だと思います。今は手数料の安い米国株型の投資信託も多くあるので、米国の個別株投資に踏み切れないと考えている方は、米国株型の投資信託を少額から積み立てていくのもいいのではないでしょうか。
さて、連載もいつの間にか3年を超えました。私は色々な投資に挑戦していますが、大きな軸である「配当金で元を取り、受け取る配当が増え続ける株式投資の実践」は変わっていません。そこで、次回は私が実践中の「配当金で元を取る途中経過」や「増配株投資の今後の見通し」など、さまざまなな角度から「増配株投資」を再度検証したいと考えています。お楽しみに!
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(『Value Investment since 2004 長期に配当収入増加と資産形成を目指す立川一の投資日記』:https://vis2004.blog.fc2.com/)
40代のサラリーマン投資家。中学生のころから株に興味を持ち、2004年から本格的に株式投資を開始。バフェットの本に影響を受け、最初はバリュー投資からスタートしたが、次第に増配株のメリットに気がつき、現在の投資手法を確立する。趣味である楽器演奏の腕前はかなりのもので、週末にはライブ活動も行っているとか。
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