◎第壱話目のあらすじ
「……ウルサイぞ、人の子が!朕を誰だと心得る!」
蝉時雨が耳に張り付くような猛暑。今日も今日とてブラブラと
暇を持てあましていた東雲幸多は、一人の少女に出会う。
場違いなほど雅やかな立ち居姿に、反して幼く攻撃的なその少女は、
自らを『秋桜』───桜の精霊だと幸多に名乗る。
ゆえあってある老人に、恩返しがしたい、
自分の存在に気が付いてもらいたい……。
そう言って人外の少女は、今日も老人に逢いにいく。
決して人の目に映らぬ、人ならざる姿のままで。
そのあまりに無謀な試みに興味を惹かれた幸多は、
暇つぶし半分、少女の逝く末を見届けることを始めるのだった。
『この世ならざるモノ』の存在を眼にすることができる、
特別な力を有した少年“東雲幸多”。
人の世にあって人と異なる存在と交わることの出来る力。
人に気味悪がれ人外に目を付けられる不毛な力。
それゆえ幸多は、いつからか人・人外、共にどちらにも属することのない、
ただ《見届ける》だけの存在として自己を確立していった。
幸多は見届ける。生きている者の姿とその喜怒哀楽を。
逝き残ってしまった者の存在とその未練妄執を。
幸多は見届け、そして刻んでいく。
彼女たちが生きて逝った証を。───自分が、生きて居る証を。
more...大家将 みとどけびと 第壱話 真夏に咲いた秋桜 标注为