文久三年 十二月――
父を捜しに京を訪れた雪村千鶴は、このとき彼らと出会った。
人々が恐れる人斬り集団《新選組》。
彼らの秘密に触れてしまったことで、千鶴の運命は変わる。
新選組の屯所に軟禁され、殺伐とした環境の中で父の安否を心配するばかりの日々。
今のところ、すぐに殺されることはなさそうだが、千鶴を監視する彼らの目は、決してやさしくはなかった。
彼らは悪い人間ではない。
気さくに話しかけてくれることもあれば、笑ってもくれる。
……だが、彼らにとって千鶴は仲間ではない。
もし千鶴に存在価値がなくなれば、すぐに斬られるだろう。
一寸前に向けてくれた笑顔など、何の保証にもならない――。
そんな思いを抱きながらの日々は、千鶴にとってはひどく辛いものであった。
そんな日々が三ヶ月ほど続いた、文久四年三月のある日。
千鶴と隊士たちの間に、ごくささやかな転機が訪れる。
――それが、彼女の随想の始まり。
(「薄桜鬼 随想録」より)
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