1995年11月23日に日本語版Windows 95(PC/AT互換機・PC-98用)が発売されて30年

当時のパソコン(PC)上で一定以上の使いやすさと実用性を提供したGUI・マルチタスク、圧倒的普及率を背景にそれまで各PCメーカー毎にソフトウェアの互換性が無かったものをOSで吸収してどのPCメーカーのハードでも同じソフトウェアが動くようにしたという統一を果たし現在まで続くWindowsの礎を築いた記念すべきOSと言っていい。

Windows 95の話題でよく上がるのが当時の秋葉原ではお祭り騒ぎのような状況になっていて、23日となる午前0時のカウントダウン時には2万人を超す人が集まっていたという話があり、テレビのニュースでも大々的に取り上げられていたと記憶している人も多いかもしれないが、この話の信憑性について本当のところは実際どうなのでしょうか？

というのも、実は集まっていたのはPCメーカーやマイクロソフト自身、それにメディアといった業界関係者ばかりで実際に当日の秋葉原でWindows 95を購入した一般人は遥かに少なかったという可能性があるのだ。

何故そんなことが言えるのかと言うと、これもWindows 95の登場によって存在意義を無くした国産アーキテクチャPC「FM TOWNS」の専門誌だった「Oh!FM TOWNS」1996年1月号(なおこの翌月号で休刊)には、当時の秋葉原の状況を伝えるレポート、Windows 95の使用感についての記事が掲載されており、興味深い内容となっている。

以下は「Oh!FM TOWNS」1996年1月号 p.100～102ページの「特集II 日本語版登場Start withWindows 95」(著者：守男)の記事より引用

かきわけかきわけ歩く、途中の九十九電機本店でも、なかなかの人の列。同じ深夜営業で、ほぼ同じ値段でWindows95のパッケージが売られているにもかかわらず、全く人の寄りついていないショップと、こうして長蛇の列のショップ。

「何が違うか、後で取材してみないと」

という私の言葉に、すぐ前の背中から、苦々しいげな

「へ。うしろさんも取材だってさ」

の声、ぼそり。

周囲は、Microsoftの青い帽子やスタッフジャンパーを着込んだ明らかにショップやメーカーの関係者と私たちのような取材者が圧倒的で、どうも一般人の比率はかなり少なそうだ。後で聞くと、NECは秋葉原だけでバス4台125人という力の入れよう。黄色い蛍光色のスタッフジャンパーがそこここに目につく、富士通もWindows95プレインストールのFMV1000台と赤いタッチおじさんバッグを手に手に100人前後の動員で、「取材にはもっと大勢出ていたと答えろ、NECに負けてなるものか」との声も某ショップ裏で耳にされた。ほか、青いジャンパーの東芝、「Windows95でできるようになったことは、Macintoshならもう10年以上前から実現していました」というプラカード持ったApple関係者がそこかしこを練り歩く。

 

～中略～

 

だらだら時間を潰した私とT氏は、早朝のテレビをチェック。テレビ映像の編集の威力を知ることになる。

「ナレーション」→「11時ごろからの人込み」→「カウントダウンと花火」→「人の列」→「Windows95の詰まった段ボールを手早く開く定員の姿」→「手から手にWindows95のパッケージ」→「レジでの支払いシーン」→「女性店員によって配られる甘酒」→「人込み」

・・・・・・こう見ると、もう深夜にWindows95が飛ぶように売れまくったようにしか見えない。しかし、実際に現場にいたのは先にも書いたとおり大半が関係者と取材陣で、一部記念に買った者もいるが、実際の大商いは週末だったろう（実際、その特番で集中的に移されていたのは、1万円の商品券を狙ったジャンケン大会の列であった）。

 

記事をまとめるとこうだ、PCメーカー1社だけでも数百人単位で秋葉原に動員されそれが複数社にも及ぶ、更には実際の動員数よりも多い人数を取材では答えろという証言がなされていた。そのため前述のように万人規模で人が集まったかのように後世に伝わっているのではないか。そして業界関係者と取材陣で人混みをPCショップ前で作り、数人がWindows 95を購入しているところを映像に収めるだけで、あたかもWindows 95を購入しようと大勢の人が集まったかのように報道されたのだ。

この"画期的な製品"の深夜販売に大勢の人が集まった(買ったわけではない)というニュースはこれ以上とない宣伝効果となり、日本でのPC普及やWindows 95の売上に大きくつながる。リアルタイムに経験したことがない人には信じられないかもしれないが、ニュースのみならず時事番組でWindows 95とはなんなのかという特集が組まれたり、家電量販店ではPC持っていないおじさんが話題のWindows 95を買おうとするなんて話があったくらいだ。だが、実態はPCメーカー各社が作り上げた虚構にしか過ぎなかったのかもしれない。しかし、物を売るということはこうしたありもしない魔法の商品をいかに嘘をつかずに売り抜けるかというのがいつの時代でも本質ではあろう。今でいうならAIもそう。

とこのような記事を引用したが、更なる証言も欲しいのですが、Windows 95発売直後にあの秋葉原にいたという元業界人や店頭でWindows 95で買ったという方はいらっしゃいますかね？この話の信憑性を念のため確認しておきたいのですが。