
2012年にデビューしたZN6型トヨタ86(通称「ハチロク」)。スバルとトヨタが共同開発したこのモデルは、長らく途絶えていたライトウェイトFRスポーツカーの市場を復活させた立役者として、今も多くのファンに愛されています。
スバル製の2.0L水平対向エンジン「FA20」にトヨタの直噴技術「D-4S」を組み合わせた自然吸気ユニットは、200馬力を発生。トランスミッションにはアイシン製の6速MTおよび6速ATが組み合わされ、まさに“操る楽しさ”を体現する車です。
後継モデルである2.4LのZN8型・ZD8型が登場したことで、初代となるZN6型は中古車市場でも手が届きやすくなってきています。とはいえ、10年以上経過した車両も多く、購入前にはいくつかの「弱点」や「注意点」を押さえておく必要があります。
本記事では、ZN6型86に見られる代表的な故障傾向や、中古車選びのポイントについて詳しく解説します。
目次
10万kmを超えた車両で特に注意したいのが点火系の劣化です。点火プラグとイグニッションコイルは、どちらも消耗品。劣化が進むとエンジンの不調や始動不良につながります。
FA20エンジンは水平対向という構造上、プラグ交換の作業難度が高く、DIYでの整備は困難。専門の整備工場に依頼するのが現実的です。中古車購入後、整備記録に交換履歴がなければ早めにリフレッシュしておくと安心です。
オイル漏れもこのモデルで多く報告されているトラブルの一つ。代表的な例として、エンジンのヘッドカバー(バルブカバー)からの漏れが挙げられます。
さらに、ドライブトレイン関係にも注意が必要で、プロペラシャフトやドライブシャフトのオイルシール、デフマウントのブッシュ部などからも漏れが発生することがあります。
10万km超の車両では、リフトアップして下回りの点検をしっかり行い、必要に応じてメンテナンスすることをおすすめします。
前期モデルに多いのがテールレンズのパッキン劣化。パッキンが割れると、トランク内に水が浸入してフロアに錆が発生するリスクがあります。
中古車を選ぶ際には、トランク内のカーペットをめくって水跡や錆がないか確認しましょう。可能であれば、パッキンを新品に交換するか、後期型のテールランプへ換装するのも一つの対策です。
ZN6型86のもう一つの“持病”が、フロントバンパーの自重による下がりです。これにより、ヘッドライトとの隙間が目立つようになります。
また、フェンダーとバンパーの境目に取り付けられたサイドマーカーの固定爪が弱く、経年劣化により簡単に外れてしまうことも。バンパー周りに浮きや隙間がないか、事前のチェックが重要です。
2012~2013年式の初期モデルには、バルブスプリングのリコールが出されています。このリコールが発表されたのはなんと発売から6年後。
当時はエンジンブローの報告が多発し、大きな問題となりました。既にリコール対策済であることを確認することが絶対条件。確認方法としては、トヨタの公式リコール情報ページやディーラーでの車体番号照会が有効です。
未対策の車両を購入すると、最悪エンジン載せ替えの可能性もあるため注意が必要です。
特に6速MTでは「冷間時の3速→2速へのシフトが渋い」といった声が多く聞かれます。これは構造上ある程度仕方のない部分でもありますが、無理に押し込むとミッションにダメージを与えかねません。
クラッチミートや回転合わせなど丁寧な操作を心がけましょう。特に街乗り用途が多い人は、こうしたミッション特性も踏まえて購入を検討するのがおすすめです。
10年以上が経過しようとしている車両も多く、以下のような経年劣化トラブルも発生しやすくなっています:
エアコンの効きが悪くなる(ガス漏れ、コンプレッサー不良など)
ラジエーターからの水漏れ
オルタネーターの発電不良
インジェクターの詰まりや不調
電装系のトラブル(パワーウィンドウ、集中ドアロックなど)
トランスミッション内部の不具合
レリーズベアリングからの異音
ホイールベアリングの劣化による異音
これらは避けがたい部分でもありますが、購入時に試乗や点検を通じて兆候を見逃さないことが大切です。
故障を防ぐ最大のポイントは予防整備。特にエンジンルームが狭いため、部品交換や修理には工賃が高くつく傾向があります。
「どうせなら一気に整備してしまおう」と考えるユーザーも多く、足回りのブッシュ類や消耗品を含めてフルメンテナンスするのも手段の一つ。納車時に費用がかかっても、安心して長く乗れるメリットがあります。
点検記録簿がしっかり残っている車両
エンジンのリコール(バルブスプリング)済みかどうか
リフレッシュ整備がされているか(クラッチ、足回りなど)
2016年6月以降の後期モデル(アプライドE型~)を優先
カスタム車は整備状況を念入りにチェック
法規制の関係から、マフラー交換などのチューニングを楽しみたい場合は前期型が有利ですが、機械的な安心感を求めるなら後期型の方が無難です。

ZN6型86は、ライトウェイトFRという希少なパッケージを現代に復活させた名車です。とはいえ、10年以上経過するモデルも増え、故障やトラブルのリスクもゼロではありません。
だからこそ、ポイントを押さえて中古車を選ぶことで、長く楽しく86ライフを送ることができます。ぜひこの一台を、あなたの“相棒”として迎え入れてみてはいかがでしょうか?
引用をストックしました
引用するにはまずログインしてください
引用をストックできませんでした。再度お試しください
限定公開記事のため引用できません。