「人間、分かり合えば仲良くなれる」とか言うけど、本当か? 相手のことが分かってしまったからこそ、袂を分かつなんてこともある。 「分かる」ってこと自体が分析的・論理的なことで、どこか西洋的な匂いがする。 日本人は伝統的に、言葉を駆使して他者を理解し、理解されようとはしなかった。 大工などの職人は「見て盗め」と、技を弟子に話しながら教えることはなかった。 一般に多弁な男は軽い人間と思われ、無口な男の方が信頼に足ると思われていた。 家父長制の名残があった昭和の頃には、家によっては親父はただえばっていた。 妻を「おい」と呼び、あとは「めし」「ふろ」くらいの怒号ですませた猛者もいた。 まあ、家長に権威や…