PCで人気を博した空の軌跡三部作は順次PSPへも移植され、そちらもなかなかの好評をもって広く受け入れられたようです。新規のファンを多く取り込むことにも成功し、名実共に空の軌跡は2000年代のファルコムを代表するタイトルとなりました。「Vantage Mater Portable」に軌跡キャラがゲスト出演し、公式HP上ではファン参加型のイベントが幾度も開催され、季節の節目節目にはライブも行われ、他社とコラボしてのグッズ展開やドラマCDのシリーズ化……などなど、とりあえず「空の軌跡」と付けりゃそれなりに売れる土壌も形成されていきました。そんな流れに棹差すようにして刊行された書籍の中の一冊がこのファンブックです。
とりあえず手にとってみると、キャラとストーリーを前面に押し出したゲームのファンブックにしてはややストイックすぎる表紙がページをめくる前に一抹の不安を感じさせてくれます。(実際は帯が付いているのでもう少しだけ華やかな表紙ではありますが)内容はもはや言わずもがなの構成ですが、本書では各コーナーはリベール通信社やR&Aリサーチ、遊撃士協会などゲーム中に登場した組織・団体によって編纂された資料であるという「設定」が存在する点が特徴的です。こうした試み自体は英伝のファンブック類では目新しいものであり、他の関連書籍との差別化を図る意味では良いアイデアであったと思います。そんな感じでアプローチの仕方は間違ってないと思うのですが、内容そのものは過去の特典資料集やスペシャルコレクションブックの焼き直しに依るところが大きく、今さら感の強い情報が多いです。「リベール王国トラベラーズガイド」の項などはそれなりに見栄えよく作られていて軽く眺めている分にはいいのですが、あまり読み込んで楽しいほどのものではないです。他のキャラ紹介やストーリーダイジェストの項はざっと目を通しただけでもういいやな気分になってくる雑っぷりです。情報は既出のものばかりであってもせめて前述の「設定」を活かしたテキストを用意できればもう少し面白い読み物になったと思うのですが……。その上ゲーム中に登場した本の内容をそのままそっくり載せただけのコーナーなど何の需要があると思ってやったものやら。残念ですが正直なところ空の軌跡関連書籍の中でも屈指の面白くなさと断じざるを得ません。それでいて値段は内容で遥かに勝るスペシャルコレクションブックより高額だというのだから冗談がきついです。
まあ元の作品が売れて商品展開が多岐にわたるようになればこういうものも数のうち、くらいに思うしかないでしょうね。
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