☆ 私が小学生の頃h、うそのように多くの蠅がいた。食卓には粘着性の蠅取り紙が吊るされ、動かなくなった蠅を眺めながら食事をすると言った、今では考えられない風景が日常だった。 ☆ そんな蠅も、最近はめっきり少なくなった。公衆衛生の成果といえばそうなのだが。 ★ さて今日は、横光利一の「蠅」(青空文庫)を読んだ。 ★ 宿場の場庭で乗合馬車を待つ人々。息子の危篤を聞き、せめて最期を看取りたいと悲壮感漂う農夫。変え落ちしてきたような男女。長年貧困に苦労した甲斐あってか思わぬ大金を手にした男性。そうした人々が馬車に乗り合わせた。 ★ ようやく馬車は宿場を出るが、馭者(馬車を運転する人)は居眠りを始める。そ…