藤崎こう(夏樹陽子)の墜落死体が発見されたのは、西新宿の古いビルの下だった。坂本課長(秋野太作)からの連絡を受け、現場に向かった牛尾(片岡鶴太郎)。てっきり殺人かと思った牛尾だが、先に臨場した山路(徳井優)から、こうはビルの屋上からの自殺、それを目撃した人からの通報が入ったのだと聞く。牛尾にとっては、こうは記憶に残る人物だった、しかも疑惑の女として。
10年前の事だ。新宿西署管内で、男性が神社の石段下で死体で発見された。藤崎正明(工藤俊作)、こうの三度目の夫であった。安置室の死体の前で、こうは涙も流さず牛尾の死体発見のくだりを聞いていた。石段上で二人の男性がもみ合い、若い男の方が年配の男を突き落としたとの通報があったのだ。そして、その安置室に一人の女が入って来る。こうに尋ねると、正明の愛人咲田早苗(多岐川裕美)だと言う。死体を挟んで言い争いになる二人。早苗は、「その女はね、三度結婚し、三度夫を亡くし、三度保険金をもらっているの。四度目がないといいけどね」と、こうに言い放った。『黒い未亡人』と週刊誌を騒がせた事件だった。
だが、その『黒い未亡人』というそもそもの名付け親でもある事件記者、冴子から牛尾に連絡が入る。こうは自殺とは思えない、何故なら三日前、冴子はこうと会ったという。こうが若返っている事に驚き、その理由を訊いたのだと言う。すると、こうは若い恋人ができたからと答えた。そして実際に、ジロ(斉藤陽一郎)という恋人らしき男が迎えに来たのだからと冴子。
同時に牛尾も自殺には疑いを持っていた。10年前の正明の事件、そして今回のこうの自殺、二つの事件は「通報者」が決定的な証言を残している。だが、その「通報者」はともに身分を証していないのだ。気になる牛尾は、こうの郷里である西伊豆に向かう――。
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