事業用定期借地契約書の正本が登記の手続きを終えて手元に戻ってきました。
公正証書は公証役場で公証人の立ち会いのもとで作成されます。このとき署名捺印がある1通だけの原本は公証役場で保管されます。このため、契約者が手元に置いておけるのは正本のみです。この正本というのは原本の写しなので、印紙も貼られておらず、契約者の署名や捺印もありません。そして、契約書の末尾には以下の記載があります。
この正本は、嘱託人○○の請求により、前同日、本職役場において、原本に基づき作成した。
(公証役場住所)
○○法務局所属
公証人 (署名) (捺印)
† 単なる写しと侮ることなかれ
「写しなら何の役に立つのかな?」と思っていろいろと調べてみると、民事執行法第二十二条第五号に以下のような記述があり、裁判の確定判決と同じように債務名義として通用する法的な効力のある文書ということが分かりました。裁判所に強制執行を申し立てるためには、単なる写しである謄本ではダメなようです。
民事執行法 | e-Gov法令検索
(債務名義)
第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
契約書を確認すると、契約書には以下の一文が記載されているので、執行証書としての要件をきちんと備えていることが確認できました。
乙は、甲に対する金銭債務の履行を怠ったときは、直ちに強制執行に復する旨陳述した。
見てくれと裏腹に公正証書でない通常の契約書の原本よりも法的な効力が高いのですね。
要はこれが手元に置いておける実質的な原本ということみたいです。
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