Blue あなたとわたしの本 273 F photo カフェ・マジックアワー (前編) 智(とも) 見あげていた視線をさげた。そしてその教会のまえを過ぎ、ふだんは行かない左のほうの道へ青年は歩いていく。鳥のさえずりが聞こえる。小川が流れている。山百合が香る。朝のひかりが葉々の上にちっている。 いつの間にできたのか、爪先あがりの道のさきに白いカフェが建っていた。壁面(へきめん)に屋号(やごう)がきざまれている。ふしぎな店名だ。塔のような店だった。朝ぎりのせいなのか、何階まである建物なのかうまく見定めることができない。色の褪(あ)せたブルージーンズにベージュのオックスフォードシャツ。灰色のリュック…