ーーーー講義録始めーーーー
(4) 届出・特許・認可・即時強制
次に、届出と特許について。許可制の仕組みは説明しましたが、他にも、届出、特許といった仕組みがあります。
届出を簡単に説明しますと、企業が営業等を開始する際に、名称や事務所の所在地等、特定の事項を行政に通知するということが義務付けられている場合があって、その通知のことを届出というふうに言います。適切な届出をしないと、また行政罰を受けることがある。
この届出の仕組みといいますのは、人々の活動内容について、行政機関が情報を把握するための仕組みであるということでして、具体的には、営業を実施する前に届出をして、行政庁に、これこれこういう活動を始めますということを知らせる。それを受けて、行政庁が、その内容を踏まえた監視・監督や、必要に応じた対応を取り得るようになる。情報収集手段だと考えられる、というのがポイントです。
許可制と届出、2つ出てきましたけど、その違いが重要になってきますね。行政庁の審査が必要か否かっていうのが違いになります。
許可制の場合は、行政庁が審査して、基準を満たしていれば許可が与えられ、そして営業開始が可能。届出の場合は、行政手続法上も「一定の事項の通知」と位置づけられていて、原則として、届出書の記載事項に不備がないこと、必要書類が添付されていることなど、形式上の要件に適合した届出が提出先の行政機関に到達すれば、届出義務は履行されたものと扱われます。したがって、届出は、一般には許可のような実質審査・裁量判断を経て初めて開始できる仕組みとは異なり、所定の事項を通知することで手続が進む制度だ、という点を押さえてください。
特許制というものもありますね。これは、行政法の講学上の分類としてよく出てくる概念で、一般に、行政が一定の権利・法的地位を設定(創設)するタイプの行政行為を指して説明されます。許可が「禁止の解除」として説明されるのに対して、特許は「権利・地位の設定」という側面が強い、という整理が基本になります。
ここで、少しイメージを持ってもらうために、従来、公益事業型の規制の文脈で説明されてきた話に触れておきます。電気事業や鉄道事業など、社会的に重要で、設備投資が大きく、公益性が高い分野では、参入や料金などについて、公法的な規律が強く及んできた領域があります。ただし、この点は、分野ごとの制度設計や時代によって大きく変わり得ます。例えば電気の小売については、2016年4月から家庭向けを含む小売全面自由化が実施されていますので、「特許=常に独占的地位の保障」といった形で一般化してしまうのは危険です。
ですので、この授業では、特許制については、まずは**「行政が権利・地位を設定するタイプ」**という法形式の理解を核にして、各分野の制度設計(参入規制の強弱、料金規制、退出の届出など)は、条文や制度資料を見ながら具体的に確認していく、という姿勢を大事にしたいと思います。
認可制というのもあります。これはまた複雑な仕組みと言えば複雑な仕組みなのですが、講学上は、しばしば、私人の法律行為の効力を完成させるために行政庁の同意・承認を要する類型として説明されます。たとえば当事者が合意して契約を結んでも、行政庁の認可等がなければ、その法律行為の効力が発生しない、あるいは完成しない、と整理されることがあるわけです。
ただし、ここは用語がやや紛らわしいので注意してください。1番有名なのは、農地の売買という場面がしばしば例に挙がりますが、農地の権利移動について、制度上は一般に「農業委員会の許可」という形で説明されています。つまり、法令・実務の呼称としては「許可」が前面に出ています。
その一方で、講学上は、この種の「許可」を、当事者間の法律行為の効力に行政の関与が必要になる点に着目して、認可に近い機能として説明する議論があり得ます。したがって授業としては、条文・制度としては許可とされているが、機能的には認可型として説明されることがある、という形で押さえておくのが混乱が少ないと思います。
即時強制。最後、即時強制を説明したいと思います。即時強制ですね。直接、強制力を行使して、公益の達成をするということが目的になります。これも、即時―緊急性、強い―強力、強い強制力、非常に強いものなのですけれども、所有者に命令をして義務を実現させるという、そういう段階を経る余裕がないという場合ですから、即時強制を用いて、直ちに強制力を行使して必要な状態を実現する、ということになります。
これが即時強制のポイントで、特に緊急性が高いものについては、この即時強制が問題になりますね。
特に、感染症を予防するために、感染症の患者等について入院に関する措置が制度として整備されています。ここは世間的には「強制入院」と言われることもありますが、制度としては、入院勧告や入院に関する措置など、患者の人権に配慮した手続とあわせて説明されるのが通常です。
そして、講学上の位置づけとしては、国民の身体に対する実力行使を伴い得る点から、即時強制(または直接強制)に当たり得ると説明されることがあり、この点には見解の差もあります。
基本的人権への侵害は強いのですけれども、緊急の必要性がある、公益を守るためには必要不可欠だということで、法律が予定する範囲で、厳格な要件と手続のもとに行われる、という理解が大事になってきます。
以上、少し駆け足になりましたが、規制行政の基本的な仕組みと特徴について学びました。この規制行政は行政法の中で重要な部分を占めますので、この後、より詳しく学んでいきたいと思います。次回の授業では、生活保護法に関する判例をもとに、給付行政について学んでいきたいと思います。
許可:原則禁止を解除(例:営業許可など)
届出:一定事項の通知(形式要件を満たし到達すれば手続上の義務履行)
特許(講学):権利・地位を設定(創設)
認可(講学):私人の法律行為の効力を完成・補充(※制度上「許可」と呼ばれる場面でも機能が近いことあり)
即時強制:義務命令を待てない緊急時に実力行使で状態実現(感染症の入院措置等は位置づけに議論あり)
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