この書物は、楽しむことについての哲学的探求であるという。楽しむことは、個人的な出来事であるだけでなく、驚くべきことに、社会を変革する力も持つのだという。 「楽しむことには、人間の生に喜びを与えるだけでなく、おかしくなってしまったこの社会を変えていく力があると、真剣にそう考えているからです。」(はじめにp.3) 私は、國分功一郎氏のこの考え方に完全に同意したい。楽しむことがこの社会を変えていく力となるというのであれば、それ以上のことはないはずである。 この書物の第一章は論文であり、第二章はその論文を解説した東大での講話である。ここでは、第一章に沿って紹介していくこととする。 【〈目的への抵抗〉と…