私は自分のことにしか思い入れがない。どうにもそれを痛感する。ただ、年々、「私」の範囲規定が曖昧になる一方なので、思い入れのないことがなくなっていくような気配がある。 何を見るにつけ、聞くにつけ、「これも私ではないのか」という気がしては否定できず、「いや、私ではない」とする論拠も得られないために、あれもこれも「私」でありうる物事として、思い入れてしまう。 そうなってくると私の感覚して暮らす世の中のことは全て、「私」であるかもしれないこととして思い入れがあるわけだから、その中のどれか一つを取り出して、これには特別思い入れがある、ということが難しくなってきてしまった。 思い入れがある物事の中に、これ…