“女王様と待ち合わせをする。プレイではない。普通に食事をしてお酒を飲む。店から出ると女王様は言う。「じゃあ、ATMに行こうか」うなずき、ふたりで近くの銀行へと向かう。股間が甘美に疼く。陰茎が隆起してくるのがわかる。深夜近く。ずらりと並んだ人気のない銀行のATMの前に女王様とふたり並んで立つ。 女王様から促され、僕はキャッシュカードを財布から取り出し、ATMに挿入する。ここから先、タッチパネルに触れるのは女王様の指だ。女王様は『お引き出し』のボタンを選択する。この段階ですでに僕の陰茎はガチガチに勃起している。ATMの画面は暗証番号の入力を要求してくる。女王様のしなやかな指がタッチパネルの上を滑り、迷いなく4桁の暗証番号を入力していく。それを眺めながら僕は、亀頭の先からカウパーがにじみ出てくるのを感じている。 女王様に暗証番号を教えたのは僕自身だ。先週、プレイの前に現金を下ろすためATMに立ち寄ったときのことだ。ふとした思いつきから僕は女王様に隣に立ってもらい、暗証番号の入力から現金の引き出しまでのすべての課程を横で見ていてもらったのだ。ゾクゾクした。たまらなく興奮した。女王様が僕の暗証番号を見ている。知られてしまった。暗証番号だけではない。口座に入ってる金額までも。すべてを見られてしまった。知られてしまった。僕の陰茎はジーンズの上からでもはっきりとわかるくらいに勃起していた。それに気づいた女王様は優しく微笑み、そして僕の耳元で囁いた。「大丈夫だよ。全部は奪わないから」 それから一週間。暗証番号を変更する時間はたっぷりとあった。でも、僕はそれをしなかった。僕の目の前で今、女王様はあのとき知った僕の暗証番号を入力していく。4桁の番号は認証され、ATMの画面は引き出し金額の入力画面となる。女王様の指が、金額の数字をタッチしていく。いったいいくら引き出されてしまうのだろう。女王様の指が2のキーに触れる。そして、0、0、0、0…。4つの0を入力したところで、女王様の指が止まる。その指先がゆっくりと0の数字の上をさまよう。 まさか。もう一桁いってしまうのか。興奮で頭がクラクラしはじめる。陰茎はますます硬くなり、今にもギチギチという音が聞こえてきそうなくらいだ。女王様は少し溜めて、そして、もうひとつ0のボタンに触れた。あぁ、やっぱり20万円…。だけど、それでもまだ女王様の指先はタッチパネルの上から去ろうとはしない。まさか、そんな。 女王様は焦らすように、そこから更にもうひとつの0を入力しようとする。いや、それはいくらなんでも。やめてください。駄目です。いくらなんでもその金額は…。言葉とは裏腹に、僕の顔は激しく上気し、恍惚の表情さえ浮かんでいる。亀頭からにじみ出したカウパーはすでにデニムの股間部分をしとどに濡らしている。女王様の指先が、6つめの0に触れる。 200万円。頭が変になりそうなくらいの興奮。女王様が僕に『確認』のボタンを押すよう目で示す。暗証番号と金額を入力するのは女王様だ。でも、最後に確認ボタンを押すのは僕の役目なのだ。指先が震える。本当に押していいのか? 女王様の表情をそっと伺うが、冷たい眼差しは「早く押しなさい」としか言ってない。ここで拒否することは僕にはできない。僕は震える指先を確認ボタンに伸ばす。陰茎がまたぎちぎちと音を立て、海綿体の中に流れ込んだ血流がどくどくと脈打つ。 あぁ、女王様。許してください。僕はもう。震える指先が確認ボタンに触れたとき、興奮は最高潮に達し、僕の脳内を電流が走り抜けた。 * * * 200万円は、しかし、引き出されなかった。1回の引き出しの限度額を超えていたのだ。まあ、冷静に考えれば当たり前の話だ。その日は結局、口座から現金は引き出されることはないまま女王様と別れた。 家に帰った僕は狂ったようにオナニーをした。おかずは、『概念』だ。女王様に暗証番号と残高を知られているという概念。そこに性的な妄想はいっさい存在しない。あるのはただ女王様が僕の銀行口座の暗証番号と残高を知っているというその事実だけ。僕はその概念をおかずに、狂ったように陰茎をしごき、射精し、そして、果てるのだ。”
(viayellowblog)
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