太宰治の文学を読めば読むほど、太宰治という人間がわからない。ただ、人間を観察する力と時代を読む力が凄まじいことだけはわかる。絶望に打ちひしがれるような気持ちになったり、5月の風を浴びたときのようにさわやかな気分になったり、夏が終わり秋の風を感じたときのように寂しくなったり、太宰治が紡ぐ文章は、幸福も絶望も味あわせてくれる。 86年前、一人の少女の一日の心の動きを丁寧に描いた小説が発表された。太宰治の『女生徒』は、思考の自由さと感情の豊かさ、思春期特有の揺れを、丁寧に描いた作品だ。 女生徒 (角川文庫) 作者:太宰 治 KADOKAWA Amazon ◆ある少女の一日を描いた物語『女生徒』/太宰…