ある日、突然、図書館の扉を潜ったそのとき。
平凡な貧乏大学生・犀川広夢は謎の異世界へと迷い込む。
ファンタジカル――
記憶を断片的に失って目覚めた広夢が出会った少女メアリは、ちいさなこの世界のことを、そう呼ぶ。
彼女の父であり領主バーネット卿が治めるこの世界には、貧困も飢えも、そして死すら存在しない理想郷なのだという。
あまりにも絵空事すぎて、その言葉を受け入れられない広夢は、メアリ以外の住人たちと言葉を交わすことで徐々に目にする現実を受け入れていく。
温厚で情け深いバーネット卿の好意で、その屋敷へと居候同然に逗留することになった広夢は、当初こそ必死に元の世界への帰還を目指して行動する。
だがここには、彼の心を呪縛する存在が待っていた。
ひとりは、この世界で再会するまでは、なぜだかその存在を忘れてしまっていた妹のユリ。
そしてもうひとりは、物静かでどこか神秘的な雰囲気のある女性、リリム。
逃げ出すことも出来ず、その方法も見つけ出せないままの広夢は、何かと世話を焼きたがるメアリの強権で、ファンタジカルに存在する「学園」へと通うことになり、次第に広夢は、ファンタジカルへ馴染んでいく。
女の子どうしの、ささいな理由によるケンカ程度しかトラブルのないこの世界は、ほどよく刺激的で、かつ、にぎやかな日常とを提供してくれる。
家族同然となったメアリやダイナ、バーネット卿ら、そして学園や街で顔見知りとなった面々とも、怒ったり笑ったり泣いたりと、やかましくも楽しい日々を過ごすうちに、広夢は、元の世界への能動的な帰還を望まなくなる。
想いを通じ合った少女と共に、ファンタジカルで暮らし続けることを当たり前のように考えるようになっていく。
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