『吉継の首』
慶長五年九月、合戦前日の関ヶ原。
西軍の名将・大谷刑部吉継は、東軍の武将・藤堂高虎と密会する。
今は敵味方に分かれているが、旧知の間柄の二人。
高虎は東軍大将・徳川家康の言葉を吉継に伝える。
「刑部殿とは親しき仲、戦う理由が見当たらぬ。
関ヶ原から兵を引き、病の養生に専念されたし」
家康の心遣いに感謝しつつも、きっぱりと断る吉継。高虎は必死の説得を試みるが、吉継の決意は変わらない。
忠義と信念のため、明日は戦わなければならない二人。
覚悟を決めた高虎は、吉継にある密約を持ちかける。
それは合戦の行方を左右しかねない重大なものだった…
『幸村の娘』
慶長二〇年五月、大坂夏の陣、決戦前夜。
戦から戻った徳川方の武将・伊達政宗の陣屋に、大坂方の敵将・真田幸村からの
使者が訪れる。
昼間の戦いで幸村の奇襲攻撃に散々な目に遭わされ、憤懣やるかたない政宗は、使者を斬り捨てろと息巻くが、側近・片倉小十郎から「あまりに大人げない」と宥められ、渋々ながら、憎き幸村からの伝言を聞くことに…
しかし使者が伝えた幸村の言葉は、驚くべきものだった。
「わが娘を、伊達殿に託したい…」
不倶戴天の敵からの、あまりにも意表を突いた申し出…
奥州独眼龍と、その右目とも称された名参謀は、どう応えるか?
more...曲目列表