1999年、世界の終わりはノストラダムスの大予言ではなく、目の前の銀行口座の封鎖という切実な恐怖の中にあった。世紀末の重苦しい空気は、オカルト的な終末論によってではなく、かつて永遠と信じられていたシステムそのものが、音を立てて崩れ落ちる軋みによって満たされていた。本稿の論考が目的とするのは、金融システムという巨大な構造体がいかにして自らの公正性という基盤を内部から腐蝕させたのかを、自己準拠的論理と責任の不可視化という現代思想のプリズムを通して、あの時代の湿度とともに解剖することである。 【腐蝕の基壇と、沈黙の石塔】 序論 1. 構造化のレイヤー:機能不全と自己準拠的論理 1.1. 護送船団方式…