人には望みというものがあるわけですが、その望みが望みであるのは、その望みが叶えられずにずっとそこにあるからです。その望みが叶ってしまえば、それは望みではなく実現したものであって、もはや望みではないわけです。 その望みは、明確であればあるほど、長い間その望みは望みとしてずっと叶えられないままそこにあるわけです。 望みはすぐに叶えられたなら、それはすぐに望みではなくなるわけですが、もしかしたら、あまりにすぐに叶えられたがゆえに、実はそれを望みとは認識していなかったかもしれません。 望みは、望みとして輪郭が出来て明確になるまで、しばらくは望みとして認識されないものかもしれません。 ある程度それが叶え…

来月初め、七回忌を迎えます。 「もう」なのか、「まだ」なのか、正直自分でもしっくりきません。 失った悲しみは、何年経っても消えることはありません。 寂しさもそのまま心の奥に居座り、ふとした瞬間に涙がこぼれることもあります。やっぱり、悲しいものは悲しいです。 ですが、確かに変わったこともあります。 失った直後は、一ミリ先も曇って見え、ただただ胸が重くて苦しいだけでした。けれど今は、世界がほんのりと淡い色を取り戻したように感じています。 悲しみは完全に消えることはないけれど、その輪郭は柔らかく、優しく包み込むような質に変わってきました。 闘病中自分もしんどいはずなのに、私が体調を崩した時には、同じ…

これまで「ロスト ノーティス メッセージセッション」 として、グリーフ（悲嘆）やロストケアに特化した 個別セッションを行ってきました。 このたび、継続して学びと癒しを深めていただけるよう、新しいセッションプログラムをリリースいたしました！ グリーフケアのサポートをどのように届けていくか、試行錯誤を重ねてきました。その過程で気づいたのは、1〜2回の単発セッションでは、内面の変化を実感するのが難しいということ。 けれども、数回にわたって継続して受けていただくと、「気づき」「感情の解放」「心の変容」が、より自然に、そして早い段階で訪れるのです。 その学びをもとに、ようやく一つの形として今回のプログラ…

※こちらの記事はネタバレを含みます。 未読の方はご注意ください。 hb.afl.rakuten.co.jp ▶️導入文 料理には、人の心を癒し、繋ぐ力がある——。 阿部暁子さんの『カフネ』は、「食べること」を通じて再生していく人々の物語です。それは悲しみや孤独を乗り越えるプロセスを描いた心のこもった物語。最愛の弟を失った姉・薫子と、彼の元恋人・せつなの交流が家事代行サービス「カフネ」で始まり、深まっていきます。 🎭物語の流れと結末 主人公・野宮薫子は、弟・春彦を急死で失い、不妊治療の失敗や離婚も経験。人生の重圧に押しつぶされそうになっていました。弟の遺言には、春彦の元恋人・小野寺せつなに遺産を…

競争を勝ち抜き、栄光や栄冠にまみれた環境が用意され、そこでの目標を達成したものの「得られるはず」と期待していた天啓や啓示が来なかったとき、人はどうなっちゃうのか。「自分らしさ」ってなんだっけ？と見失った野口が、再出発後に、つい自分語りをしちゃった本だ。 喪失感や虚無感に襲われ、自分でも意識できるほどの燃え尽き症候群が待っていたと野口は言う。「他者があなたを評価し、目標を与えてくれるとは限りません」。しょせん、時間や関係性、立場や役割が変わってしまえば、よそ様が与えてくれるものなんて無くなっちゃうことがザラにある。いや、そっちがフツーだ。だからこそ、自分のアイデンティティや自分の目標は、人任せに…

今日も朝から明るい陽射しがふりそそぎ、草木がいっそうのびやかに成長しているようでした。梅雨明けした地域もあり、すでに真夏のような暑さですね。 私たちはどんなに陽射しが降りそそいでも、夏の太陽のような気持ちになれない時期もありますね。 それは何かを失ったときかもしれません。 大切な人やペット、大事な物、身体の一部や機能、慣れ親しんだ環境...。 家族や友人をはじめとする大切な人、家族と同じように過ごしてきたペット、自分にとって欠かせない物、事故や手術で失ったもの、引っ越し、転校、転勤など、別れが訪れることがありますね。 それは哀しみや痛みも引き連れてきます。 喪失ではどんなことが起こるのでしょう…

「もう二度と、こんな悲しい思いはしたくない」二代目の犬を看取ったあの日、喪失感に押しつぶされそうになった。失ったことと引き換えに、私の時間は有り余った。 ある日、ホームセンターで“白メダカ”が目に留まった。白メダカ数匹と、水槽や飼育用品一式を買い揃えた。何かに夢中になることで、日々をやり過ごすことができた。 やがて、白メダカは卵を産んだ。メダカが卵を食べてしまわないように丁寧に隔離しているうちに、小さな命が次々と誕生した。私は、それが楽しくて夢中になった。 気がつけば、水槽には白メダカがあふれていた。水槽の数も増えていった。 白メダカの正しい飼育法など、検索すればすぐに分かったはずなのに、私は…