今日最後の見学は交通安全環境研究所。ここでは船と航空機以外の乗り物である、電車と自動車に関する安全技術と、燃費や排ガスなど環境にかかわる技術開発が行われているようです。
近年、燃費不正や排ガス不正が問題になりましたが、これらを調べるために一般的に使われているシャシダイナモメータや排ガス・燃費試験機器などが展示されていました。ちなみにシャシダイナモメーターを使って走行試験を行うとタイヤが回転するだけで車自体は動かないため、ラジエーターに風があたりません。この状態で車を走らせ続けるとエンジンの除熱が追いつかずすぐにオーバーヒートしてしまいます。これを防ぐために設置されている大型送風機を使った風を体験するデモンストレーションが行われていました。
鉄道関連では、リアルな電車で Go のような列車運転シミュレーターや、カーブを曲がったときの台車がどのような挙動を示すかを調べるための鉄道用台車試験設備などの展示が行われていました。
一番おもしろかったのは霧体験という、人工的に濃霧を発生させる装置を使った体験。単なる霧吹きのようですが、数分もするとあっという間に数メートル先も見えないような濃霧になるのでびっくり。この状態で、照明の条件等を変えて飛行機の滑走路や、街灯、自動車のライトを使って視認性の向上のための試験が行われているようです。
次にやってきたのは海上技術安全研究所の隣にある電子航法研究所。建物の上にはレーダーがぐるぐる回っていて、いかにもレーダーの研究してますよという外観をしています。
ここには電波無響室(電波暗室)があったり、ILS(計器着陸装置)や航法装置であるSBAS(衛星航法補強システム)があったりと、航空機の運航にかかわるパイロットや航空管制官の支援を行う技術の開発が行われています。もちろんフライトシミュレータも設置されています。
ちなみに電子航法研究所には仙台空港に隣接した岩沼分室があり、仙台空港を使って様々な実験が行われいるとのこと。そんなものがあったとは全く知りませんでした。画面ではちょうど仙台空港をリアルタイムに映し出しながら、地上にいる航空機の位置を表示するシステムのデモが行われていました。
海上技術安全研究所の敷地内に鬱金桜(ウコン桜)という黄緑色の花を咲かせる珍しい桜が植えてありました。僕もこういう桜の実物を見るのは初めてです。
八重桜なので、時期的にちょうど満開を迎えているのですが、色が色だけに近くまで行かないと満開だといいうことが分からないほど。咲き始めは赤い部分が全くないようですが、ピークを越えると少しずつ花が色づいてくるらしいので、ギリギリシーズンに間に合ったという感じだったようです。
一昨年の科学技術週間では調布の JAXA の公開に行きましたが、JAXA だけでも1日では時間が全く足りず、隣接している海上技術安全研究所・電子航法研究所・交通安全環境研究所の3研究所には足も踏み入れることができなかったことを思い出して、今日は JAXA に行かずにこれらの3つの研究所をメインに見学することにしました。
まずやってきたのは海上技術安全研究所。研究は「海洋資源及び海洋空間の有効利用」「海上交通の安全及び効率の向上」「海洋環境保全」が中心になっており、自律稼働する資源調査ロボットや、造波装置を備えた大型の水槽、船橋を模した大型の操船シミュレータなどが備えられていて、どれも見応えがありました。
特に造波装置の完成度はかなり高く、水面に波を使って自由な模様(数字や絵など)を描くことができるほど。見学していた子供達も大喜びでした。操船シミュレータは電車で Go の船バージョンのような感じですが、昼夜や、視程などが自由に変更できて海難事故のシミュレーションなどに役立てられているとのこと。巨大な400m 水槽は透明度が高いのでそれほど深くないようでしたが、なんと水深は8mもあるそうで、この量で三鷹市全体の上水道1日分に相当するとのこと(ただし、この水は水道水ではないとのこと)。