夏の午後、蝉の声が頭の上で降ってくる。学校の帰り道、汗ばむシャツを気にしながら、ぼくは友だちと小さな川の土手に降りた。 ポケットに入れていた折り紙はもう湿っていて、使えそうにない。そこで川沿いに茂っていた笹の葉を一枚拝借し、指先で折りたたんで小さな船を作った。雑な折り方でも、不思議と笹の緑が船らしさを引き立てる。 川面にそっと置くと、笹船は揺れながら流れに乗った。水のきらめきに押され、くるりと回転しながら進んでいく。すぐに沈むと思っていたのに、意外としぶとく漂っている。 友だちが「あっちの橋まで行けるかな」と声を上げた。ぼくは夢中で船の行方を追う。風に押されて、流れに揉まれて、それでも前へと進…