2025年4月19日から6月15日にかけて京都国立博物館にて大阪・関西万博開催記念特別展「日本、美のるつぼ」が開催されています。
日本美術の歴史をテーマにしていますが、異文化との交流によりさまざまな美術品が産まれたということを中心にしています。展覧会のプロローグは「万国博覧会と日本美術」としていますが、1900年パリ万博の際に出版された千九百年巴里万国博覧会臨時博覧会事務局編Histoire de l’Art du Japon (1900年)が展示されています。この本は翌年に日本語に翻訳され『帝国日本美術略史』(農商務省、1901年)として刊行されました。
帝室博物館美術部長であった岡倉天心が編纂主任でしたが、途中岡倉が美術部長を罷免され東京美術学校校長を追われたことにより、その後の中心は編纂副主任であった福地復一が中心となりました。
本展覧会のエピローグではアメリカ・ボストン美術館が所蔵する「吉備大臣入唐絵巻」が展示されています。絵巻の内容は、遣唐使として唐にわたった吉備真備が現地で様々な難題に直面し、それを思いもよらない方法で解決していく様子が絵巻に描かれています。
所蔵するボストン美術館といえば、日本美術品が多く所蔵されその蒐集の中心を担った人物として明治時代のお雇い外国人として来日したフェノロサ、さらには中国・日本美術部長をつとめた岡倉天心らがあげられます。しかし「吉備大臣入唐絵巻」は、岡倉の次にアジア部長を務めた(1931―1963)岡倉天心の弟子にあたる富田幸次郎がボストン美術館を代表して購入にあたりました。また、ボストン美術館がこの絵巻を購入したことが契機となり1933(昭和8)年「重要美術品等の保存に関する法律」が成立しました。当時富田は日本の国宝級の美術品を海外に流出された人として激しい非難を日本から受けましたが、彼の詳細な業績、購入経緯などは橘しづゑ『ボストン美術館 富田幸次郎の50年―たとえ国賊と呼ばれても』(彩流社、2022年)に詳しく書かれています。
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