国民年金基金は老後対策として使える制度なのですが、実は税金対策としても使える制度であることはご存じでしょうか?まだ相応の売上が立っていない方ならともかく、そうでなければ自営業者として税金対策は必須といえます。
ぜひこの機に、その内容を詳しく知っておきましょう。本記事では、国民年金基金の所得控除額・節税効果に注目し、詳しくお伝えします。
まずは、国民年金基金と所得控除の基本についてお伝えします。
そもそも国民年金基金とは、毎月一定の掛金を支払う代わりに将来的に年金が貰えるようになる制度です。何もしなければ自営業者は将来的に国民年金しか貰えませんが、その年金を増やせることになります。
そして毎月の掛金は「全額が所得控除になる」という制度設計です。具体的には掛金は国民年金の保険料と同じ「社会保険料控除」に該当します。月に6万8000円までしか加入できませんが、満額なら81万6000円まで社会保険料控除を増やせるので、かなり有利です。
また掛金は、現在のところ1.5%の予定利率で運用されるため、節税しながら老後対策ができるのです。まずは、このような基本をしっかり抑えておきましょう。
あなたの売上具合にもよりますが、一般的な個人事業主やフリーランスは大きく稼げていない事も多いので、81万6000円もの控除は魅力的に映るのではないでしょうか?逆に十分稼げている方なら、それはそれで控除効果も大きくなりますから、やはり嬉しいはずです。
老後など先々のことを考えられない自営業者も多いですが、少なくとも控除という目先の利益もあるのが国民年金基金になります。節税したい自営業者は、ぜひ国民年金基金への加入を検討しましょう。
次は、税額上の控除についてお伝えします。そもそも、日本の税率は累進課税制度になっているため、利益が大きいほどに税率も高くなる制度です。また個人の事情も重なるので一概に言えませんが、ひとまず満額(80万円)で国民年金基金に加入した場合の概算的な税額上の控除は以下の通りです。
課税所得金額 | 所得税率 | 住民税率 | 税額上の控除 |
195万円以下 | 5% | 10% | 約12万円 |
195万円超~ 330万円以下 | 10% | 10% | 約16万円 |
330万円超~ 695万円以下 | 20% | 10% | 約24万円 |
695万円超~ 900万円以下 | 23% | 10% | 約26万円 |
900万円超~ 1,800万円以下 | 33% | 10% | 約34万円 |
1,800万円超 ~ 4,000万円以下 | 40% | 10% | 約40万円 |
4,000万円超 | 45% | 10% | 約44万円 |
掛金が半額(40万円)なら、控除効果も半分になります。自分の所得ならどの程度の効果があるのかを考え、加入を判断していきましょう。
所得控除の中には、妻の配偶者控除など「家族がいてこそ経費化できるもの」が少なくありません。そのような中、国民年金基金への加入による社会保険料控除の増額は、独身でも経費を増やせるという点が隠れたメリットといえます。
逆に家族がいる方の場合、社会保険料控除は本人分だけでなく、生計が同じ配偶者や他の家族分を支払った場合にも控除可能です。合わせて知っておきましょう。
次は、国民年金基金に加入した場合のもう一つの控除効果をお伝えします。国民年金基金は、将来的に年金としてお金が貰えるようになりますが、この年金には「公的年金等控除」が使える制度設計です。つまり、お金を払う時だけでなく貰う時にも有利に貰える事になります。ただし、年金額によっては税金がかからなくなる訳ではありませんので注意しましょう。
ある意味で、本当に「自営業者版の厚生年金制度」と言えるものかもしれません。ちなみに国民年金基金の年金は、厚生年金や国民年金などと同じく「終身年金」です。つまり死ぬまで年金がもらえますから、この点でも老後を豊かにすることができます。
税金対策という節税効果の面を見ても、終身年金という年金効果を見ても、どちらの面から見ても国民年金基金はお得です。掛金を支払える程度の余裕があるなら、優先的に加入を検討しましょう。
保証期間のある受給プラン、または確定年金タイプのものに加入した方が年金を受け取る前、または期間中に亡くなった場合は、遺族に非課税の「遺族一時金」が支払われます。家族がいる方は、これらの受給プランに加入すると家族も安心です。
逆に家族がおらず、特に財産を残したい方もいない場合は、保証期間のない受給プランを選ぶと有利に加入できます。2口目以降は増減も自由なので、状況に合わせて加入内容を変えていきましょう。
今度は、国民年金基金の基本について補足情報をお伝えします。国民年金基金の加入は口数制で、何口加入するかで毎月の掛金と将来の年金額が決まる制度設計です。1口あたりの掛金と年金額は、選んだ給付の型と加入時の年齢、そして性別で決まってきます。
また毎月の掛金は前納することも可能で、4月から翌年3月までの一年分を前納すると0.1ヶ月分が割引される制度です。ただし、前納した分を減口することはできません。所得控除と合わせて、少しでも得を増やしたい方は検討してみましょう。
通常の掛金支払いは60歳で終了です。しかし現在は、60歳以上の方も65歳まで加入できるようになった結果、60歳未満で加入した方でも再度の加入手続きによって65歳まで支払いを続けることができます。状況に合わせて、考えていきましょう。
国民年金基金は、税制上は極めて有利です。その反面、一度加入すると途中で任意にやめることはできないデメリットがあります。2口目以降は自由に口数を増減できるものの、1口目を減口することができません。この点にだけは注意が必要です。
もっとも完全に止めてしまえば、その分だけ老後が苦しくなる側面もあります。ある程度、強制的に節税と老後対策ができると考えれば、大きなデメリットでもありません。ぜひ前向きに考えていきましょう。
最後に、自営業者の確定申告対策についての補足情報をお伝えします。結論から言うと、国民年金基金と小規模企業共済やふるさと納税の併用がおすすめです。
自営業者の確定申告対策なら、「小規模企業共済」を使うのもおすすめです。これは年金制度ではなく「退職金制度」ですが、掛金が全額所得控除になる点は同じであり、しかも国民年金基金とは別で加入できるのです。
また最近なら「ふるさと納税」も非常に人気があります。これは直接的な節税効果はないものの、ふるさと納税は返礼品がもらえますから、そういう意味で得を得られます。するには原則として確定申告が必要ですが、どのみち確定申告が必要な自営業者なら手間も変わりません。
そして、節税効果は弱いものの「3種類の生命保険(一般の生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除)」も大切です。国民年金基金の控除と合わせて、使えるものはドンドン利用していきましょう。
確定申告対策とともに老後対策もしたい場合は、やはりまずは国民年金基金がおすすめです。同種の制度に「iDeCo(個人型確定拠出年金)」もありますが、こちらは自分で掛金を運用しなければなりません。運用結果がマイナスになる可能性もあります。
会社員は国民年金基金に加入できませんから、加入できるのは自営業者にのみ与えられた特権です。ぜひ優先的に、その恩恵を受けていきましょう。
老後のような将来のことは考えられなくても、国民年金基金は控除部分の節税効果だけを見ても魅力的といえます。控除を使うだけで、知らぬ間に老後対策にもなるのが国民年金基金です。ぜひ、国民年金基金の控除を有効活用していきましょう。
CFP®、一級FP技能士
山本FPオフィス代表。商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て2008年8月、山本FPオフィスを設立し、同代表就任。 現在は日本初の「婚活FP」として、婚活パーティを開催しながら婚活中の方や結婚直後の方など、主に比較的若い方のご相談を承っています。また「農業FP」としても活動をはじめ、独立10年を機に「後輩育成」にも力を入れています。
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