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プレイドは、2025年1月に経営の構造や体制、意思決定の機会や仕組み、事業や全社の組織との連携スタンスなど、経営システム全体の刷新を行いました。「強い経営」と名付けた刷新プロジェクトで目指したことは、一貫性ある意思決定と実行、グループ含む全社での大きなPDCAを実現していくことです。
 
この刷新を起点に、プレイドは何を目指し、どんな変化と成長を生み出していくのか。プレイドの代表である倉橋健太、プロジェクトを担った山田恭平と上山桂吾の3名に話を聞きました。

「強い経営」プロジェクトの立ち上げ

 ――今日のメンバーは「強い経営」プロジェクトに関わった3人と聞いています。簡単に自己紹介とプロジェクトでの立ち位置を教えてください。

倉橋:代表の倉橋です。この「強い経営」プロジェクトは私が経営システムを刷新したいと思って発言したのが発端です。私も方向性を示しつつ対話には加わりましたが、実際のデザインはほぼ山田と上山の二人に任せました。

倉橋健太(代表取締役 CEO)

山田:山田です。もともと複数の組織や役割を兼務していて、2025年1月からは執行役員 COO(Chief Operating Officer)にも就任したのですが、このプロジェクトにはCEO Officeという、社長室的な立場で関与しました。CEO Officeは数名の専任・兼務メンバーで構成されており、常にいくつかのCEO直下の課題に取り組んでいます。その重要課題の一つにこの「強い経営」プロジェクトがあり、私が担当することになりました。

 山田恭平(執行役員 COO / CEO Office)

上山:Legal Departmentの上山です。事業やサービスに関する法的整理や契約レビューといった事業法務のほか、取締役会や経営会議の運営を担っています。経営システムを見直すには会社法などの法令への考慮も必要です。取締役会で必ず決議・報告すべき事項などを踏まえつつ、今後の持続的な事業成長のためにどういった仕組みにすべきか。取締役会や経営会議の役割の再設計などを担いました。

1月以降は、COOの管掌組織の一つであるCorporate Operations Teamとして、経営メンバーの会議体の運営やその前後の活動との繋ぎ込みなども担当しています。

上山桂吾(Legal Department / Corporate Operations Team)

――まずこの「強い経営」プロジェクトの概要を教えてください。

山田:2025年1月からの経営体制の刷新を目指して、「取締役会の在り方と経営体制の組み直し」を行いました。言い換えると、CxO(最高○○責任者)を構成要素の中心とする経営体制を組み、取締役会の役割を明確化するなど、経営システムを大きく再構築しています。

きっかけは、2023年の夏に倉橋から当時の取締役会メンバーによるオフサイトミーティングで「プレイドが大きく強い成長を目指すには、今の経営システムからのアップデートが必要では?」と問題提起があったこと。そこから約1年半かけて、ゼロベースで経営体制を構築しました。

なぜ今、経営システムの刷新が必要だったのか

――なぜ経営システムのアップデートが必要だと感じたのでしょうか。
 
倉橋:経営チームとしてここ2年ほど、足元の課題解決、会社全体や大きな組織単位の安定化にフォーカスしていました。取締役間のコミュニケーションの量と質を確保し、決めるべきことを決めたり持ち込まれた議題に向き合ったり。これらによって、再度事業を成長軌道に戻すことが、重要なテーマでした。

しかし、今そして今後のフェーズでより必要なことは、会社・事業の目的に向かって大胆に前進していくこと、そのための一貫性ある組織活動・個の活動がなされること。これまでの仕組みや体制では、そこにベストな構造にはなっていない現状ではそれができていないと感じたんです。

例えば、多くの部門が活動に関わる課題に対して、経営チームにおける課題認識のズレから意思決定の責任を経営チームで共有しきれていなかったり、誰かに責任が偏ってしまったり。そうなると経営チームとしての意思決定であるはずが、一貫性や一丸性が欠如しやすくなる。結果として全社や各組織の活動においても、強い推進力を持ちきれないこともありました。

上山:当時は、「正しさが多義的になっている」とか「課題の捉え方が人によって違う」といった話も聞いていましたね。そして解決すべき課題がぼんやりと共通認識も持たれないままに置き去りにされると、課題が顕在化した時には不可逆な状態になっている。振り返ると、こうした課題に対する感覚や捉え方は、社内取締役間でも共通認識を持ち切れていなかったんじゃないかと思います。

日々の経営の意思決定についても、断片的な「点」での議論になっていたり、経営として議論・意思決定すべきものと、権限委譲をして執行として意思決定すべきものが混然一体になっていたりと、事業や経営のスピードを上げきれない状況になりつつあると感じていました。 

山田:これまでのプレイドの組織構造としては、2022年7月からDepartment制(機能別組織)を導入することで、区分された各組織が独立して動けるような構造にしていたんですよね。当時は今より組織も少なく、横の連携が自然に取れると思っていました。

それが徐々にDepartmentの数が増え、全体の方向性を決めるには単純な話し合いだけでは足りず、話し合いの結果をまとめて合意を得る工数が大きくなり、合意したことを浸透・実行し切ることにかかるカロリーが大きくなっていった。みんな課題は感じていたと思いますが、その課題に取り組む役割を明確に決めていなかったんですよね。加えて、近年はグループ企業含むより大きな全体での一貫性も重要なフェーズになってきたことで、従来の構造のままでは今後さらに難しくなっていく感覚がありました。

これまでの構造は、組織の自律性を特に重視し、速さやDepartment単位で発生する課題への対応力に強みを持っていた。ただ、全体が見えず拾いきれない課題が生まれたり、活動が揃わずに大きなものにできなかったり。現場主導で気付ける課題は経営に届き、その対応はできるが、それを越えないという状況になっていたと思います。

倉橋 : もう一つ、その裏返しとして起きていたことがあって。それは、経営チームが主体となった中長期視点での議論、長期的な成長のための課題や活動テーマの設定やその推進活動などに十分な時間を割けていなかったことです。成長軌道への回帰が目下のテーマだったこと、取締役や経営チームの役割設定やシステム等がそこからアップデートされていなかったこともあり、足元課題の議論に比重が偏りがちだった。代表として私が時間を作って中長期視点から考えることはもちろん続けていましたが、代表個人に委ねられがちという点も含めて、経営チームで持つべき活動、機会、意識の不足が徐々に拡大していったように思います。

攻めでも守りでも、短期的な効用を期待できる解決策を選んだり、気づけば解きやすい課題ばかり解いてしまっている。経営全体が、それに慣れ始めているような危機感もありました。

1年半かけて戦略から組織を作り直した

――そういう課題を抱いて、取締役会オフサイトミーティングで投げかけたということですね。
 
倉橋:一応、事前に各取締役には個別に話はしていました。ただ、その時は明確なプランはなく、方向性を頭出しする程度。方向性に関しては一定理解してくれましたが、受け止め方は人それぞれだったかなと思います。

山田:機会も機会ですし、いきなりハイボールを投げにいったなと思いました。「一番上から変えないと駄目なんだと思うんだよね」と倉橋が言っていて。それ自体はそんなに違和感はないんですけど、そうだとしても予想以上に一気に踏み込んだなと感じました。

参加していたメンバー全体の雰囲気や反応は「一旦ちょっと落ち着いて考えよう」という感じでしたね。倉橋からは、一旦のアイデアとしてではありましたが大胆な意見も出てきたので。新しい経営のあり方を考え直すという課題自体は必要と参加者全員で認識して、ただきちんと議論して進めようとなって、最終的に1年半後、つまり2025年の1月のタイミングを目指して経営システムの刷新を進めることになりました。

倉橋:プレイドの経営を、今後こう変えていくべきという大枠の考えを話し、当時社外取締役だった平野正雄さんに問われたことで印象的だったのが、「組織は戦略に従うのか、戦略は組織に従うのか」という言葉です。これは米国の経営史学者であるアルフレッド・チャンドラーの言葉で、要は経営戦略を決めて組織編成をするのか、組織ありきで経営戦略を練るのか。日本企業に多いのは後者ですが、海外で成長している企業に多いのは前者。戦略に合わせてドラスティックに組織を変えている。平野さんはそれを「強い経営」と呼んでいて、それを今回のプロジェクト名にしました。

事業が成長する傍でマイナーチェンジを繰り返しても、本質的な変化に辿り着くことは難しい。一度ゼロベースで考え直したかったんです。

平野さんには後日1on1のときに、こんなこともお話しいただきました。「経営者として人に委譲できない役割が一つだけある。それが一貫性のある意思決定だ」と。それを聞いて改めて、一貫性のある意思決定をするには、そして意思決定から一貫性ある実行をしていくには、経営システムを丁寧にデザインし直すしかないのだと思いました。

――その後はどのようにプロジェクトを進めていきましたか。

山田:倉橋から課題提起があったのが2023年8月。前提や進め方の整理、ベースとなる議論を進め、実際に「強い経営」プロジェクトが発足したのは翌年1月で、そこから新しい体制・システム案の検討に本格的に着手しました。

海外企業を含め、世の中の経営システムをベンチマークしたり、外部にヒアリングをしたりして、取締役会で何を議論するのか、議論には誰が必要か、経営会議と取締役会の役割分担、さらには下部の会議体や組織との連携など、本当にすべてを設計し直しました。大枠ができた段階で社内外の取締役に説明したところ、「本当にここまでできますか」と懐疑的な声はありましたが、好意的な声も多かったですね。

倉橋:「ここまでできますか」というのは、実効性への問いだったという認識です。組織図や体制を作ることは、どの会社もある程度できているが、目的に向かって全社としてのPDCAを一定以上の速度で回せている会社はほとんどないよ、と。

トップダウンでやるだけなら単純な話かもしれない。でも経営がワンチームになって、CxOにそれぞれの持ち場で全社的な視点から推進してほしい。さらにプレイドの魅力であるボトムアップな推進力、創発性も活かしていきたい。その上で、経営から現場までを含めたPDCAを回すのは容易じゃない。

多くの企業は、どこかに妥協点を見出しているのかもしれません。しかし、プレイドとしては理想があるならそれを追求したい。教科書通りに体制を作ったわけではなく、自分達自身で考え、しっかりと意思を込めたMinimum Viableな経営システム(活動コンセプトに必要となる経営システムの最小構成)をまずは整えました。とはいえ、今はスタート地点に立った段階なので、機能させていくのはこれからです。

山田:プロジェクトが本格始動してから、大きな方針づくりに3ヶ月ほど、人選に約2ヶ月かけてこの時点で2024年の5月末くらいでした。その後、執行役員やコーポレート部門へのコミュニケーションなどに4ヶ月ほどかけ、10月に開催したグループ全体の集会で、予定の体制を共有しました。そして、12月の株主総会での取締役や監査役の選任についての承認や取締役会での執行役員CxO選任や組織変更などについての承認を得て、2025年の1月から新体制へ移行しました。

とにかく会話を重ねることを重要視し時間を投資すると決めて、この1年間は毎週何かしらの会話をしながら進めてきました。できる限り個別に、経営体制に大きく関与する人たちには細かく話をしてきたように思います。やはり人間なので、自分たちやその意見が適切に組み込まれていない環境でパフォーマンスするのは難しいので。時間をかけたことで、各所の感情的なコンフリクトのバランスを取りつつも当初の目的を見失うことなく、全社が一体となって動ける経営体制の構築が実現できたと思っています。

話は少し変わりますが、関係者向けに「強い経営」を説明する際に使っている資料に、目的を定義するような言葉として、「プレイドグループの各事業・各企業が共通目的を基に、適切なリーダーによって、一貫性ある意思決定・活動・連動がなされ、全社PDCAが回っている状態を実現します。」ということを書いています。

改めて読み返しても、「グループ」「共通目的」「一貫性」「PDCA」書かれている全ての要素が大事だなと。各所でPDCAが回る状態は簡単にできるけど、大きく全体としてちゃんとPDCAが回って、事業だったり意思決定や実行が連動してる状態を作ることが難しいはず。そのために必要なことを全部やり切っていきたいですね。

倉橋:一貫性を持つには目的が重要。今回、目的に向けて一貫性を発揮しやすい権限分掌や委譲構造、会議体を経営システムとして整備しました。ただシステムだけでは不十分です。メンバーの一人ひとりが一貫性を意識し、認識を揃え、大きな目的に向かって進むこと。そして経営チームもまた、目的に立ち返りながら、システムやオペレーションを改善し続ける意識・責任を持つことが必要だと考えています。それを怠るから劣化していく方向に進むわけで。改善し続けようと活動する限りは、良くなっていくんじゃないかなと。

「強い経営」で組織はどう変わるのか?

 
――新しい構造づくりで意識したことを教えてください。

倉橋 : 今回の刷新において意識したことは、経営チームが長期的かつ横断的な課題設計と取り組みに集中・推進できることです。それを実現するために、経営含む全体の構造づくりにおいて3つのコンセプトというか特に重視していることがあります。「経営が方針を明確にすること」「経営の方針や判断を透明化すること」「全社から経営を含む各所への還流をより強化すること」です。

これからの経営 - 組織で、特に重視していること

一つ目の「方針の明確化」では、会社全体や経営チームが特にフォーカスする課題や取り組みを明確にするために、目指す中期ゴールをもとにテーマやアクションをツリー構造にまとめた「Objective Tree」をまとめて社内に公開しました。

山田:要するに、経営が掲げる注力課題の一覧ですね、各CxOたちから出してもらった課題やアクションを取りまとめて作成しました。社内に共有するときにも伝えたのですが、Objective Treeを公開することで、注力課題や活動を認識してもらうことで、大きな協力や成果につなげることはもちろん、そして課題や活動に対してちゃんとフィードバックを受けていくことを期待しています。

Objective Treeの位置づけ

これを公開すること自体が二つ目の「透明化」の一部でもありますが、各課題や活動の進捗や成果などもレポートや全社会などで共有し、過程も公開していく予定です。活動を始めるのは得意ですが、振り返りが苦手な会社だったので。他にも、経営関連会議のアジェンダを可能な限り公開したり、議論内容についてもCxOを通じて各組織やメンバーに適切に共有していきます。

倉橋:最後の「還流」は、いわゆるボトムアップ活動、情報収集やコミュニケーションも引き続き大切にしたいということです。これまでのプレイドは、比較的トップダウンとボトムアップの両方がうまく機能してきたと思っています。しかし、組織が大きくなるにつれて、属人性で担保してきたトップダウンが機能しづらくなり、ボトムアップだけが分散的に回っているような状態になってしまっていた。
 
山田:新しい組織構造はトップダウン型の印象が強いかもしれませんが、VoE(Voice of Employee)やVoC(Voice of Customer)をどう経営に活かすかという観点も強く意識しています。担当領域やレポートラインを決めることで、該当のCxOにしか生のデータが入ってこないのはよくないなと。

プロダクトやクライアントと接する現場の声は経営判断の最良のソースになることも多く、その声がちゃんと経営チームに届くための仕組みや意識を持ち続けることが重要です。重要な声はCxOが現場から拾い上げ、ある程度は経営チームまで届くと思いますし、その責任はCxOにあります。ただ、どうしてもメインルートから漏れることやメインルートには乗せづらい声もあると思いますし、届く過程で情報価値が薄まることもあると思うので。全体から生きた声が経営に届くことを担保できる選択肢は設けていきます。

倉橋:現場活動から得る示唆や学び、情報流通、そしてそれらに対しての重要性の判断はそれぞれの組織の中だけになりがちで、組織や担当を超えた還流や利活用は自然には発生しにくいんですよね。例えば日頃お客さんと対応しているメンバーと話すと、経営観点で重要なインサイトがたくさん得られる。でも担当者の業務にとっては重要情報ではないからどこにも共有していなかった、といったことがよくあります。最初に情報を取得する人と、その情報を欲する人の間にこそ、大きな機会が眠っているんです。

人体の血流に例えるなら、トップダウンの指示や方針が動脈のように組織へ届き、現場からの生のデータが静脈のように経営層を含む各所に戻ってくるのが理想。静脈のフローをちゃんと機能させて、現場の生データが全社に届くようになれば、新しい問いや戦略も立てやすくなり、おもしろいPDCAが強く早く回せて、短期的な課題解決にも長期的な活動にも効果があるはずだと考えています。

山田:やっぱり階層や肩書が付くと、どうしても距離は出てくる気がしていて。物理的にはすぐ近くに座っていても、肩書があるとやっぱり話しかけにくくなって、生々しい話をストレートにぶつけるのも難しくなることもあるだろうなと。ただ、これは組織が大きくなるほど難しくなるから、今のうちにいろんな試行錯誤をしておきたい。組織が今の2倍になってからでは、もっと解決が難しくなってしまうと思います。

――新たな構造になって、組織活動は具体的に何がどう変わりますか。

山田:大きな変更点の一つは、取締役会から基本的に全ての組織まで、レポートラインを明確にしたことです。もちろん、これまでもレポートラインはありましたが、責任者が明確ではなく直接経営会議に紐づいていた組織・活動や、暫定的な配置が続いていた組織もあり、うまく機能しきれていませんでした。新しい経営体制では、責任領域ごとにCxOが任命され、それぞれの管掌対象として組織が紐づきます。

倉橋:これまでは、組織の高さ・レイヤー数をなるべく低く保ち、低く幅の広い組織構成を志向していて、なるべく全体をコンパクトに保つことで、迅速かつ当事者意識ある意思決定を重視してきました。課題や意思決定が必要なことを全て持ち込んでもらっても、短期長期の両面で支障なく活動品質が確保できていたと思います。

しかし、事業成長と組織拡大が進み、そして業績再加速のテコ入れ期を迎えたこともあり、各組織や領域が現場の責任を果たしながら全体感を持ち続けることの難易度が極めて高くなっていった。結果として、担当組織を超える意思決定や判断が増え、それらの多くが経営に上がってくる流れが加速しました。

先ほども言及しましたが、経営の場が目先の問題への対処で手一杯になってしまい、「3年後や5年後にこうありたい」といった本来経営が担うべき役割に対する時間的な余裕がなくなってしまっていたんですよね。長期視点ではある意味、経営の構造が会社にとってのボトルネックになり始めていたように思います。

そこで、未来で成し遂げたい理想像を改めて捉え直し、今回の「強い経営」プロジェクトにおいて、CxOによる管掌構造を軸に大きな単位の組織を設置し、そこに各領域の組織を紐づける形にしました。

新体制では、従来から存在していたDesign・Technologyに加えて、Finance・Growth・Operation・People・Valueの領域を設けました。各CxOは、それぞれの領域の課題提起や執行責任、それら推進状況の経営全体へのインプット、経営で決まった方針や戦略の具体化、全社や経営と管掌範囲を強く適切に連携する役割を担います。

また、グループを横断した最適化にも取り組みます。現状では各社の状況や戦略は属人的な把握に頼りがちです。グループ全体では適切な手を打つための状態や課題の可視化や、シナジーを生み出すための仕組みはこれまで整備不十分でした。各社固有の悩みもありますが、グループ連携で取り組んだほうがいい課題も多く存在していると思います。CxOたちにはプレイド単体ではなく、グループ全体の活動を拡張していくことを前提に責任を持ってもらいます。

誤解を招かないように補足すると、CxOが該当の領域の決定や責任の全てを持つわけではなく、あくまで経営チームとして決定と責任を持ち、CxOは経営チームの該当領域の担当者として、主に企画や起案、実行や改善を担うという位置づけなんです。例えばヒト領域の全社的な判断を全てCPO(Chief People Officer)が行うわけではなく、管掌組織や全社と連携して、ヒトにまつわる課題を発掘し解決策を経営チームに起案し、また組織や全社と連携して実行・改善を”主に”担い先導するのがCPOの役割です。

山田:CxOの管掌範囲を超えた全社に関わる課題については、CxOに起案権限はありますが、意思決定の権限は経営全体や会議体にあります。この方針に合わせて会議体の構造や運営方法、社内規程なども変更して、全体での合意を作りやすくしました。

また、これまで経営関連の会議アジェンダは、それぞれの組織やメンバー側から「これを経営と議論したい」という持ち込みが主でしたが、経営メンバーたちが起案も増やせるように機会の持ち方や運営上の試行錯誤もしていますし、経営からCxOを通じて組織へ「これに取り組んでほしい」とボールを投げることも意識しています。経営で生まれたボールをCxOが持ち帰り組織や担当者が検討してボールを投げ返し、そのキャッチボールを重ねていく。これによって全社での強い学習循環が回るようになると思っています。

上山:取締役会の機能もこれまでのようなマネジメント型からモニタリング型に徐々に舵を切っていき、できるだけ中長期の経営課題にフォーカスする、より目線の高い議論の場にシフトしていこうとしています。

これまでの取締役会は、説明や質疑応答を適度に行い、スムーズに決議が進む場でしたが、もっと能動的で深い議論が行われる時間になっていっています。重要な案件は取締役会の前に個別に説明し意見をいただく機会も設けはじめているのですが、そこでも良い意味で議案をスムーズに進ませてくれない観点・角度の発言や深い議論が生まれています。今後は取締役会でより有意義な議論が当たり前になるはずなので、それはすごく楽しみですね。

組織変革の実現に向けた次のステップ

 
――経営システムの変化は、メンバーにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

倉橋:会社の方向性や優先順位が明確になることで、自然と各組織の取り組みの方向もそろってくるはずです。例えばセールスとカスタマーサクセス、あるいはビジネスとプロダクト開発など、異なる組織・役割の連携もスムーズになると思います。ボトムアップな強さや魅力もこれまで通り最大限に活かしていきます。それらをうまく浸透させれば、活動の一貫性が生まれて仕事は進めやすくなり、同時に生産性も高まるのではないかと期待しています。もちろん慣れは必要でしょうし、この経営体制を現場の価値に変えることもCxOたちが中心になって取り組みます。

――今後、この新体制をどうやって社内に浸透させていきますか。

倉橋:簡単な方法があれば知りたいですね(笑)。早い段階でしっかり成果を出せると、信頼を得られて追い風が吹き、浸透させやすいので、初動つまり今この瞬間の活動は本当に大切だと思っています。ただ、課題によっては皆が成果や意味を実感しにくいものもあります。経営において価値のある課題が何だと設定されていて、それがなぜなのか、進捗や成果を出して共有し、しっかりとコミュニケーションしていくことが大切だと思っています。

――最後に、「強い経営」プロジェクトを経て、新しい経営システムができた今、今後を見据えて一言お願いします。

山田:私自身は経営コンサルタントの経験もあり、いろいろな会社の経営や事例・情報を見てきましたが、他社でも例を見ない大きなチャレンジだと思っています。

普通は組織による権限委譲が先に来て、その委譲された組織内でのPDCAが中心になるのが普通だし、仮に横断的に取り組まれる課題も特定のものに対してのみになるのが一般的だと思います。しかし我々は、経営課題や論点を経営チーム全体に等しく共有した上で、経営チームとして方針を決めて、複数人の経営陣が横断的に動き大きなPDCAを描こうとしています。

現時点で「絶対にうまく回ります」と言えばウソになりますが、できないとは思っていません。多少パワーがかかっても前に進んでいける手応えはあります。すでにCxOたちが会話する機会を継続的に計画するなど互いを知る機会も作りつつ、一度決めたらその方向へ一丸となって進む準備はできつつあります。あとは繰り返しになりますが、活動を学習して改善することを続けていきたいですね。

上山:形は整ったのであとは中身を詰め、実効性を高めていくだけですね。経営者の中には「俺の背中についてこい」という完全なトップダウンタイプの人もいますが、倉橋は違っていて。動脈と静脈、つまりトップダウンとボトムアップのどちらも機能させたい、これをやり切りたい、というのは自分自身の経験上も聞いたことない。ただ、その土台になれそうな仕組みを今回作るスタート地点ができた。力強く前に進むことが期待できる、検証に値するシステムができたことに、とてもわくわくしています。

倉橋:プレイドのこれまでのフェーズでは、勝因の6~7割は方向性とアプローチの設定。それがあるからこそ今いるような魅力や意欲ある優秀な人が集まり、事業成長が加速し、今の進捗に至っています。

プレイドを含め、競合となるような企業では、すでに事業の骨格が整い価値創造においてそれなりの強さを有しています。ここから先は、まっとうな活動だけでは他社との差別化も難しくなる。だからこそ次のフェーズで突き抜けるには、組織の在り方自体に違いを埋め込む必要があります。

「プレイドグループの各事業・各企業が共通目的を基に、適切なリーダーによって、一貫性ある意思決定・活動・連動がなされ、全社PDCAが回っている状態を実現します。」今回このプロジェクトで掲げた目的、全部入りですがやっぱりこれだなと思っていて。体現することで、大きな価値を生むための違いを作っていきたいです。


「データによって人の価値を最大化する」ことをミッションとし、さまざまな事業やプロダクトを提供する株式会社プレイドの公式noteです。インタビュー記事や関連するマガジンのコンテンツなどを通じ、メンバーや事業についてさまざまな角度からお伝えします。

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