藤野伝吉(遠藤憲一)は小さな居酒屋「兆治」を妻・茂子(真矢ミキ)と営んでいる。客からは店名の通り「兆治」と呼ばれている。無口で無骨な男だが、店はまあまあ繁盛している。常連には幼馴染みの岩下(渡辺いっけい)や、酒癖の悪い河原(西村まさ彦)などがいる。目下の悩みは再開発に伴う店の立ち退き話だが、移転先は決まっていない。そんな「兆治」に初恋の人・さよ(井川遥)が突如訪れ「あなたのせいだからね」と一言残して姿を消した。実はさよは自宅に放火した疑いをかけられたまま失踪していた。30年近く会うことのなかった兆治を忘れかねていたのか…。
兆治は社会人野球のエースとして活躍した過去があり、さよは当時の恋人だった。肩を壊しサラリーマンに転身するも、会社でリストラを担当するよう命じられ退職、居酒屋店主となった。茂子はそんな兆治をいつも温かく見守っていた。やがて常連客の妻の急死を河原が揶揄(やゆ)したことをきっかけに、兆治は手を出してしまい重傷を負わせ逮捕される。そして取り調べでは河原でなく執拗にさよのことを追求される。一方、行方知れずのさよは騒動も知らずに茂子が留守を守る店に再び現れる。対面する二人の女―。ようやく放免され、日常を取り戻した兆治に突如、届いたのはさよの意外な消息だった…。
時が経ち、移転も先延ばしとなり、居酒屋「兆治」の赤ちょうちんに今夜も灯がともる。
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