三国志といえば、劉備・曹操・孫権という三英傑の名がまず挙がる。しかし、その舞台裏で長きにわたり歴史を動かし続けた男がいる。彼の名は司馬懿仲達(しばい・ちゅうたつ)。魏の重臣にして、のちの晋王朝の礎を築いた知略の巨人である。 1.曹操に仕えた“冷徹なる智者” 司馬懿が歴史の表舞台に現れたのは、曹操が天下を狙っていた時代。若き司馬懿は学問に秀でた秀才として知られていたが、彼は官職に就くことを一度は拒んだ。その理由は、「時勢をよく見極めたい」という慎重さにあったとも言われる。やがて曹操が彼の才を見抜き、強引に仕官させる。司馬懿はその後、戦略・政治両面で魏を支えることになる。特に、曹操の死後は曹丕・曹…