いつも、右肩上がりでなければならない。急坂はありえない。緩やかな斜度を装う。そんな折れ線の下に、もう一本の線が伸びていく。二つの線は、まるでシンクロしているように見える。どちらも下がることは許されない。 だが、どこまでも上り続けることなど、できるのだろうか。 気づく。――これは絵空事だ、と。 そう気づいても、上り坂を描かねばならない。もし下り坂を描いて叱責されたとしても、解雇にはならぬ。ただ、日の当たらぬ場所に静かに追いやられるだけだろう。 会社とは、ある意味で軍隊に似ていた。上司の命令は絶対だ。正義を貫けば、たいてい刃は折れてしまう。仕方なく、自分も右肩上がりばかりを描いていた。 一本目の線…