漫画の最大の特徴は「吹き出し」だろう。吹き出しはセリフを伝えるだけでなく、感情・テンポ・視線誘導・キャラクター性を表現する「視覚的な声」として極めて重要な役割を担っている。それでは吹き出しの表現はどのように確立してきたのだろうか。 中世のヨーロッパの絵画では、帯や旗、巻物、紙の形で台詞を表現する「ラベル」が用いられた。例えば以下のベルンハルト・シュトリーゲル画 『聖アンナへの受胎告知』 (1506年) では天使の口元から巻物が伸びており、その中にこのラテン語で、「Ave gratia plena, Dominus tecum」 (めでたし、恵まれた方、主はあなたとともに) というセリフが記され…