テレビCMなどで気になっている方も多いものの、意外と中身は知られていないのが国民年金基金。もちろん一定のデメリットもあるので、リスクについての知識習得は不可欠です。リスクを知ることで、それ以上のメリットを感じている方も多いのも実情です。ぜひこの機会に、国民年金基金についての理解を深めましょう。今回は、国民年金基金のメリット・デメリットについて解説します。
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連載記事をご覧いただいている人には繰り返しとなりますが、まずは国民年金基金の基本について改めてお伝えします。
結論から言えば、国民年金基金とは「自営業者のための上乗せ年金制度」です。会社員は加入することができません。加入すれば、毎月の掛金支払いが必要ですが、将来の年金を増やすことができます。
ただし、自営業者であっても以下に該当する方は加入することができません。
つまり、しっかり国民年金保険料を支払っている自営業者に限り、さらに上乗せの年金制度に加入できることになります。
ちなみに加入は任意です。国民年金だけでは老後が不安で、それでいて追加の掛金を支払う余裕のある自営業者の方は、ぜひ加入を検討しましょう。
次は、国民年金基金に加入するメリットについてお伝えします。
国民年金基金は、単純に老後への備えに使えるだけでなく、「掛金は全額が所得控除になる」という点が一番のメリットです。月の掛金の上限は6万8000円なので、満額なら81万6000円ですから、かなり大きな節税効果を生みます。
例えば、所得が500万円の方なら所得税率20%、住民税率10%ですから、概算で81万6000円の30%である約25万もの節税が可能です。老後に備えながら大きな節税ができるのですから、積極的に利用すべきではないでしょうか。
また国民年金基金は、加入時の予定利率(現在は1.5%)でずっと運用され、将来的には加入時に約束した年金額を亡くなるまで受け取れる制度です。このため、世の中の変動に関係なく将来に備えられる点もメリットといえます。もちろん自分で運用する必要もありません。
さらに、加入後に掛金を自由に増減できるメリットもあります。国民年金基金は口数制で、1口以下にはできませんが2口目以降は自由に調整できる制度です。存分に恩恵を受けましょう。
国民年金基金には、7種類の「給付の型」が用意されており、加入者が自由に選ぶことができますが、やはり亡くなるまで貰える終身年金(「A型」または「B型」)がおすすめです。
今度は、国民年金基金に加入するデメリットについてお伝えします。国民年金基金に加入すると、加入時の予定利率で確実に増えますから損得勘定上のデメリットはありません。それよりも、「途中で任意に脱退できない」という点がデメリットとして挙げられます。
とはいえ、国民年金は加入が強制ですが国民年金基金は任意です。どうしても1口目の掛金が支払えない状況になったら、支払いをストップする手続きも取れます。その分だけ、約束していた年金は減らされることとなります。
また支払いをストップした場合、2年以内なら追納することも可能です。そう考えればデメリットはないとも言えますから、安心して国民年金基金に加入しましょう。
それでもなお、入るべきかどうなのか悩む方も多いでしょう。入った以上は掛金支払いを続けたい気持ちがある一方、特に商売上の他の支出が発生する可能性もありますからね。自営業者にも私生活がある訳ですから、どこでお金が必要になるか分かりません。
繰り返しですが、少なくとも減額ならできますし、支払いも続けられます。支払った分だけ所得控除できるメリットも大きいですから、ここは何とか決断しましょう。
先ほど触れた通り、国民年金基金の現在の予定利率は1.5%になっています。実際に利率をデメリットと考える口コミもありますが、実際にはどうでしょうか?
国民年金基金は、亡くなるまでもらえる終身年金である点に特長があります。例えば、A男さん(40歳)が1口目A型、加えてA型3口に加入したとします。60歳までに払い込む掛金は約600万円です。この場合、受け取れる年金額は36万円ですので、85歳まで生きると720万円、100歳まで長生きすると1,120万円受け取れることになります。このように、比率はそこまで高くなくても、長生きするほどメリットが大きくなるのです。
もっと高い利回りを期待したいという方には「iDeCo(個人型確定拠出年金)」がおすすめです。こちらは掛金を自分で運用するタイプの制度で、1.5%を上回る利率も十分に狙えます。ただし、利回りが1.5%を下回る可能性や元本割れする可能性もゼロではありません。
国民年金基金は老後対策のために加入するものですが、老後対策は若い方ほど時間があるので簡単です。「国民年金基金の掛金や受取額を年代別にシミュレーション!いくら支払う?もらえる?」で解説したように、早く始めるほどメリットが大きいです。
逆に比較的高齢であるほど時間がないので、低い利率での運用では長時間運用できず思ったように資産を増やせない可能性があります。しかし、「少しでも確実な資産を!」という発想が大切です。どうしたら良いか分からない方は、銀行に相談してみましょう。
最後に、大切な補足情報をお伝えします。令和元年に「老後資金として2000万円必要」などと言われ、その後も様々な関係する情報が飛び交いましたね。統計上も様々なアンケート結果でも、このままでは7~8割の世帯が老後について大丈夫と言い難いのが今の時代です。
もちろんこれは自営業者も変わりません。むしろ自営業者も死ぬ直前までは中々働けず、その後は年金生活になりますが、年金額は会社員よりはるかに少ない額です。十分な資産を築ければ別ですが、そうはなれない自営業者も多いのではないでしょうか。
むしろ自営業者は国民年金しかないのですから、会社員以上の老後対策が必須といえます。せめて最低限、国民年金基金には加入しておきましょう。
多くの自営業者は売上が不安定なものですが、仮に安定していてもずっと続く保証などありません。高齢になるほど確実に老化しますから尚更といえます。自営業者こそ、今どうこうではなく未来を見据えた行動が大切です。
あなたは他に、何か未来を見据えた行動を取っているでしょうか?特に何もしていないのであれば、最初の一歩として国民年金基金を始めていきましょう。
少なくとも国民年金基金は、何もしないことと比べればメリット大です。目先の「掛金の全額が所得控除」という恩恵もあります。これさえやれば大丈夫とは言えませんが、まずは国民年金基金を始め、その上で次の老後対策も考えていきましょう。
CFP®、一級FP技能士
山本FPオフィス代表。商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て2008年8月、山本FPオフィスを設立し、同代表就任。 現在は日本初の「婚活FP」として、婚活パーティを開催しながら婚活中の方や結婚直後の方など、主に比較的若い方のご相談を承っています。また「農業FP」としても活動をはじめ、独立10年を機に「後輩育成」にも力を入れています。
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