MAZDA2のMT車に乗り始めて2ヶ月近くが経過した。昼間は渋滞が多くて乗るのがちょっと億劫になるので、交通量が激減する夜半の用事の際に乗ることが多い。小型車に乗ると「煽られる」という話もあるが、他車に迷惑をかける走りはしていないので全くと言っていいほど、悪意を感じるような煽り運転には遭遇していない。
ちょっと登りになっている道路での信号待ちで、後ろにパワーに余裕があるSUVが付いた時には、モタモタしてはいけないので、1速のまま引っ張って出たりするが、その際に後ろのSUVがトヨタ(ハリアー、RAV4など)、日産(エクストレイル)、メルセデス(GLC)などの場合は、かなりの割合で、「やる気」になって追っかけてくることがある。軽量なコンパクトカーなので、出足の加速でスッと引き離すのだけど、4速までシフトアップした頃には、後から猛然とヘッドライトが近づいてくるので、ちょっと焦る。
ハリアーやRAV4はHEV率が高く、エクストレイルの現行モデルは全車e-POWERなので、電動化率が高く、モーター主体の加速とCVTでスムーズに発進ができるので、重量ある車体のハンデを感じさせないペースで追走してくる。勝手な想像だけど、燃費重視でHEVを選び、乗り出しで500万円くらい払っているドライバーは、お金に余裕があるオッサンだろうと予想できる。MAZDA2の2倍くらい高額なクルマなので、加速で負けるのは気分が良くないのかもしれない。
これらのHEVのSUVは、単走時には無謀な速度で暴走していることはほとんどないが、前を走るクルマが「小型のMAZDA車」の場合だけ、ちょっとムキになって追いかけることがあるようだ。ロードスター、MAZDA2、CX-3、CX-30、MAZDA3などのMAZDA車は大人しいユーザー(高齢者や女性の割合も高い)がほとんどだから、多少は後ろから「煽り気味」に追走しても、路上トラブルに発展することはほぼ無いとタカを括っているのだろう。
MAZDA車の多くは非電動の自然吸気エンジンであり、MTもしくはトルコンATなので、ゼロ発進から変速を繰り返して加速していくため、トヨタや日産のHEV&CVTならば、だいたい40km/hくらいまではスイスイと追走ができる。しかし間違ってBMW車を煽ってしまうと、ターボ車ばかりであり、DCTもしくは変速スピードに定評があるトルコンAT(ZFの8HP)が装備されていて、追走を許さない鋭い加速を繰り出して逃走するユーザーも少なからずいる。
自然吸気エンジンであっても、MAZDA車にはパドルシフトも付いているし、スポーツモードもあるので、その気になれば速いペースで逃走気味に加速をすることも可能だ。しかしそんな走りをしていては、せっかくのMAZDA車の気持ち良い部分が味わえない。自然吸気エンジンの楽しみは、MTであってもトルコンATであっても2、3速での加速で、エンジンがしなやかに伸び、アクセルやステアリングから伝わる接地感が一体となってドライビングをエンターテイメントにしていることだ。
CVT、ターボ、電動デバイスは、特定の状況においてエネルギー効率を改善する効果があることは否定しないが、MAZDAがこれらを積極的には採用しない理由もよくわかる。CX-5のスポーツモードを使うと、エンジンがいつもとは違うテンポで前のめりに加速し始める。登坂時やアップダウンが多い峠道にはちょうどいい出力が得られる不可欠な機能だが、平坦路においてはエンジンフィールを楽しむ時間が損なわれるので、使わないという人も多いだろう。
次期CX-5にはHEVが導入されることが発表されている。一般的なHEVは、モーターで無機質に加速して、そこから回生ブレーキが介在する巡航となり、エンジン回転の高まりを感じる部分が徹底して削ぎ落とされている。BMW、メルセデス、アウディもターボエンジンは使うけど、モーター主体のHEVには否定的だ。MAZDAはフィール豊かなガソリンエンジンを生かすためにターボもあまり使いたがらない。
ガソリンターボは、低速トルクを使った出足での加速は有利だけど、ポルシェやホンダのように高回転まで回せる精密なターボエンジンでないと、ガソリンエンジン本来の官能性が失われて、中速域に差し掛かる頃にはアクセルレスポンスが失われ始め、曖昧なフィールになってしまう。スバル車などに乗っても、確かに低速域、中速域の序盤では力強いトルクを感じるが、ちょっとレスポンスが失われたかな?と思った速度域から先は、巡航していてもアクセル制御が乏しくて走りの一体感が失われる。
自然吸気エンジンは、低速域から高速域まで、あまりレスポンスが落ちずにアクセルに対して一定の加速度を担保してくれる。その一方で20km/h以下のノロノロ運転ではパンチ不足を感じる。かつてのターボエンジンも過給がかかるのが遅くて同じようにノロノロ運転は苦手だったが、VWやBMWのDCTと組み合わせたターボはかなりの低速からしっかりトルクが出ていて気持ち良い加速ができる。
ガソリンターボの低速トルクが欲しいならば、同じような特性を持ち、さらに低速加速でのトルクが豊かなディーゼルターボの方が燃費も良く、日本では軽油も安いので利点が多い。加速よく飛ばして走っているBMWやMAZDAは、ほとんどがディーゼルターボだ。燃費もあまり気にせずにアクセル踏めるのが最大の魅力なのだろう。ちなみにガソリンターボもディーゼルターボもどちらを選んでも「チョイ乗り」には向いていない。
ストップ&ゴーが多い日本の都市部では、自然吸気エンジンとCVTの組み合わせが多数派だ。0~20km/hくらいで走る時間が長くなるドライブは、MAZDAユーザーは本能的に嫌がる。現行の6ATはロックアップで低速は直結するので、ノロノロ運転もCVTと同等に走れる。しかし6MTの場合は言うまでもないが、前のクルマに止まるか止まらないかの速度で走られた時には絶望感に打ちひしがれる。2速のまま走れればいいけども、歩行者が多い都市部では完全停車が多いのは仕方ない。
前方車がノロノロで、半クラばかりで足がプルプルするのが嫌なので、極力は交通量が少ない地域へのロングドライブか、夜間&早朝の時間帯に走ることが多くなる。冒頭にも書いたように、交通量が少ない時間に走っていると、しばしばSUV乗りのオッサンが童心に帰って追いかけっこしてくる。モーターやターボトルクで味気なく巡航速度まで上がる運転など、さぞかしつまらないだろう。前に「安全な獲物=MAZDA車」がいれば、ちょっとはドライビングが楽しくなるのかもしれない。
MAZDA車ユーザーの「煽り気味の運転」が無いとは断言しないが、比較的に少ないと思う。そもそも6ATや6MTでは、BEVやCVT車のように機敏に動けないので、よほどのノロノロ運転の軽自動車でもない限りは煽ることも難しい。そして自分のように自然吸気エンジンの伸びやかな加速を求めてMAZDA車に乗っているユーザーは、前のクルマのペースではなく、エンジン音との対話によってクルマを走らせている。誰もいない田舎道や林道が一番楽しい。
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